軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

82.一億プレイヤー

この日、午前中 は(、) 通常運転だった。

ニホニウムダンジョン、地下五階。

ダンジョンスノーが降り注ぐ鍾乳洞のダンジョンで、赤い骨、レッドスケルトンと戦っている。

ダンジョンの魔力を受けて強化したレッドスケルトンはスピードがものすごく速く、通常のスケルトンの三倍で襲ってくる。

しかも、複数で襲ってくる。

向かってくる三体のレッドスケルトン、銃を構えて通常弾を連射。

二体をばらばらの骨にしたが、一体うち漏らした。

うち漏らしたヤツは一瞬でおれに肉薄、腹に蹴りを入れるとすぐに離れた。

ヒットアンドアウェイ、モンスターながら見事な動きだ。

「まだ速くなるか!」

おれを蹴ったあと後退――つまりおれの前方に向けて離脱していったのだが、更に加速して一瞬でおれの後方に回った。

なにかが迫るのを感じてとっさに真横に飛ぶ、レッドスケルトンが振り下ろした腕がヒュン、と空気を鋭く切り裂いた。

レッドスケルトンは人間の接近を感知してダンジョンスノーを取り込む、速攻で倒さないとどんどんダンジョンスノーを受けて速くなる。

パン!

通常弾を撃ったがもう当たらなくなった、ものすごい機動力で躱された。

かたかたかた。

銃弾をかわしたそいつはあごの骨を高速にゆらした。

まるで笑ってる――笑われてるように感じた。

「……」

さらに高速に迫るレッドスケルトン、おれは銃をしまった。

途中で方向転換してまた一瞬でおれの背中に回り込む――が。

「あまい!」

先読みしたおれは本気を出して、そいつの後ろに回った。

速さSは飾りじゃない、おれは、レッドスケルトンと速さ比べした。

そいつが動いた後、スピードで動いた先に先回りする。

攻撃はしない、動いて、軽く小突いて攻撃が当たる事だけを確認。

動かれて、追いついて、小突く。

それを繰り返して、約五分。

レッドスケルトンはおれよりも速くなった。

回り込めなくなって、攻撃も当たらなかった。

「五分か、レッドスケルトンが速さSを上回るまで」

ふと気になったからテストしてみた。

その結果、おれより速くなるまでに五分かかるという結果がでた。

覚えておこう。

銃を取り出した、二丁の銃にそれぞれ強化弾マシマシと、追尾弾を込めて撃った。

弾がレッドスケルトンめがけて飛んで行く。そろそろ残像が見える様になったレッドスケルトンはよけるが、躱されても曲がって追いかけていく追尾弾に背中からうたれた。

二発の弾丸をうけて、骨がばらばらになって、種をドロップした。

それを拾って、MPをあげる。

能力アップ、そしてテスト。

午前中 は(、) いつもの通常運転で、止まっていたMPをEからDにあげたのだった。

午後はそわそわした。

テルルダンジョン、地下一階。

スライムを倒してもやしをドロップ。

銃はしまって、魔法カートを押して、飛んで来たスライムを掴んでカートの上で握りつぶしてダンジョンを回る。

何日か前に編み出したスーパーのカートスタイルだ。

もやしが一杯になると、ダンジョンを出ないで転送ボタンを押した。

ガコン、と音がして、カートが空になった。

更にスライムを狩ってもやしをドロップ。

しばらくすると一杯になって、また家に――エルザが派遣されてるあそこに転送した。

転送をするたびにそわそわした。

金額は数えてない、あえて数えなかった。

途中から満杯にならなくても早め早めの転送をした。

もやしだけじゃなくて、三階にいってカボチャも狩った。

四階でタケノコも狩って、五階でスイカも狩った。

そのせいで余計に金額が分からなくなった。

そわそわする。

全部終わった後、結果をまとめてドーンと知る、というのをやりたかったが、途中からものすごくそわそわしだした。

戻って途中経過聞いてこようか、と何度も迷ったけど、それをぐっと我慢してとにかく狩りを続けた。

そうして、午後はそわそわしながらも。

一度もダンジョンを出ることなく、ノンストップで狩りを続けた。

夕方、三階建ての自宅に戻ると、一階にエミリーとセレストが既に戻っていた。

「おかえりなのです」

「おかえりなさい」

「ただいま。集計してるのか」

一階の魔法カート置き場、急遽つけた事務机。

そこでエルザが紙の上にペンを走らせている。

ぱっと見数字が色々並んでいる、今日の分の集計をしているようだ。

「みんなはどうだった?」

「まだ知らないわ。集計が終わった後、リョータさんが戻ってからまとめて発表してってお願いしたの」

「初めてなのです、一気に知りたいのです」

「おれもそうだ。途中からそわそわして集中力駄々落ち、今日は結局効率悪かったかもしれない」

「わかるです」

エミリーが同意を示してくれた。

明日以降はこのそわそわがなくなるから効率あがるはずだろうが、今日ばかりは逆に稼ぎが落ちてもしょうがないと思った。

そんな事を考えながらしばらく待っていると、エルザがペンを置いて顔をあげた。

「お疲れ様。集計終わったのか」

「はい。皆さんの今日の分は――」

「あっ、まずは個別で頼む」

「え? あっはい。ではセレストさんは15万6551ピロです」

「前は10万くらいだったなセレスト」

「驚きだわ……1.5倍よ……」

本人も信じられないって顔をした。

「つぎにエミリーさん。27万3972ピロです」

「ええええ! そ、そんなにあるですか?」

「はい、間違いありません」

「すごいなエミリー」

「よ、ヨーダさんのおかげです」

「いやそうじゃなくて、27万ってのがすごい」

「どういう事です?」

「昔計算した事があるから覚えてるんだけど、毎日27万稼いだら、年間で1億になるんだ」

「えええええ!?」

「一億って……すごいわね」

驚くエミリー、舌を巻くセレスト。

もちろんおれ達はいろいろあって毎日ダンジョンに通ってはいないが、それでも一日27万というのは一つの象徴というか到達点だ。

「おめでとうエミリー、実質1億プレイヤーだ」

「そんな……ヨーダさんのおかげです」

エミリーは頬を染めて、恥じらいながらも微笑んだ。

ちゃんと嬉しいみたいだ。

「さて……最後はおれか」

まだそわそわした。

エルザをみて、集計の報告をまつ。

頭の中でドラムロールがなりだして心臓がさらにパクパクした。

「リョータさんは、299万9808ピロです」

「おおっ! おお? あー……300万届かなかったか」

一瞬のうちにいろんな感情が行き来した。

記録更新の嬉しさ、その後にタッチの差で300万に届かなかったもったいなさと残念感。

いろんな感情が胸の中を行き来した。

が。

「すごいわね、やっぱりリョータさんだわ」

「え?」

「10億プレイヤーなのです!」

「……おお」

一億は大台なのですぐに反応したが、十億というのは逆にすぐには分からなかった。

十億プレイヤーか……うん、すごいかも知れない。

夜は、尻上がりの興奮によって、なかなか寝付けなかったのだった。