軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

70.ダンジョン生まれのおんなのこ

女の子を連れて、買い取り屋の外にでた。

「キミの名前は?」

「アリスだよ」

「そうか、おれは佐藤亮太。これからよろしくな」

「うん!」

「さて、まずはキミを仲間たちに紹介しないとな。それと説得か」

ブラック企業そのもののあの男に渡したくなくて衝動的に仲間したけど、さてどう説得するか。

みんなが反対する姿はあまり想像できないから、このまま連れ帰ってストレートに話しちゃうか。

「低レベルが二人」

「え?」

イヴがいきなり現われた。

ウサミミにバニースーツの彼女は、いつものアンニュイな目でおれ達を見つめていた――が、その目は次第にアリスだけに向けられた。

「低レベルきらい――」

「それはだめ!」

彼女とアリスの間に割り込んで、チョップを代わりに受けた。

ペチッて音がして、ちょっといたい。

「低レベル邪魔」

「邪魔じゃなくて、知らない人にチョップとかダメ」

「でも低レベルきらい」

確かにアリスは低レベルだけど。上限が2で多分今は1だからどのみち低レベルだけど。

「でもダメだ、彼女にチョップしたら――ニンジン一年間抜き」

「――っ!」

イヴが絶望した。

がっくりと地面にorzになって、ウサミミが力なく垂れた。

脅しが効果的すぎて逆におれは焦ってしまった。

「ああいや、そこまで落ち込まれると逆にこまる。えっと、彼女にしなかったらニンジン抜きにしないから」

「ほんとう?」

「ああ、そっちがしないならな」

「ニンジンのために我慢する」

「そうか、ならよし」

イヴがすっくと立ち上がった。

ついでにおれにものすごい 早い(、、) チョップした。

まあおれにする分には構わない。

「そうだ、この子を仲間に入れたいんだけどいいかな」

イヴはアリスをみた。

「ニンジン、好き?」

「ごめん、ニンジンはちょっと苦手なんだ」

「なら、いい」

「いいのか!」

「奪い合いにならないから」

「なるほどそういう意味で。ならイヴはそれでいいけど、他の二人はどうかな」

「説得する」

「うん?」

「ニンジンをくれたら、うさぎが代わりに説得する」

イヴはおれを見つめた。

ものすごいキラキラした目で。

これはむしろ……ニンジンをおねだりしてる目だ。

別にエミリーとセレストが反対するとは思えないし、イヴが説得したからおれより上手く行くって事はないけど。

このおねだりの目には勝てないな。

「わかった、二人を説得したら丸一日ニンジン食べ放題で」

「まかせて例え天と地がひっくり返って星々がこぼれ落ちてきたとしても絶対に二人を説得してみる」

「いつもの饒舌な上に妙に詩的だな!」

イヴはフンガー、って感じで去っていった。

相変わらずニンジンが絡むと無駄に意気込むな。

その意気込みがちょっと怖いけど今は任せよう。

イヴの説得は別として、後からおれもちゃんと話さないといけないんだけど。

今はニンジンほしいイヴにやらせてやろう。

イヴがいなくなって、改めてアリスと向き直った。

「ダンジョン行こうか」

「本当!?」

「キミなんかイヴと似てるな。そんなにダンジョンがいいのか」

「うん! あたしね、ダンジョンで生まれたの」

「ダンジョンで生まれた?」

「あたしを妊娠したお母さんがダンジョンでお仕事してる間にぽろっと生まれたっていった。だからいつかダンジョンに行ってみたかったんだ」

「ダンジョンでぽろっと生まれたって……畑仕事の合間とかじゃあるまいし」

いや畑か?

