軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

79.トリプルスコア

セレストとエミリーが無事免許を取得した次の日の朝。

エミリーの手入れのおかげで、温かくて優しいリビングの中で仲間が全員集合した。

全員がエミリーの作った朝飯に舌鼓をうっていると、そのエミリーがおれに聞いた。

「ヨーダさん、今日は予定あるですか?」

「予定? 特にないからダンジョン周回するつもりだ。収穫祭も挟んで色々あったから、そろそろ稼がないとな」

おれは首をかしげて、天井を見あげながら考えた。

収穫祭を挟んで色々あった。

アリスと出会ったり、ニホニウムのダンジョンマスターを倒したり、マーガレットのレベルを上げたり、エミリーとセレストをカンストさせたり、免許取りに付き合ったり。

思えば、もう一週間以上も普通のダンジョン周回をしてないかもしれない。

その間当然の如く収入が途切れている。

おれはもうサラリーマンじゃない。ブラック企業にいたとは言え、毎月十何万かは黙っていても手取りで入ってくる。

それが今はない。この一週間で収入がほぼゼロに等しい。

それでもまったく問題ないのが今のおれ……おれたちなのだが、そろそろ稼がないとな。

「分かったです、テルルの地下八階に行く準備するです」

「久しぶりにみんなで狩りね、楽しみだわ」

「あたしは初めてかも」

「うさぎは 弁当(にんじん) がほしい」

仲間たちが盛り上がった。

朝食の食卓は賑やかで楽しく、そこにいるだけでいやされそうな空気がある。

その空気の中、おれは少し考えて、提案した。

「今日は別行動にしないか?」

「ヨーダさんやっぱり用事があるです?」

「いやそうじゃないんだ。みんな強くなった。もちろんまだ強くなるけどさ」

「なるですか? わたしはもうレベル上がらないですよ?」

「なるわ、リョータさんが手を加えた魔法の実で二つは魔法を覚えられるし、これからも様々な装備を手に入れるわ」

「モンスターがあたしを呼ぶ声もまだ聞こえるしね」

「世界に、まだみぬニンジンがある限り」

セレストをはじめ、みんながエミリーに強くなる根拠を示す――イヴのだけどうかと思うけど。

「そう、まだ強くなる。でもみんなレベルカンストしただろ? ここらで一度何が出来るのか、一日周回したらどれくらい稼げるのか。それを把握したいんだ」

「なるほどなのです」

「それは重要ね」

頷く仲間たち、異論はないようだ。

「それならわたしは八階行くです、スチールスライムならアルセニックと同じ事ができるです」

「そういえばアレ硬い割りにスピードは普通のスライムよりもちょっと低いくらいか。なるほど」

「なのでヨーダさん、ドロップ1のポーションを下さいなのです」

「1でいいのか?」

「はいです、1と指輪でBになるです。Bがあれば周回出来るし安上がりなのです」

なるほど。

おれはドロップアップのポーションを二種類もってくる。

紙幣のハグレモノからとれる+3のポーションと、コインのハグレモノからとれる+1のポーション。

紙幣は一つで1000ピロだが、コインは1ピロだ。

+3はそれなりに値段がするけど、+1は実質ノーコストだ。

レベルカンストして、+1でBになるのなら確かにそっちの方が周回にいい。

「わかった。そのうち+2の装備もほしいな。それでAになる」

「はいです」

「わたしは……そうね。アリス、一緒に来てくれる?」

「あたし? いいけど……あっ、ホネホネにぷるぷる」

SDサイズのモンスター二体はアリスの懐に隠れた。

「がーん! ゴホン。そうじゃなくて、真面目な話なの。地下七階のガッツスライム、あれにその子達の力を借りたいの。わたしとその子達なら周回もレアモンスターも対処できるわ」

「そなんだ」

「セレストがいうのならそうなんだろう」

「わかった、じゃあいく」

「ええ」

静かにうなずくセレスト、彼女がテーブルの下で密かにガッツポーズをしてるのをおれは見逃さなかった。

なんだかんだで私情が入ってるんだろうが、まあ大丈夫かな。

「イヴは?」

「塵は塵に、うさぎはニンジンに」

「+3ポーションをあげる。カウントだけよろしく」

「お前の事が好きだったんだよ!」

イヴがくわっ、って目を開け放った。

朝食の食卓で色々決まって、この日はそれぞれ別行動になった。

おれは仲間たちが行かない階層を回る事にした。

まずはテルル地下一階、モンスターはスライム。

魔法カートを押して、歩き回った。

遭遇したスライムが襲ってきた、それを片手で受け止めつつ捕まえて、魔法カートの上で銃を――

「いや」

思い直して、そのまま握りつぶした。

ぷるん、って感触がして、スライムが消えて、もやしになって魔法カートの中に入った。

最初の頃に比べて、いや収穫祭の前と比べてもスライムが弱く感じた。

ニホニウムのダンジョンマスターのおかげだろうな。

あれは強かった、通常攻撃は効かないし、攻撃されると痛いしで結構苦戦した。

あれの後だと、スライムなんて冗談抜きで鼻くそほじくりながらでも倒せる。

魔法カートを押して進む、襲ってくるスライムを受け止めて握りつぶす、襲ってこないヤツは歩いて向かって行って、拾い上げて魔法カートの上で握りつぶす。

「~♪」

鼻歌交じりに、スーパーで買い物してるような動きだ。

しばらくすると魔法カートの売値をはじき出す機能が4万ピロを教えてくれた。

カートに満載したもやしをもって街に戻り、買い取り屋・燕の恩返しに持ち込む。

ダンジョンに戻る。

地下二階はスルー……しようと思ったらイヴにつかまったので、Sドロップのリョータニンジンを一本彼女に渡して通行料代わりにした。

地下三階、コクロスライム。

エミリーの天敵でもある、黒光りして、カサカサと地面を這うように進むスライム。

ちょっとまえはよく下の階層にいったのだが、その時はエミリーの目と耳を塞いで、みんなで護衛して進んでいた。

ちなみにアリスが仲間になってからは、彼女がモンスターのいる場所を正確に読み取れることもあって、少し遠回りだけど足音さえも聞こえないルートで進み、更に 安全(、、) になった。

