軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

600.目的と手段

「と、言う訳なんだ」

エルザとイーナの二人が帰って来ると、俺は彼女達を捕まえて話のいきさつを説明した。

エルザは真剣な顔で、イーナはいつもの流し目でどこか 誘っている(、、、、、) ような顔で俺の話を聞き入っていた。

「なるほど、それで私達なんですね」

「ああ、現場の冒険者から色々なにか聞いてるんじゃないかって思って」

「はい、色々聞いてます――けど、どうなんだろうイーナ」

「そうねえ、大半がリョータさんの耳に入れるのもどうか、って与太話だからね」

エルザとイーナは向き合って、軽く苦笑いしながら言った。

「与太話?」

「はい」

「それでもいいから、とりあえず聞かせてくれないか」

「そうですか? えっと……じゃあ」

「あれなんかどう? 歩いただけで、ってやつ」

「ああ」

エルザはポン、と手を叩いた。

俺はちょっと 引いた(、、、) 。

なんか、予想以上の「与太話」が出てくる気配だ。

「こんなお客さんがいるんです。ダンジョンに入って歩いているだけで、その分の何かがドロップしてくれないかな、って言う人」

「ええっ! 歩いただけでドロップ? 歩いたらモンスターが勝手に死んでくれるとかじゃなくて?」

「はい、歩いただけでドロップ、です」

「それは予想の上をいっちゃったなあ……」

俺はますます苦笑いした。

「まあでも、それ本気じゃないだろうし」

「本気ですよ」

「うん、あの人は本気。他にも息するだけでドロップとか、寝るだけでドロップとか、出席するだけでドロップとか言ってた。出席ってなんだよ! って思ったね」

「そんな人がいるのか」

そういうのと付き合う二人も、商売ながら大変だな。

「ああでも、出席するだけで、ってのはいいかもしれないな」

「ええっ! 本気なのリョータさん」

「ログインボーナス――って知らないか。例えばダンジョンに毎日一回、入るだけで何かが勝手にドロップしてくれるの。そうすればちょっとやる気なくても、とりあえずそれだけもらいに行くかあ――って人もでてくるから」

「あっ……ねえイーナ」

「そうね、それいいかもしれない」

「あはは、商売に使えたでしょ」

俺がいうと、エルザとイーナは驚いた。

「今ので分かったんですか? 何をするかって」

「まあね」

元々ログインボーナスは「商売」のための手法だからな。

「そのやり方は結構効果的だからオススメだよ。まあ、何をあげるか、っていうバランスは難しいけど――」

そこまでいって、俺はエルザとイーナを見て、頷いた。

「でもまあ、二人なら大丈夫だろ」

「はぅ……」

「まったく、さらりとそういうことを口にするんだから」

エルザは微かに顔を染めて、イーナは呆れ笑いした。

まあでも、ログインボーナスっていうのはありかも知れない。

「そうか、そういうのでいくんなら、大当たりもいけるか」

「そうですね、完全に運で、今日はあなた大当たりの日――と言うのがあれば、ダンジョンへ来る原動力にもなりますしね」

「普段稼げてない人がいきなり稼げば、その分のお金を市場にばらまいてくれるしね」

イーナがそう言って、ニヤリ、と小悪魔な笑みを浮かべた。

冒険者は元々、江戸っ子みたいな気質で、宵越しの銭は持たぬ! って人が多い。

それは低ランク――いわゆる「稼げてない」冒険者であればあるほどその傾向は強い。

そういう冒険者はなにかで大金を手にすれば、パッと使うのがほとんどだ。

経済をよくするには、金をどんどん回さなきゃいけない――ということをエルザとイーナはよく分かっているみたいだ。

「他には何かない? 与太話じゃないの」

「そうですね……あっ、受注制、なら楽なのにな、って言う人がいました」

「ああ、いたね」

「受注制?」

「あのね、冒険者は誰かの依頼を受けて、ダンジョンにいって獲ってくるってことがあるの」

「あるね。俺も前イーナに頼まれてスイカ獲ってきたっけ」

「うん、そうね」

頷くイーナ、何故かちょっと顔が赤くなった。

「冒険者はそれを受けてダンジョンに行くんだけど、ダンジョンでもダンジョンから受けて、そのモンスターだけが出てくると楽なのに、っていう人もいるのよ」

「ああ……クエスト受注制か」

俺はなんとなく、大型モンスターを倒して装備を作るゲームのことを思い出した。あれなんか正にそうで、受注した特定のモンスターしか出ない様になってる。

まあ……乱入ってのもあるけど、それはそれだ。

「うん、それはいいかもしれないな。サルファを更に冒険者にメリットがあるようにした感じか」

「サルファ……そうかもしれませんね」

「でもリョータさん、そんな事ができるの? 今の話だと、普通のダンジョンじゃなくて、かなり違うシステムになっちゃうと思うけど」

「うーん……多分、できる」

俺は少し考えて、頷いた。

ダンジョンの精霊の特性を考えると、話は「目的」と「手段」にわけられると思う。

ニホニウムがダンジョンを一新して俺にさんざん意地悪してきたように、「目的」のための「手段」はかなり融通が利くみたいだ。

「……うん、間違いなくできる」

「はぁ……」

「すごいわね、いつもながら」

エルザとイーナ、二人は俺の「確信」に感嘆していた。