軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

62.二重の報酬

借りたばかりの、魔力嵐を凌げる三階建の新居。

その、二階のリビング。

ニホニウムから戻ってきたら、ちょうどエミリーとセレストが朝ご飯を食べてるところに出くわした。

「ただいま。二人っきりなのか?」

「イヴは本当にテルルに行ったわ。それに言付けを預かってるわよ」

「はいです。戻ってきたヨーダさんがスライムの涙をどうするのか聞いて来るけど、ニンジンと関係ないから好きにしていいって言ってたです」

「ぶれないな」

ここまで来ると感心する。

「リョータさんはなにか収穫があったみたいね」

「まあな」

察しのいいセレストと、それを聞いてわくわく顔のエミリーの二人に説明する。

スライムの涙をもったままニホニウムで一晩過ごし、寝るだけで37体のゾンビを反射で倒せてその分のドロップを手に入れた事を。

「すごいわ――でも、微妙?」

「ああ、微妙だ。すごいのは間違いなくすごい、何もしなくても倒せてドロップ品が手に入るんだけど、効率が微妙すぎる」

「そもそもそれはヨーダさんにしか無理なのです」

「そうね、モンスターの群れの中で一晩寝てても翌朝ケロッとしてるなんて……リョータさんだけが出来る芸当ね」

セレストはそう言い。

「そのヨーダさんでも微妙なのです、ここは素直に納品しちゃう方がいいかもです」

「おれもそう思った。面白いけど必須じゃない。こいつは換金して、また手に入るなら次はとっておく、で行こうと思う」

そういって二人に意見を聞く。

エミリーもセレストも異議無しとばかりに頷いた。ここにいないイヴも、ニンジンとまったく関係ない話だから問題ないだろう。

「じゃあご飯食べたらエルザのところに行こう」

どうやら買い取り屋の従業員も業績とかそういうのがあるらしい、せっかくだからこのスライムの涙は顔なじみの彼女の業績にしてやろうと思った。

ふと、セレストが考え込んでるのに気づいた。

「どうしたんだセレスト」

「いえ、ふと思ったのだけど」

「うん?」

「レアモンスターのハグレモノは何がドロップするのかしら?」

「それは気になるな、うーん、困る。何をドロップするにしても元のものから変わっちゃうんだ。このスライムの涙で確かめる訳にはいかない」

「それなら大丈夫なのです」

エミリーは笑顔でいって、一つの指輪を取り出した。

「それは……そうかスライムブロスの!」

「はいです。テルル地下一階、スライムブロスのドロップなのです」

朝ご飯を食べたあと、シクロの郊外。

人気のないところにやってきて、まわりに人の気配がない事を確認する。

スライムブロスの指輪を地面に置き、エミリーとセレストの二人と一緒に距離をとる。

「わくわくするです」

「そうね、何が出るのかしら」

「きっとまたすごいものがでるです! ヨーダさんのドロップSは世界最強なのです」

おれは微苦笑した、そんなに持ち上げられるとちょっと照れる。

照れ隠しに銃弾を込めて戦闘準備をする。

ハグレモノはスライムブロス、前に倒した時の事を思いだした。

あの時でもかなり弱く、通常弾一撃で撃ち抜いてた。

今回も問題なく倒せるだろうが、念には念をいれて片方に拘束弾とか追尾弾とか、特殊弾を一通り準備した。

しばらくして指輪からハグレモノに孵って、スライムブロスになった。

それとほぼ同時に通常弾がスライムブロスを貫通した。

孵る瞬間にトリガーを引いて、完全に孵ったところで撃ち抜いた。

そいつは消えて、ポン、とアイテムがドロップされた。

近づいて、それを拾う。

脳内に声が聞こえた。

「ドロップ2倍――と攻撃した時に時々HPMP回復効果か」

「いいものなのです!」

「もとの効果の上に別効果がついたのね」

「この攻撃した時に時々回復効果ってのはあるのか?」