その地下三階で、コクロスライムがドロップするのはカボチャ。

おれは別に怖くないから、カサカサと向かってくるそいつを拾い上げて、同じようにつぶした――が。

ポン、とポップコーンのように、手のひらの中でコクロスライムがカボチャになった。

体積が一気に大きくなって、手が弾かれた。

ちょっとしびれた。

「モンスターにノーダメージのくせにドロップでこうか」

ちょっと面白かった。

コクロスライム自体はそんなに強くない。

しかし握りつぶしても叩いても、踏みつぶしてもカボチャのポップコーンにやられるから、銃と通常弾を使って倒した。

カボチャが四つドロップして、42000ピロになったから、それを燕の恩返しに売ってきた。

これで約8万ピロ。

更にダンジョンに戻って、関所イヴにニンジンを通行料に払う。

地下四階にきた、モンスターはバットスライムだ。

やたらと飛び回って、時には近づかないで天井にコウモリのようにぶら下がるから、見つけ次第通常弾でうった。

遠くでドロップするが、ポーチを装備して吸い取ってもらい、その後魔法カートに入れた。

通常弾、ポーチ、魔法カートのトリプルコンボでかり進めていく。

地下四階だがやっぱり弱い、おれはノーダメージで駆け抜けて、魔法カートを一杯にした。

魔法カートがはじき出した金額は22万ピロ。

これで約30万ピロ。

グルメのおかげでブランド化したリョータタケノコは同じ量でこれだけの金額で売れるのだ。

ブランド化してるからやり過ぎると暴落を起こすけど、今日くらいいだろう。

それを買い取ってもらって、またまた通行料を払った後、地下五階にきた。

スライムが何匹も繋がっているヘビスライムと遭遇した。

まずは用意したパンドラボックスを使って、一体倒した。

箱の中にドロップのスイカが吸い込まれて、箱におれの顔がプリントされた。

イーナの実家の八百屋に納品するヤツだ。

それが終わった後、普通に倒した。

ヘビスライムは近づいてくるから、拾い上げるか、攻撃をよけて掴むかして、魔法カートの上で引きちぎった。

ポン、と大玉のスイカがドロップされて、魔法カートの中に入った。

カートを押して周回する、ヘビスライムも特に強い事はなく、楽々で周回した。

カートいっぱいのスイカは5万ピロになった、そして納品する顔つきのスイカは固定客がついてるからと一つで五万ピロになった。

ものは同じなのに生産者表示で値段が段違いだ。一日一個限定だけど、これは美味しい。

仲間たちが回ってない階層を一周して、40万ピロの稼ぎになった。

「さて、ここからが本番だ」

燕の恩返しを出て、おれは腕まくりした。

一周したから、これからが本番だ。

夜、エミリー・ハウスのリビングでいやされつつ、みんなの合流を待った。

最後のイヴが戻ってきた所で、報告会を始めた。

「うさぎの稼ぎ、12万相当。自己新」

「自己新なのか?」

「今まで野菜ドロップ低かったから」

「そうか、肉ドロップ高いのにあえてシクロに来たんだもんな」

「というか、相当ってどういう事?」

アリスが疑問を呈した。

「全部食べたから」

「12万ピロ分のニンジン全部かよ!」

突っ込まざるをえなかった。

ピロと円の価値はほぼ一緒だ、つまりイヴは卸値12万円分のニンジンを一日で食べたことになる。

「わたしは16万ピロです、やっぱり新記録なのです」

「すごいなエミリー。イヴに勝ったぞ」

「負けたのはイヴちゃんが食べてたからです。終わるまで食べるのを我慢するだったらわたし負けてたです」

「うさぎ、それなら倍はいける」

「じっくり味わったんだな」

「わたし達は21万5123ピロ」

「一人あたり10万ちょっとだね」

セレストとアリスが報告した、セレストは性格だからか、一人だけ詳細まで報告した。

全員が報告を追えた後、おれを見つめる。こっちの数字がきになるのだ。

おれは咳払いして、最後にエルザに出してもらった明細を取り出して、端数を切り捨てて報告した。

「156万ピロだ」

「「「おーー」」」

「ニンジン一週間分だ……」

三人が歓声をあげて、イヴが妙な計算をした。

「すごいですヨーダさん、みんなの分をあわせてもヨーダさんの方が上です」

「トリプルスコアね、さすがだわ」

「リョータ大金もちじゃん」

仲間たちが口々にほめてきた。

ちょっとだけ嬉しい。

「一家総出なら一日あたり200万ピロ稼げるってことだな」

「そういうことだね」

「これだけ稼げるならパッと使っても問題無いか」

「使うのです?」

「ああ」

エミリーからアリス、仲間たちをぐるっと見回した。

「後回しにしてた、全員分の魔法カートを買おう」

一呼吸あいて、みんながその案に賛成をしてくれた。