軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

595.頑張ったものが報われるように

「何それみたい!」

夕方、屋敷に帰ってきた俺は、サロンでさくらにつかまった。

ニホニウムからのサトニウム(仮)の話をすると、それまで普通に興味津々に聞いていたさくらが、ダンジョンマスター・エミリーの所に食いついてきた。

「そこに食いつくのか。普通はダンジョンとか、精霊になったかもとかって所だろうに」

「や、だっておじさん、それっぽいって話になってたし」

「……まあなあ」

俺は苦笑いした。

そもそも俺が精霊っぽいって言い出したの、よく考えたらさくらだったもんな。

そりゃ……その事で驚きはしないか。

「まっでも、ちょっとそこもおどろいたかな。そだ、ニホニウムさんは大丈夫?」

「ええ」

サロンにいるもう一人、ニホニウムは静かにうなずいた。

屋敷に帰ってきた俺は、バナジウムの協力で、転送部屋を使ってニホニウムを回収してきた。

俺がいなくなったことで泣きそうな顔をしてたニホニウムが飛びつき、抱きついてきた。

それをなだめて、屋敷につれ戻ってきた。

屋敷に戻ってくると、彼女は嘘のように落ち着き、済ました顔でお茶をすすっていた。

「そかそか。じゃあこれからもよろしくね」

「ええ、よろしく」

「それはそうとして、見せてよおじさん、ダンジョンマスター・エミリーさんを」

「わかったよ、ちょっと待って」

俺は苦笑いしつつそう言って、再びダンジョンマスター・エミリーを呼び出した。

「あら……」

「おー……本当にダンジョンマスターだ」

こっちの世界にやってきて半年以上たつさくら。

その間に何度もダンジョンマスターが現われて、討伐にかり出されたこともある。

それで積み上げた経験が、ダンジョンマスターの現われた時の空気をよく知るようになった。

「うわぁふっしぎー。見た目エミリーさんなのにダンジョンマスターじゃん」

「だろ? 俺も未だに微妙になれない」

「ねえねえ、やっぱり強いのこのエミリーさん」

「試して見る?」

「しよう!」

さくらはのりのりでそう言いながら、スケッチブックを取り出して、パラパラとめくって――ジェネシスを唱えた。

呼び出したのは、二メートルもあるマッチョマンだ。

「これでパワー勝負させてみようよ」

「よし、じゃあ――」

「うん、レディ……GO!」

さくらの号令とともに、マッチョマンが飛び出した。

そしてこっちも、俺が念じた直後、ダンジョンマスター・エミリーは目を怪しく光らせて、ハンマーを振るい突進していった。

激突。

ものすごい衝撃波が爆発的に広がって、サロン内のテーブルやソファーを吹っ飛ばした。

勝負は一撃で決まった。

真っ向からの力比べになった結果、マッチョマンは一撃でエミリーに のされた(、、、、) 。

脳天からハンマーを受けて、倒れるマッチョマンの上に立って、ハンマーでグリグリやってトドメを刺している。

「うわっ、えっげつなー」

「あー……このエミリーかぁ」

「え? エミリーさんこうなるの?」

「なるんだよ……Gをみると」

「あっ……」

語尾に「(察し)」ってつくような感じで、さくらは納得した。

同じ女子であるせいか、彼女はすぐにそれを理解したみたいだ。

「ってことは、あれをエミリーさんに見せちゃいけないんだね」

「まあ、見せる機会もないけどな。このエミリーハウス、そういうのが出る余地ないだろ。いつも温かくて明るくて、神殿のような清らかな波動放ってるし」

「Gがきらいだからこういう風になったのかも?」

「それはあるかもな」

俺達はその事で盛り上がりつつ、それぞれマッチョマンとダンジョンマスター・エミリーを回収して、衝撃波でばらばらになったサロンのテーブルとソファーを並べ直す。

黙々と並べ直す、その沈黙の期間が仕切り直しになって。

「それで?」

まったく違う空気で、さくらがきいてきた。

「それで、って?」

「おじさんは自分のダンジョンをどうするの? どういうダンジョンにするの?」

「ああ、そのことか」

俺は頷きながら、最後のソファーを元の位置に戻す。

手をパンパンと叩いて、ホコリを落としつつ。

「がんばった人がみんな報われる場所、かな」

「あはは、おじさんらしい」

聞く前から答えを予想していたであろうさくらは、朗らかな顔でわらった。

「ドロップステータスが低くてもとりあえずどうにかなるのと、後はそうだな、余計なギミックはない方がいいかもな」

「ギミック?」

「シクロで免許がいるような」

「ああ、地下五階から下の」

納得するさくらに、俺も頷いて応える。

「でも、ギミックはあってもいいんじゃない? ギミック分収穫を多くすればいいんだし」

「ふむ、なるほど」

「あとさ、クラスの男子がやってたソシャゲにさ、失敗したらスタミナが戻ってくるのあったのね」

「スタミナが?」

「そ、他のソシャゲだと、スタミナを使ったらそれまで、失敗してももどらないじゃん?」

「ああ」

「でもそのゲームは戻ってくるから、失敗を怖がらないでガンガンやれたんだよね男子」

「……なるほど」

それはいい考えだ。

スタミナが戻ってくる……この世界のダンジョンに置き換えたら何になるのかな。

「倒せなかったらHPMP回復、とかかな」

「できそう?」

「……できそう」

何となくだけど、そういうダンジョンは出来ると思う。

もちろん実際にはダンジョンにはいって作らないといけないが、多分、できると思う。

俺はさくらのアドバイスを受けながら、ダンジョンの構想を次々と固めていった。