シクロは別名農業都市、野菜ばっかりドロップしてるんだ。

ある意味畑みたいなもんか。

ニホニウムにやってきた。

ここにしたのは邪魔が入らないからだ。

ドロップが一切しないと判断されたこのダンジョンはマーガレットたちの様な「空気」狙いの人しか来ない。

普段は完全に無人だ。

入り口のナウボードの前で一旦止まった。

「これに触ってみて」

「わかった」

アリスは言われた通りに操作した。ステータスが現われる。

―――1/2―――

レベル:1/2

HP F

MP E

力 F

体力 F

知性 E

精神 E

速さ F

器用 F

運 D

―――――――――

―――2/2―――

植物 F

動物 F

鉱物 F

魔法 F

特質 E

―――――――――

「これがアリスの今のステータスか」

「みたいだね、あたしもみるの二回目なんだ」

「そうなのか?」

「うん、村にこういうのなくてさ、シクロに来てからはじめて使ったんだ」

そう話すアリスのステータスをじっくり見た。

正直にいえば、ステータスは「絶望」の一言だ。

レベルは上限が2、能力もほとんどEかFだ。

ドロップも一つだけEがあっていわゆる「Fファイナル」じゃないけど、植物がFだからシクロでは意味がない。

いろんな人に仲間に入れてと頼むけど断られ続けた理由がよく分かる。

おれは色々考えた。

今までにしった事で出来る事。

レベルを一つあげて、ハグレモノの魔法の実を一個食わせて魔法を二つ覚えさせて、その上で装備や薬を使ってドロップブースト。

こんなところか。

それくらいすればそれなりにダンジョンで戦えるようになるはずだ。

「どうしたの?」

「いや、プランを練ってただけだ。とりあえず中に入ろう。レベル上げだ」

「うん!」

ニホニウム地下一階は今日も無人だった。

マーガレットたちが空気生産でいるのかなと思ったけどそれもいなかった。

「うわー……」

「どうした」

「すごいね、ダンジョンってすごいね」

「すごい?」

「うん! なんかすっごく落ち着く」

「こんなところが落ち着くのか……」

おれにはちょっとない感覚だった。

ダンジョンの中はいろんなタイプがある。

ニホニウムはぱっと見鍾乳洞の様な、地面からも天井からも岩柱だらけの洞窟的な場所だ。

ここが落ち着くって感じが今までなかった。

「それにこの空気、すっごく懐かしい」

「……ダンジョンで生まれたからかも知れないな」

「そっか! やっぱりダンジョンに来てよかった……」

アリスはハッとして、その後感慨深げにつぶやいた。

「さて、それじゃモンスターを倒しに行こう」

「じゃあこっちね」

アリスがいきなり、迷うことなくなく身を翻してあるきだした。

「え?」

「え? こっちだめ?」

「いやだめって事はないけど、なんでそっち」

「だってこっちにモンスターいっぱいいるよね」

ニホニウム地下一階はよく知ってる、何度も何度も通って、モンスターが生まれる場所、奇襲をしかけてくる場所、ほとんど全部を覚えている。

生まれるタイミングまで覚えて、超高効率周回が出来る場所の一つだ。

アリスがいった こっち(、、、) は、この階で一番スケルトンが固まっているところだ。

もちろんここからは見えない、気配も感じられない。

でも、アリスはあたり前のように言った。

「来た事あるのか?」

「ううん。あれ? じゃあなんであたし分かるんだろ」

アリスが今更ながらに困惑した。

「わかる? 知ってるんじゃないのか?」

「うん。なんかこっちにいっぱいいるって分かる」

「ダンジョンで生まれたからなのか?」

「そうなのかな!」

アリスは深く悩むことなく、あっけらかんと笑いながらいった。

「……モンスターがいない場所とか分かるか」

「わかるけど……なんで?」

ありのまま今起きたことを言おう。

あれから二十分、アリスの先導で歩いてきたが、未だに一体もスケルトンと出会ってない。

アリスに「モンスターのいない方向に進んで」といって、その通りにしたら全然出会わなかった。

「ねえ、なんでこんなことするの? モンスターと戦わないの?」

首をひねるアリス。

彼女はまだ、自分がどれだけすごい事をしたのか分かっていない。

冒険者がほとんど来なくて、モンスターがうじゃうじゃいるダンジョンで二十分歩いてエンカウントしないのはかなりとんでもない事だ。

ダンジョンをほとんど覚えてるおれでもここまでよけることは不可能だ。

生まれるポイントとか知ってても、モンスターは動くから、まったく同じポイントにいることはない。

歩いてるとなんだかんだでエンカウントしてしまうのだ。

