軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

586.記憶ゲーム

ヤタガラスが、再び玉を取り込んだ。

辺りが一気に暗くなった。

灼熱の時でも脈動する内臓ダンジョンだったのが、周囲丸ごと暗闇に包まれた。

「こういうのか」

完全な暗闇かと言えば、そういうわけでもなかった。

背景は真っ暗で何も見えないが、自分の姿は見える、ヤタガラスの姿も見える。

背景だけが暗闇に包まれた、景色を描いてない初心者の絵みたいな感じで、長居するとそれだけで精神が不安定になってきそうな場所に変わった。

やがて、玉を取り込んだヤタガラスが小さなヤタガラスを産んだ。

産み出された子供のヤタガラスはフッと消えて、別の場所に現われた。

「……哺乳類かな」

自分でも無粋だとは思うものの、思わず突っ込んでしまった。

鳥類なら卵で産む物で、こんなに成体に近い状態で、サイズだけ違うのが生まれてくるのは哺乳類の特徴だ。

モンスターに鳥類も哺乳類もないんだろうが、それでも思わず突っ込んだ。

ヤタガラスは更に生み続けた。

産まれた小ガラスは瞬間移動で空間のあっちこっちに散らばった。

散らばっていて攻撃してこない小ガラス。

身構えつつも、攻撃をされないおかげで頭が回る余裕があった。

「勾玉だな」

もののゲームに必ず登場してくる三種の神器。

神剣と、鏡と、勾玉。

そのせいで、三種の神器の詳細とか元ネタとかは、ある種の「必修科目」のようなものだ。

だから、そこそこに知っている。

勾玉という物は、一説には月をかたどるものとも、母の胎内にいる赤子――嬰児の姿をかたどっているものとも言われている。

三本足のカラス。

太陽らしい物はもうでた、鏡らしき物もでた。

今のが、月であり勾玉でもあるヤツのパターンだな。

その攻略法を考える――が、情報が足りない。

今までのに比べてはっきりと足りない。

その理由は――攻撃してこないからな。

「これで12体になったな」

ポコポコと産み落とすヤタガラス、小ガラスは四周に散るだけで、まったく攻撃してこない。

それどころかその気配すらない。

「しかけてみるか」

俺は慎重に、また反射をされることを警戒して、防御態勢をとりつつ、通常弾で小ガラスの一体を撃った。

通常弾は小ガラスを撃ち抜く、小ガラスは小さな悲鳴を上げて、地面に墜落して動かなくなる。

「……これでいいのか?」

と思った、次の瞬間。

ガツン! と衝撃が来た。

目の前が真っ白になって、頭がハンマーにうちぬかれたかのようにくらくらする。

上下左右の感覚も一瞬消えてしまって、とっさに踏みとどまってなかったら地面に倒れる所だった。

目の前がまだチカチカしていながらも、俺は回避運動をとった。

とにかく躱す、無軌道に動いて何がきても簡単には当たらないようにする。

「――っ!」

すると驚いた。

小ガラスが、一羽残らず全部消えていることに。

「どういうことだ?」

チカチカするのが徐々に収まっていき、ヤタガラスを見る。

ヤタガラスは再び、小ガラスを産み始めた。

「……これなら?」

産んでいる途中に、今度はヤタガラス本体に通常弾を撃つ。

弾は当たる前にはじかれる――が。

「むっ」

またしても衝撃が来た、そして一羽だけ産まれた小ガラスが消えた。

「数が少ない分ダメージも低いのか?」

二回目のダメージの小ささをそう分析した。

今度は数歩退いて、ヤタガラスと距離を取って、様子をじっくり見る。

三度、産み始める。

ぽこっと産んで、産まれた小ガラスは瞬間移動で離れたところに移動した。

次々と産んで、次々と離れる。

やがて、さっきと同じ12羽で産むのがとまった。

「順番か?」

俺は一羽目の小ガラスを撃った。

撃ち抜かれた小ガラス、地面に墜落。

「……」

衝撃に身がまえるが、何もなかった。

二羽目、撃ち抜く。

打ち落とされて、墜落。

やはり何もない。

「……」

今度はわざと間違えることにした。

三羽目をすっ飛ばして四羽目を撃つ。

通常弾が当る直前で加速弾を自分に撃って加速する。

加速した世界の中で、小ガラスの着弾を待つ。

「――くっ!」

小ガラスが撃ち抜かれた瞬間、衝撃が全身を襲った。

加速していても同時に来る衝撃は、回避不能なタイプのカウンターダメージみたいだ。

くらくらするのを我慢して、回復弾を撃って回復。

そして、四回目の出産。

今度はちゃんと順番を覚えていき、十二羽が出そろったところで順に打っていく。

「あれ? 8番目はどれだ?」

途中で忘れてしまった。

最初の頃のも最後のも覚えてる、途中の記憶があやしくなった。

そんなところに、ヤタガラスの足が一本折れた!

エミリーとセレスト、どっちかが折ったのだ。

俺は少し焦った――たが。

ハッとして、追尾弾を撃った。

弾は弧の軌道を描いて、8羽目を撃ち抜いた。

カウンターは来なかった。

そして残りの小ガラスも撃ち抜いていき、小ガラスは全羽打ち落とされた。

二本目の足も折れた。

「順番か……追尾弾でいけるけど、最大12発はコストパフォーマンスが悪いな」

そうつぶやいていると、またまたタイムアップして、ヤタガラスの三本の足が復活した。

「次でいけるな」

全部のパターンを見た俺は、次の回での突破を確信した。