軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

86.開かれた金脈

夜、アリスの家。

この村出身のアリスは自分の家を持っていた。

他の村人の家とほとんど同じ、簡素な作りのもの。

イヴと共に、アリスの家に泊めさせてもらいにきた。

「ごめんって、早く助け出すためにああするしかなかったんだ」

「……すごく揺れた」

「本当ごめん」

「低レベルは非道い」

「謝るから許して」

「低レベルに生きる資格はない」

「そこまで言うの!? つかそれ昔の意味に戻ってない?」

「ありゃりゃ、あたしも生きる資格なくなっちゃった」

イヴは珍しくふてくされた。

ニンジン以外の事で彼女がこんな表情を豊かにさせるのは珍しい。

彼女がまだ中にいるダンジョンをガシガシ変形させちゃったことでよっぽどいやな目にあったんだろうな。

おれとアリスはひたすら謝った。

「……ニンジン百本」

「帰ったらSランクのを用意するから」

「じゃあ許す」

なんとかイヴに許してもらって、ホッとした。

「でもよかった、みんな助かって。リョータのおかげだよ。ラナーナなんてリョータがいなかったらやばかったよ」

「あの一番重傷の女の人か」

ダンジョンの中から助け出した村人は大なり小なりケガをしていた。

大抵は回復弾で直せたのだが、一人だけ手足がぐちゃぐちゃになってるレベルの、今にも死にそうな女の人がいた。

回復弾じゃ治せなくて、強化弾フルの回復弾でようやく治せた。

「あれを治すなんてやっぱりリョータすごいよ」

リョータすごいかはともかく、強化弾すごいはおれも思った。

あれほどの大けがを治せるのなら、この先、死んでさえいなければどんな怪我でも治せる完全治癒魔法を手に入れたも同然だ。

それほど彼女のケガはひどくても、強化弾マシマシの回復弾で完全に治せた。

アリスの家の中で、おれ達は村人の完全救助にほっとしつつ、世間話をしていた。

まだ出てきて一日しかたってないのに、もうエミリーの家が恋しくなってきた。

明るくて温かいエミリーハウス、早く帰りたいな、とちょっぴりホームシックだ。

「あれれ? そういえばリョータ、ドロップはどうだったの?」

「ドロップ? ……そういえば見てないな」

「だよね、あたしも今気づいたけど見てない。ダンジョンの入り口でもいっぱい倒したよね」

頷くおれ。

ホネホネとプルプルをダンジョンに入れて構造を変えたとき、入り口に転送されてきたのは村人じゃなくて、たまにあの小型の悪魔もいた。

次にホネホネとプルプルを入れるためにそいつらをダンジョンの外から撃って排除してたんだが、そういえばドロップはなかった。

「外から倒すとドロップしないのかな」

「そんな事はないはず、初期の冷凍弾はその逆でドロップしてたし、というかアランたちを助けたときは完全にダンジョンの中だった」

「ドロップしないダンジョンなのかな」

「ニホニウムみたいにか? それでもおれならドロップはするはずだ」

おれは他の人間とは違うドロップS持ちだ。

今まで全部そうだったように、他の人間が「絶対にドロップしない」ものでもおれだったらドロップしてきた。

おれがドロップしないというのはちょっと考えられない事だ。

「イヴは中でモンスター倒した?」

「ドロップなかった」

「どういうことなんだ――」

「きゃあああ!」

あごを摘まんで考えようとすると、ふと、外から女の悲鳴が聞こえてきた。

とっさにドアを放って駆け出した、悲鳴が聞こえてきた方角に走っていった。

たどりついたのは洞窟の入り口、月明かりの下で女性がモンスターに襲われていた。

モンスターはあの小さい悪魔だ。

小憎らしい顔はそのままで女性を襲っている、よく見れば女性は既に負傷している。

「こいつ!」

通常弾を連射してモンスターを女性から離れさせた、さらにそいつがよけていった方角に先読みして貫通弾を置いておく。

ドンピシャ、とばかりにそいつが貫通弾に あたりに(、、、、) いった。

やっぱり知能レベルが高いモンスターだ、他のモンスターとは違った回避パターンをする。