エミリーとセレストは少し考えて、答えた。

「聞いたことないです」

「ドロップ2倍は存在するけど、そっちはないわね」

「なるほど」

「さすがリョータさん、スライムの涙も新しくなにがつくか気になるわね」

「ああ、でもだめだ」

セレストの言葉に苦笑いして答えた。

なぜなら、ドロップされた指輪のデザインはまったく違うものになっていた。

リングの形も、ついてる石も。

素人がみても一目でわかる位の別物だ。

「スライムの涙でやったら納品できなくなる」

「そうね」

セレストも苦笑いして、残念そうな顔をした。

「大丈夫なのです」

「え?」

「確かめることは出来ないです、でも手に入れる事はできるです」

「どうやって?」

エミリーはにっこり笑いながら、ポーチ――スライムスルタンのハグレモノからドロップしたポーチを取り出して、おれ達に見せた。

「これはテルル地下七階のレアモンスター!」

買い取り屋。

今日も賑やかに様々な冒険者がドロップ品を持ち込んで賑わっていたが、エルザの大声が響き渡って、静まりかえってこっちに注目してきた。

苦笑いするおれと、エミリーとセレストの三人。

「地下七階だと?」

「ほら例のガッツの」

「ああ、確かアレドロップ率が低くて毎年最後ら辺まで引っ張るんだっけ」

「けっ、運のいいヤツめ」

「あれって普段からドロップするけど、効果のせいでそれを使って自滅する冒険者が続出してその度にロストするから他のレアより集まりにくいんだよな」

冒険者たちの声が聞こえてくる。

地下七階のものなのに集まらない理由が何となく分かった。

一方で、注目を集めてしまった事に気づいたエルザは赤面して慌てて謝罪した。

「あっ、ごめんなさい」

「気にしなくていいよ。それよりもこれ、まだ買い取ってもらえるんだよな」

「はい! ありがとうございます! サトウさんのおかげでうちの店の信用とランクがまた上がります」

「収穫祭のアイテムに出すとそうなるんだっけ?」

「はい! それもレアなものほど。だから本当にサトウさんには感謝してます!」

「役に立ててよかったよ」

「それと、サトウさんは収穫祭には出ますか?」

「ああ、出させてもらうよ」

おれは懐のポーチの存在を意識しつつ答えた。

店の名誉とともに、冒険者にも名誉が与えられる。

収穫祭では祭りの最中に、闘技場の中で展示したものをハグレモノ化させる。

作物とモンスター、両方を展示するのだ。

そのハグレモノを倒すのは冒険者。特にレアモンスターのドロップ品は出展に協力した冒険者がやることが通例だ。

元々はモンスターとドロップ品の展示と、その倒し方を冒険者の間で共有する事から始まった祭りだ。

シクロの街が大きくなって行くにつれ街も大きくなって人も増えた。

いまでは収穫祭でレアモンスターを倒すデモンストレーションも、冒険者にとって名誉ある行為の一つだ。

何しろ「このモンスターを倒す事ができる」とアピールするわけだから、力を誇示するということになる。

さらにそのアイテムをピンポイントでほしい人からその後依頼も来る可能性があるという、いいことづくめだ。

そこにおれは参加すると答えた。

人前でハグレモノを倒すのはちょっと前までは避けてたが、懐にあるポーチ、ドロップ品を直接取り込んでドロップしないように見せるアイテムのおかげで心配なくなった。

「じゃあお願いします」

「任せて」

「では、こちらが報酬になります」

エルザは札束をテーブルの上に差し出した。

わかりやすい、非常にわかりやすい札束。

それが――3つ積み上げられている。

多分元から高値のドロップが、お祭り価格で更に高くなっていた。

スライムの涙のハグレモノをドロップを確定しただけではなく、300万ピロの報酬も手に入れた。

おれは振り向き、エミリーとセレストとハイタッチをかわしたのだった。