軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

84.悪魔と子を思う親

地図と話を持ってかえって、仲間たちに話した。

明るくて温かい、普段ならゆっくりいやされるリビングに集まった仲間たちは深刻な顔でそれを聞いた。

「その村の名前は?」

「えっと、地図によるとインドールらしい」

「えええ!?」

アリスが声を張り上げた。

「どうしたアリス」

「あたしの村だよそれ。本当にインドールなの?」

「ああ……ここなのか?」

若干戸惑いつつクリントからもらった地図をアリスに見せた。

慌てて受け取った彼女は一瞬でこたえた。

「うん! 間違いないよ、インドールだよ。こんなことになってたなんて……」

「た、大変な事になったです……」

「リョータ! あたしも行く、つれてって」

「よし行こう。あとはもう一人誰か一緒に来てほしい」

「どうして一人なの? みんなで行った方が戦力が増えて救出の可能性高くなるんじゃないの?」

セレストは当然の疑問をぶつけてきた。

「いや、話を聞くと誰かが入るたびに構造が変わるローグダンジョンだ。ぞろぞろ行っても全員入れる訳じゃない。構造変わるたびに呑み込まれた分の村を危険に晒すかも知れないからな」

「なるほど……」

「だからあと一人なのですね……」

どうしようか、と悩んでいる頃。

「うさぎが行く」

と、意外な人から手が上がった。

セクシーなバニースーツに自前のウサミミ、イヴだ。

ニンジンの絡まない件で彼女が名乗り出てくるのは意外だった。

「いいのか?」

静かに、しかしはっきりとうなずくイヴ。

こうして、イヴとアリスとの三人で、インドールに向かうことになった。

インドールは山の麓と小さな河に挟まれたところにある何もない小さな村だった。

シクロに比べて建物の作りが簡素で、田舎の更に田舎って感じの場所。

かといって農村というわけでもない、家畜もなければ農具もない。

普段の生業がどのようにして成り立っているのか気になってしまう場所だ。

が、気にしている場合ではなかった。

村にやってくるなり、騒ぎが聞こえてきた。

「何かあったのか?」

「こっちから聞こえてくるよ!」

そう言ってアリスは真っ先に駆け出した。

出遅れたおれとイヴはその後を追って走って行く。

何棟かの家を通り過ぎた後、開けた場所にダンジョンの入り口が見えた。

普段なら街の外れにあるダンジョンの入り口が何故か村の中心にあった。

まわりは不自然に何もない。何もない村とはいえ、人が住む痕跡や通った道があるものだが、そこはなにもない。

まるで消しゴムで、ダンジョンの入り口まわりだけ消されたかのような不自然さを感じる。

そこに村人が集まって、ガヤガヤいいながらダンジョンの入り口を見ている。

アリスはそのままかけよって村人にたずねた。

「みんな! どうしたの?」

「アリスちゃんじゃないか、いつ帰ってきたんだ」

「ダンジョンに村が飲まれたって聞いて戻ってきた。何かあったの?」

「ああ、ダンジョンに閉じ込められた連中のうち一人が戻ってきたんだよ。助けを求めてダンジョンから脱出したんだ」

アリスに答える村人。

よく見ると離れたところに格好がボロボロになっている村人がいる。

そいつは手当てを受けながら、ダンジョンの中に飲まれた村や村人の状況を話している。

「そっか……逃げ出せたんだ」

「それがな、一緒に逃げてきたもう一人、リックと途中ではぐれてしまったらしいんだよ」

「はぐれた?」

「入り口手前ではぐれたらしいんだ」

「じゃあまだ中にいるの?」

男は頷き、アリスは言葉を失った。

なんかいやな予感がした。

そんな事を思っていると村人が騒ぎ出した。

「誰か出てきたぞ!」

「リックだ! あの姿はリックだ!」

「中で倒れたぞ!」

ダンジョンの入り口を見た。

先に逃げ出した男よりもさらにボロボロになった青年が入り口の向こう、ダンジョンの中で倒れたのが見えた。

手をふるえながら伸ばしている、重傷だが、まだ息はある。

「リック!」

村人の中から初老の男が一人かけだした。

みた感じ青年の父親だろう。

そいつは必死に走って行った。逃げてきた息子を目の前にして当然の反応だが。

「待て! その人を止めろ!」

おれは叫んだが、村人はきょとんとして動かなかった。

一部はおれを睨む、何を言い出すんだお前って顔だ。

説明してる暇はない、止めないと。

そう思って地を蹴ってダッシュしていくが――男の方が先にダンジョンに入った。

入り口に見えている息子を助けるためはいった……が。

