軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

597.島○作

翌日、俺は朝からサトニウム(仮)にやってきた。

俺一人じゃなく、さくらも一緒だ。

古いアパートの中にある入り口から入って、ロビーに降り立った。

「ここだけ世界観ちがうなあ」

「ちがうよな」

さくらの率直な感想に、俺は苦笑いしつつ同意した。

異世界でファンタジーの中、ここだけがどこぞのオフィスビルの一階ロビーって感じだ。

「おとついまで内臓の中にいたのが嘘みたいだ」

「あっちはザ・ファンタジーだったからな」

「しかもラスダン仕様」

「はは、そうだな」

俺は笑いながら、さくらを連れ奥のエレベータに向かった。

大企業のオフィスビルのように、入り口から入った真っ正面の所に、エレベータが四基並んでいる。

そのうちの一つに「↑」ボタンを押して、エレベータが来るのを待った。

「今にして思えば」

「うん?」

「このエレベータも、俺の願望なのかもしれないな」

「どゆこと?」

「こっちの世界ではさ、大半の冒険者が固定の階数を延々と周回するだろ?」

「だね」

「なのに、通うときは深い階層でも一階ずつ降りてかなきゃならない、戻るときも大変だ」

「あー、そっか。うちは転送部屋あるからいいんだけど、普通は大変だもんね」

「そう。それもあるから、ダンジョンは『エレベータあり』のこんな形になったんじゃないのかな――って今は思うよ」

「なるほどねー」

話しているうちにエレベータが来て、俺はさくらと一緒に乗り込んだ。

適当な階のボタンを押して、閉じるボタンを押す。

扉が閉まって、エレベータが動き出して――指定の階に俺達を運んだ。

エレベータから降りた先のホールには、階数を示す数字のプレートが掲げられていた。

「一瞬で来れたね」

「ああ」

「これはすっごい好評になるんだろうね。あたしでも分かるもん、他のダンジョンで目当ての階層に行くまでに苦労してるの見てるから」

「とりあえず目玉その一、だな」

「モンスターはどうなるの?」

「うん――」

俺は軽く目を閉じて、イメージしてみた。

次の瞬間――

「おおっ」

とさくらが声を上げたから、目を開けた。

俺達の前に一人の女が立っていた。

すらりとしたモデルなみの体型に、ややキツそうだが怜悧な美貌。

タイトなスーツで身を包んでいるそれは――。

「社長秘書?」

「ああ、社長秘書」

「こういうのが好きなのおじさん?」

「別に好きって訳じゃないけど、イメージしたらこういうのがパッと出てきた。あとはこれ」

ついでに、事務のお局様も呼び出してみた。

同じ階層に二種類以上のモンスターが同時に存在することは無いこともない、その階層のモンスター以外ドロップしないというだけだ。

「おばちゃん?」

「お局様」

「こういうのが好きなの?」

「……社長秘書の方が好きです、はい」

これ(、、) だと勘違いされるよりは、まだ社長秘書が好みだって思われた方が全然いい。

「あはは冗談冗談。他にはなにかある?」

「それが……」

俺は苦笑いした。

「サラリーマン時代の記憶が曖昧なんだよな。つらかったエピソードは三日三晩でも語れるけど、そこにいた人、はあまり思い出せないんだよ」

「会社にも受付嬢とかいない? ギルドの受付嬢の方がポイント高いけど」

なんのポイントだか――と、またちょっと苦笑いして。

「その会社の人間にとってあまり関係のない存在だからな、受付嬢」

「へえ……あと清掃のおばちゃん?」

「ああ……たまにトイレで遭遇するかな。うーんでも、あまり記憶に出てこない」

「こんな感じ?」

さくらはスケッチブックを開いて、さささ、とペンを走らせた。

ほんの一瞬で、受付嬢とか清掃のおばちゃんとかを書いてジェネシスで召喚した。

「そうだそうだ、こんな感じだった」

さくらの召喚に記憶を触発されて、俺はそれと同じ見た目のモンスターを作り、召喚した。

「これなんかどう?」

さくらはそういって、小太りの中年男を描いて召喚した。

仕立てのよさそうなスーツを着て、ニコニコしてて親しみやすい感じだ。

「これは?」

「グルメな常務」

「なんじゃそれ」

「わかんない?」

「わからん」

「じゃあこれは?」

そういって、今度は結構なイケメンサラリーマンを描いた。

「これは?」

「島○作」

「なんで!?」

「絵で、サラリーマンっていったらこの人じゃん?」

「いやそうかもしれないけど!」

「むしろエミリーさんよりも島○作の方がダンジョンマスターにふさわしいんじゃない?」

「著作権は気にしようね!」

「あたし同人しかやってないから」

「そっちはなおさら気にしなきゃいけないんだけどね!」

連続ツッコミでちょっと疲れた。

でも、おかげで色々記憶がよみがえった。

島○作はさすがに使えないけど、レトロゲーにありがちな、平社員、主任、係長、課長――と、役職が上がって行くにつれて強くなっていくモンスター、というシステムは使えるかもしれない。

俺はそう思って、いくつかのモンスターを召喚した。

「おー、課長島○作と部長島○作と常務島○作?」

「島○作から離れろ!」

「え? だって顔一緒じゃん、あたしのと」

「……げっ」

さくらの召喚に引っ張られて、ついつい顔を同じに作ってしまった。

慌てて変えて――とりあえず「へのへのもへじ」にする。

「とりあえずこんな感じかな、似たような階層で、上に行けば行くほど役職があがって強くなる」

「一番上は社長のバーゲンセールかな」

「そうなるな」

それもまたレトロゲーにありがちなヤツ。

ダンジョン作ってて、ちょっと楽しかった。