軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

596.納品

次の日、俺はシクロダンジョン協会に向かった。

新・ニホニウムの攻略はあれでひとまず終わった。

攻略はセルから依頼を受けていたから、その報告をしなきゃいけない。

報告をして、正式にダンジョンに冒険者が入れるようにする。

それはニホニウムが望んでいる事だから、まずはそれから解決する事にした。

ダンジョン協会に入ると、顔見知りの受付嬢が会長室に案内した。

会長室の中は無人だった。

セルは「本業」がある。

常にこのシクロダンジョン協会の会長室に常駐している訳ではない。

応接間じゃなくて、主不在の会長室で待たされるのも本来おかしいことだけど、何回も経験してきたことだからすっかり慣れてしまった。

俺は出されたお茶をすすって待っていると、程なくしてセルが現われた。

「おおっ! ようこそいらっしゃってくれたサトウ様!」

会長室に現われたセルは、いつになく興奮している様子だ。

興奮したまま俺の前にやってきて、向かい合ってソファーに座った。

近くで見ると余計に分かる、セルの目は思いきり輝いていた。

「お、おう? どうした、なんかやけに興奮しているようだけど」

「サトウ様が精霊になられたと聞いて!」

「相変わらず耳が早いな! どこからだ」

「サトウ様の事なら余に知らぬことは存在しない」

「えええぇ……」

俺はちょっとひいた。

今までやってきたことを考えればこの程度の主張はどうってことはないが、それでもちょっと引いた。

「おっと、勘違いされては困る。余はあくまで『公』のサトウ様をつぶさに見つめているだけ。『私』の領域へは一ミリたりとも踏み込んではいない」

「お、おう?」

「相手の『私』に立ち入るのは信者失格と言わざるをえない」

「とうとう信者って言いきったよ!?」

俺は声が裏返るほどの勢いで突っ込んだ。

今までもフィギュアサイズの銅像を造ったりするなど、やってる事はまあ信者そのものだったんだけど、ここまで強く主張するのは初めてかも知れない。

「……そういえば、今回もなんか銅像作ってるのか?」

「おお! ようやくサトウ様も!」

セルは大喜びで、懐から次々と銅像を取り出した。

次々。

次々。

次々次々次々次々次々次々次々――

「どんだけつくってるの!? というかいくつ入るの!?その懐!」

またまた、声を裏返るほどのツッコミをするはめになった。

セルが懐から取り出したフィギュアサイズの銅像は、あれよあれよと二十を超えた。

「うむ、これで半分くらいだが」

「まだ半分もはいってるのかよ!?」

突っ込んだ後、俺は銅像を見た。

よく見たら、俺のだけじゃなかった。

中には俺が事務のお局様を しばいてる(、、、、、) シーンのセットもあった。

「なんでこんなの知ってるの?」

「信心が満ち足りていれば、いかようにもなろう」

「いやふつうはならないから」

俺でさえ初めて飛ばされたダンジョンでの出来事だぞ。

……まあ、セルの これ(、、) は今に始まった事じゃないし、深く考えない方がいいか。

俺は一つ深呼吸して、仕切り直した。

「新しいニホニウムの事で報告に来たんだが」

「うむ」

すると、セルも表情を切り替えた。

さっきまでの浮かれた感じが微塵もなく、キリッとした有能な雰囲気を纏いだした。

やりやすくなったので、俺はニホニウムのダンジョンの事を報告した。

前もって作っておいた書類――攻略本形式みたいになったモノをセルに渡して、一階から順に説明していった。

頷きながら、セルは真剣な顔で聞いていた。

「というわけで、浅い階層はところどころ意地悪だが、熟練の冒険者――☆2くらいからなら問題なく通えるはずだ」

「問題は最後の……えっと、レイド戦、か」

俺とさくらが持ち込んだ言葉、どうやらこのセカイにはなじみのない言葉だったようで、セルは少しつっかえながらそれを口にした。

「そうだ」

「そこは免許制にした方がよいかもしれんな」

「いや、そこまでする必要はない。どのみち数が足りなかったり、他の仲間達と合わせたりすることができなきゃどうにもならないんだ。情報だけ公開すればそれで充分だろう」

「ふむ……わかった、サトウ様がそう言うのならそうしよう」

セルはすこし考えた後小さく頷いた。

そんなセルに書類と情報を全部引き渡して――納品。

これで新・ニホニウム攻略の依頼完了だ。

「改めて感謝する、サトウ様。報酬はすぐにでも振り込ませていただく」

「ああ」

俺は頷き、了承する。

ニホニウムの件、攻略はついでだから報酬はどうでもいいんだけど、みんなも手伝ってくれたんだから、ちゃんともらって、後で山分けをしよう。

「それで……サトウ様」

「ああ、分かってる。俺のダンジョンの事なんだろう」

ちょっと違う種類の、しかしやっぱり真剣な表情で切り出したセル。

ダンジョン協会会長としての顔を維持し続ける彼が言いたいことはすぐに分かった。

「はい、是非ともこの街に」

ダンジョンの数≒生産力は、そのまま街の経済力に繋がる。

ダンジョン協会の会長としては、新しいダンジョンがあれば、どうにか確保したいと思うのが当たり前だ。

「分かってる、俺自身まだあれがどうなるか分からないが、少なくとも俺の意志でよそに持っていかないことは約束する」

「ありがとうございます!」

セルは感激した表情で、俺に頭を下げてきた。