「すごいな」

「えっ、なにが?」

「天然なのが恐ろしい」

「???」

アリスは盛大に首をかしげて、頭の上に「?」をいくつも浮かべた。

「すごーい! なにそれなにそれ! 痛くないの? すごーい!」

戻ってきたおれにアリスは「すごーい」を連呼した。

おれは今、十体のスケルトンに囲まれてる。

スケルトンはおれを攻撃している。

HPと体力がSを利用した、前にもやったヤツだ。

攻撃するモンスターを倒さないで、まとめて引き連れてくるやり方。

「アリスはもうちょっと離れてて」

「うん!」

言われた通り離れた彼女を確認してから、弾を銃に込めた。

強化弾が五発と、拘束弾が一発。

それを足元に向かってうった。

弾が光ったあと、十体のスケルトンが光の縄に縛られた。

悠然とスケルトンたちから離れるおれ。

どれくらいになるか分からないけど、強化弾五発分で強めた拘束弾だ、多分結構長い時間拘束できる。

拘束時間が実際どれくらいになるのか、今度ちゃんとテストしてみよう。

今はまずアリスだ。

「こいつらを倒してみて。多分だけどこれでレベル2になるはずだ」

「わかった! でもどうしよう……モンスターと戦うのはじめて」

「そうだな。そこの岩を使って叩いたら?」

「これね!」

アリスは言われたとおり、洞窟の中に落ちてるバスケットボール大の岩を持ち上げた。

それなりに大きい岩で、すごく重たい様子。

それをもって、「よい……しょ」ってかけ声で拘束されたスケルトンの一体を叩いた。

完全に動けないスケルトンは岩で叩き折られて、骨が折れて砕けた。

「やった!」

「他のもその調子で」

「うん!」

アリスはスケルトンを倒して行った。

岩が重くてもたもたしたが、その間拘束弾が途切れることなく、五分くらい掛けて十体を倒した。

「あっ」

「レベルアップしたか」

「うん!」

「じゃあ外に行って確認しよう」

「うん!!」

大喜びのアリスを連れてダンジョンを出て、ナウボードで能力をチェック。

―――1/2―――

レベル:2/2

HP F

MP D

力 F

体力 F

知性 E

精神 E

速さ F

器用 F

運 D

―――――――――

―――2/2―――

植物 F

動物 F

鉱物 F

魔法 F

特質 E

―――――――――

記憶と照合してみる、MPが一つ上がっただけで、他は変わってないな。

これでレベルカンストなのは切ない感じがするが、MPが上がったし、予定通り魔法の実を食べさせるか。

いやむしろこれだけしか上がらないのなら、レベルが1に戻るのを覚悟で魔法の実をドカ食いさせるか?

レベルが1に戻ってMPもDからEに下がるだけで、その分魔法を大量に覚える。

ありなのかもしれないな。

「まあ、それはゆっくり考えるか」

「ねえねえ、中に戻っていい?」

「なんか落としたのか?」

「そうじゃないけど、さっきホネホネに早く戻ってきてっていわれたんだ」

「言われた? スケルトンに?」

「うん」

「おれは何も聞こえなかったけど」

「でも言われたの」

「ふむ」

よく分からないけど、何かがあるのかな。

ダンジョンを懐かしいっていって、モンスターのいる場所がわかるアリス。

声が聞こえたっていう話、なにかあるんだろうか。

「よし、戻ろうか」

「うん!」

アリスは満面の笑顔でさきにダンジョンに飛び込んだ。

おいかけるおれ、地下一階にはいってアリスの後ろについていく。

スケルトンとエンカウントした。

とりあえず拘束弾を撃ち込んで止めた。

「どうするんだ?」

「倒してって言ってる」

マゾかな? なんて冗談が頭をよぎった。

一方でアリスはスケルトンに近づいていき、今度は細長い鍾乳石を一本おってスケルトンにたたきつけた。

岩ほどの攻撃力がなくて、何回か叩いてようやくスケルトンを倒した。

ばらばらになった骨はいつもの様に消える――と思ったら違った。

骨は一箇所に集まり、光って更に凝縮していった。

「な、なんだ?」

光が収まったあと、そこに見た事のないものが現われた。

とても小さくて、可愛いスケルトン。

まるでガチャポンに入るおもちゃくらいの大きさで、デフォルメされた様な見た目だ。

それが動いてる、カタカタと骨をゆらして音を立てながら動いてる。

ぶっちゃけ……すごく可愛い。

「うん、これからよろしくね」

アリスはしゃがんで、SDスケルトンを手のひらに載せてまるで会話するようにいった。

「これからよろしくって?」

「この子一緒に戦ってくれるって」

「……へ?」

まったく予想してなかった事態に、おれは思わず言葉を失ったのだった。