軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

97.ボンバーマン

地下四階のモンスターとエンカウントする。

自爆する小悪魔、それが一体。

「お願いね、ボンボン」

エンカウントするなり、アリスが手のひらに仲間を乗せて送り出した。

ぬいぐるみからオリジナルサイズに戻ったのは同じ自爆する小悪魔、ただしこっちは同じサイズでもあっちこっちデフォルメされてて、造形が可愛らしくなってる。

相手の小悪魔は手を振り下ろす、光って不発。更に振り下ろす、黒くなって不発。

すっかり見慣れたルーティン行動をしたが、アリスの仲間の方――ボンボンは一直線に飛んで行って、すぐさまにバンザイした。

足元に魔法陣が広がり、ボンボンの体の奥から光が漏れる。

直後、爆発する。

オリジナルに比べて遜色のない威力の大爆発。

爆風が収まった後、そこに何も残らなかった。

「すごい、すごいねボンボン」

「自爆して共倒れとかじゃないんだ」

いつの間にアリスの肩に戻って、ぬいぐるみサイズではしゃぐボンボンの姿をみてつぶやく。

アリスが気軽に送り出したから想像はついてたが、やっぱりこっちの自爆はしたところで消えるとかじゃないみたいだ。

SDサイズからオリジナルサイズになって、自爆したらSDサイズに戻る。

そんな感じだ。

「今の自爆って何回でも使えるのか?」

「うん、そう言ってるよ」

「制限とかないのか?」

「ないって言ってるよ。あっ、一回元の姿に戻ったらしばらく戻れないから、すぐに連続で使えないのが制限?」

「なるほど」

自爆の乱発は無理って事か。

「それで、ホネホネとプルプルを巻き込むってさっき聞いたけど、やっぱりそういうことか?」

「そういうこと?」

「ほら、さっき三体いた時に一人だけ魔法陣出して他二体もその魔法陣で爆発しただろ?」

「へえ、そうなんだ」

面白そう、と言わんばかりの笑顔を見せるアリス。

ってそうか、あれは見えなかったのか。

ルーティンの途中だけど魔法陣に誘発されて爆発した光景はほんの一瞬だった。時間にして多分100分の1秒もない。

アリスにはそれが見えてなかったのか。

「でもそういうことっぽいよ。やって見るね」

頷き、先に歩き出したアリスについて行く。

しばらくしてまた小悪魔とエンカウントした。

「あっ、ちょっと早い。ホネホネ、プルプル、先にあの子の動き止めて」

アリスの号令に従って、ホネホネはスケルトン、プルプルはスライムとオリジナルの姿に戻って、敵の小悪魔に向かって行った。

向こうは手を振り下ろす、が、それを止めるホネホネが腕をツカミ、プルプルが軟体っぷりを発揮して顔面にひっつく。

小悪魔の体にスライムが頭になったような光景。

脅威のスライム人間、というフレーズが頭に浮かんだ。

「3、2、1……いってボンボン!」

カウントダウンして、再度ボンボンを送り出すアリス。

ボンボンは飛び込んでいって、バンザイして魔法陣を出す。

直後、閃光と爆音があたりを支配する。

「きゃっ」

「おっと」

ある程度予想していた三倍の爆風。バランスを崩しかけたアリスの手を掴んだ。

サッと引いて自分の背中に隠す。

爆風はあくまで爆風。服とズボンの裾がパタパタするだけで俺にはダメージはない。

やがて、その爆風も完全に収まって。

「ありがとうリョータ」

「ああ」

「お疲れみんな」

アリスの肩の上で、いつの間にか戻ってきた三体のモンスターが踊っていた。

SDサイズの三体、喜ぶ姿は妙に可愛い。

さっきまで怯えていたホネホネもプルプルもボディランゲージで喜びを表していた。

「なるほど、魔法陣の中にいるモンスター次第で爆発が違うんだな」

「え? そうなの」

「今ので三種類の爆発があった。ボンボンは何回も見た普通の爆発。プルプルは青白い光がはじけた、みた感じ氷か水属性っぽいな。ホネホネは真っ黒で……爆発というかむしろ吸い込んで、呑み込んでたのかあれは。ブラックホールチックだから闇属性とかなのか?」