モンスターというより戦いなれた冒険者の様なよけ方で――故に先読み出来た。

撃たれたそいつは地面に墜落してけいれんしだした。

それを放置して女性に駆け寄って、しゃがみ込んで容体を確認。

「大丈夫か?」

「痛い……腕が痛い……」

「大丈夫だ、ちょっと待ってろ」

回復弾と、ケガの度合いを見て強化弾を一発だけ込めて彼女を撃つ。

魔法陣が展開、癒やしの光が彼女を包む。

光が収まった後、彼女のケガは完治した。

「あれ? ケガが……」

「大丈夫か?」

「今のあなたが……ありがとう」

頷き、立ち上がる。

度合いの判断もぴったりでよかった。

強化弾は込めれば込めるほど他の弾を撃ったときの効果があがるが、込めたぶん他に込められる弾丸の数が減ってどうしても汎用性がきかなくなる。

必要な強化度合いを見極めて行くのが最近のおれの課題だ。

「リョータ!」

「もう大丈夫だ」

「よかった……あっ」

「どうした」

「あれ」

おくれてやってきたアリスがこっそりおれに耳打ちした。

そこはさっきまでモンスターがけいれんしていた場所だが、地面に弾丸が落ちていた。

感謝の目でおれを見あげてくる女性をちらっとみて、アリスにいう。

「あの人を頼む」

「うん!」

アリスが女の人を連れて言ったのを確認してから、おれはおちている弾丸を拾い上げた。

今までみた事のない弾丸はあのモンスター、ハグレモノ化したヤツからのドロップだ。

それを込めて、強化弾を抜いて、地面に向かって撃つ。

魔法陣が着弾した場所に広がって、地面にパチパチと電気が走った。

電気弾、それか雷弾ってところか?

それは……いいんだけど。

これはハグレモノがドロップしたヤツだ、そしてハグレモノというのはドロップ品が人気のないところに放置されてモンスターに戻ったヤツの事をいう。

たしかにここは人気がない、建物が呑み込まれて、その上村人はある種のトラウマを植え付けられたのか、ダンジョンの入り口まわりはまるで人気がない。

ハグレモノ化するには最高のロケーションなのだが、なにかがドロップしてたのか?

「どうしたの?」

「イヴか、今あの小さい悪魔のハグレモノが出たんだ。ドロップ品がこのあたりにおちてたってことになるが、それがなんなのかが気になってな」

「うさぎもいっぱい倒した、でもドロップ見てない」

「だよな、おれもみてない」

あごを摘まんで考える、もう一回ダンジョンに入って確認するか。

と思ったその時、月光に反射して、イヴのバニースーツから見える上乳がきらりと光った。

「これは!」

イヴに迫ってそれをみた。

月光の下、その一点が光を反射して輝いていた。

「これは……もしかしてき――」

ドスン! と脳天に衝撃がきた。

思わず後ずさる、頭を押さえる。

イヴがジト目でおれを睨んできた。

「な、なんだ?」

「オッパイもんだ」

「え? あっごめん! つい」

「ただで揉むのは外道」

「金払えばいいのかよ!」

「一揉みニンジン200本」

「高いのか安いのか分からないな!」

イヴはイヴだった。

それはともかくとして、おれは彼女の胸をさした。

「それ光ってるだろ?」

「光る……? これってもしかして」

「ああ、金、だよなそれ」

イヴが自分の胸――谷間に指を入れてそれをすくい上げた。

光を反射するそれは、砂粒大の黄金だった。

ダンジョンに入る。

エンカウントした小悪魔はおれを見るなりにやけた顔で逃げ出した。

追いかけると途中に落とし穴があって、その下に鋭い刃がおちた人間を出迎えた。

とっさに冷凍弾をうってまとめて氷にして、その氷を蹴って落とし穴から飛び出す。

こしゃくなマネをした小悪魔を追尾弾で撃ち抜く。

そして、あらかじめ装備してきたポーチをあける。

ダンジョンの中では見えづらかったが、そこに予想通り金の粒……砂金が入っていた。

このダンジョンのドロップは砂金だった。

慌ててる時につい見落とす程度の大きさだが、間違いなく砂金だとおれは確信した。

何もない村に生まれたダンジョンは黄金をドロップする。

その話はその日のうちに村中を駆け巡り、近隣の 複数の(、、、) 街にも伝わった。

そして、夜が明ける――。