「き、消えたぞ」

「二人ともどこに行ったんだ!?」

男が足を踏み入れた途端、入り口から二人の姿がきえた。

「遅かったか……」

おれはため息を吐いた。

人が入るたびに構造が変わるローグダンジョン。

例え目の前に見えてても、入って助けようとするのは一番やっちゃいけないことだった。

「おれが入るよ」

まだざわついている村人をよそに、イヴとアリスの二人に言う。

「リョータ一人で入るの?」

「今のを見ただろ? ぞろぞろ入っても仕方ない。むしろそのたびにダンジョンの構造を変えて状況を悪くするかもしれない」

「そ、そうだね」

「うさぎたちはどうすればいい?」

「入り口を封鎖しといてくれ。あの様子じゃ何かあるたびに村人が突入しかねない」「わかった! みんなを説得しとく」

「力づく」

アリスは拳を握って意気込み、イヴは無表情で手刀をヒュンヒュンふった。

頼もしい二人にこの場を任せて、おれはダンジョンの中に入った。

瞬間、まわりの景色が一変した。

ダンジョンは石畳の地下道タイプで、おれは一本道に立ってる。

前を見ても後ろを見てもダンジョンが続くだけ、今入って来たダンジョンの入り口などどこにも見当たらない。

やっかいなダンジョンだな、大量の冒険者が入って周回するのに向いてないな。

おれもこの世界に染まりつつあるな、なんて事を思いつつ、銃にあらゆる弾丸を込めて、どんな状況にも対応出来る様に備えてさきに進む。

早速モンスターが現われた。

人型のモンスターだが、体のサイズが小さい。エミリーの130センチよりも一回り小さい。

かといって子供体型という訳でもなかった、顔は嫌らしいくらい大人で、角を生やして鋭い牙が見える。背中にコウモリの羽があってそれを羽ばたかせて飛んでいる。

小型の悪魔のようなモンスターだ。

こういうモンスターの名前ってなんだろうな、と思いつつ銃を構えると向こうは逃げ出した。

思いがけない事態に銃を構えたまま固まった。

出会い頭でモンスターに逃げられたのはこれが初めてなんじゃないだろうか。

「そういうモンスターなのかも知れな――」

ガツーン! と後頭部から衝撃がきた。

完全に不意を突かれて倒れかけた、ぐっと踏みとどまって振り向く。

さっきのモンスターがいた、いつの間に回り込んだのかおれの後ろから攻撃してきた。

偽の撤退と奇襲が成功したからか、さっき以上にいやらしい顔をしていた。

そいつは更に逃げ出した――が。

「にがさん!」

速さSで回り込んだ、飛んでくるそいつのギョッとした顔をみてトリガーを引く。

カウンターのように弾丸がそいつの羽を貫いた。

片方の羽をやられて、空中でふらふらする。

とどめだ――。

「ぐわああああ!」

男の悲鳴が聞こえた。

聞き覚えがある、さっき息子を助けにはいった初老の男の悲鳴だ。

モンスターを放り出して、おれは悲鳴の方角に向かっていった。

石畳の地下道を駆け抜けて、少しだけ開けた場所に出た。

そこに男がいた、その息子もいた。

モンスターも、いた。

息子は地面に倒れて、息も絶え絶えって様子だ。

その息子の首筋に鋭い爪を当てている悪魔の様なモンスター。

そしてモンスターはもう一匹、息子を人質にとられて反抗出来ない父親を嬲っていた。

「ぐおっ……くわあああ!」

父親はなすがままだった、何も出来ない。

ただ、必死な目で倒れている息子を見つめるだけ。

そんな父親の姿をみて、二匹のモンスターは「けけけ」と笑った。

血が冷たくなるのを感じた。さっき奇襲された時以上の怒りを覚えた。

息を吸って、地を蹴って突進。

まずは息子を人質にとっているモンスター、そいつの頭を左手でわしづかみした。

そのまま更に突進して、まだ「けけけ」と笑いながら父親を嬲るモンスターの頭を右手で掴む。

戸惑う二体のモンスター、そいつらを掴んだまま壁にたたきつけ、押しつける。

ぐぐぐ――グシャッ!

ダンジョンの壁に押しつけた頭がつぶれる感触がした。

手を放すと、頭を失った二体の小さい悪魔がドサッ、と地面に落ちた。

「リ……ック……」

散々嬲られて立ち上がる体力ももうなくて、地面を這って息子に向かって行く父親。

息子も重傷だが、もはや息子より父親のほうが重傷に見える。

このままだと二人ともまずい……が。

銃を抜き、銃弾を込めなおした。

強化弾五発に、回復弾一発。

考え得る限りの最高の回復構成で、父親と息子それそれに撃ち込んだ。

白い光が二人を包み。

「リック! 大丈夫かリック?!」

「父さん? どうしてここに?」

一生懸命な父親とキョトンな息子。

まずは、助けることができたのだった。