あごを摘まんで、爆発の一瞬に見えた三体のそれぞれの姿を分析する。

ほんの一瞬でしかもごちゃごちゃしてたから確信はないけど、多分そんなに間違ってない。

「わぁ……すごいねリョータ。今のでそんなにバッチリ見えたんだ……」

アリスは目を見開かせながら感嘆する。

「もう一回やってみるか? 今度はホネホネかプルプルかどっちか片方だけ。ボンボンがいるからわかりにくいかもしれないが」

「そだね」

「今度は時間調整しながらゆっくり行こう」

「うん!」

アリスと更に歩き出した。

歩いたり立ち止まったりして、仲間モンスターが元の姿に戻れるまでの時間を稼ぐ。

ちらっとアリスを見た。

この能力が一番すごいんだよなあ。

牛歩してた時はエンカウントしなかった、エンカウントはきっちり一匹。

ダンジョンの中の事を何となくで分かるアリス、会いたくないときに会わない、会うときはやりやすいように一体だけ。

その能力が一番すごいと思う。

「なあアリス、ダンジョンに入って、一番下の階まで行って戻ってくるまでの間、モンスターとまったく会わないってできるか?」

「できるよー、あっでも下の階に続く道を塞がれてたらだめだけど」

「それはそうだ」

その気になれば彼女はダンジョンの中を延々と回れるが、まったくエンカウントしないことも出来る。

かと思えば一直線にモンスターに向かうことも出来る。

うん、やっぱりとんでもなく強い能力だ。

「でもボンボンのこれちょっと困るね、自爆したらしばらくの間戦えないんだもん」

「火力は申し分ないけど、ダンジョン周回を考えたらやって休憩やって休憩のくり返しになるよな。確かに効率が悪い」

「だね。あっ落ち込まないでボンボン。ボンボンは悪くないよー」

アリスはしょげてるボンボンを慰めた。ホネホネとプルプルもその横でボディランゲージでボンボンを勇気づける。

ダンジョンの中だが、見てて和む光景だ。

そんな事をしてるうちにモンスターとエンカウントした。

相手は自爆する小悪魔の一体だけ。

彼女はホネホネだけを送り出して、そのホネホネが敵の小悪魔の足止めに向かった。

次にボンボンも送り出す。

「じゃあそれお願いね」

デフォルメされた小悪魔がこくりとうなずく。

それ(、、) ってどういう事なのかって不思議がっていると、ボンボンはホネホネたちを素通りした。

ボンボンたちを挟んだ俺達との反対側に行って、そこでバンザイをする。

魔法陣が広がって、そのギリギリのところにホネホネを引っかけた。

そして――爆発。

三回の自爆、俺とアリスは前もって距離をとって爆風から逃れた。

ちょっと強めの風の中、感心した俺はアリスに言った。

「そうか、これで爆発を見やすくしたのか」

「うん! 今のあたしにも分かった。ホネホネのって黒くて丸いみたいのだった。リョータの消滅弾に似てるね! 威力は負けてるけど」

「確かに消滅弾に似てるな。威力は負けてるけど」

「だよね! ――あっ! ボンボンおめでとう!」

「どうした」

「ボンボン、今のでレベルアップしたんだって」

「へえ、モンスターもレベルアップするのか」

「うん!」

よく見るとSDサイズに戻ってきたボンボンが更に踊っていた。

手をバタバタ振って跳んだり跳ねたりしている、ちょっとかわいい。

「レベルアップするとどうなるんだ?」

「んとね――」

アリスが答えるよりも先に、ボンボンは踊るのをやめて、俺に向かって手を振り下ろした。

「その仕草、もしかして――?」

「うん! 光の玉の方を出せるようになったって」

「すごいな」

SDサイズのボンボン、手を振った後、その手を腰に当てて得意げな顔をした。

レベルアップするモンスター、使えなかった技を使える様になる。

「もっとレベルアップしたら黒い玉も打てるようになるかな」

「なるかな! 頑張ろうねボンボン!」

ボンボンを手のひらにのせて励ますアリス、そのボンボンは拳を握って小さくガッツポーズする。

黒い玉か。

完全に敵だった頃の姿を思い出す、自爆するまでのルーティン、二回振り下ろされる腕。

ほとんど同じ姿で、弾を連射する地下二階と三階のモンスター。

多分、出来る様になるだろうな、と俺は思った。

「それができたら周回も強敵との戦いも、両方できるようになるな」

「うん!」

三体の仲間と共に、アリスは満面の笑顔を浮かべたのだった。