作品タイトル不明
583.ヤタカラス
ニホニウム地下十五階。
鬼が現われた。
「えっと、じゃあよろしく」
「はいです!」
「任せて」
応じるエミリーとセレスト。
二人はハンマーとバイコーンホーンを構えて、鬼に向かって行った。
無線操作に見えるバイコーンホーン爆撃で鬼を止めて、エミリーがトドメの一撃を放つ。
すると、鬼の二本角が一遍に折れた。
「え? ああ……タイミングを合わせたのか」
一瞬何が起きたのか驚いた俺だが、すぐに理解した。
「はいです」
「さっきので向こうのタイミングが分かったからね、合わせたのよ」
「すごいなあ」
俺は素直に感心した。
タイミングを合わせるというのは、実はかなり難しい事だ。
パチスロでいわゆる「目押し」という技術があるけど、これは出目をタイミングよく押して揃えて行くものだ。
エミリーとセレストの今のやつは、その目押しに匹敵するほどの物で、だからエミリーのトドメで一遍に角を二本折ったように見えた。
それほどの完璧なタイミングで倒せた仲間の二人に感心した。
いや、すごいのは向こうもだろう。
エミリー達があわせたと言うことは、向こうもさっきとまったく同じタイミングで倒してないとだめって事だ。
あるいは、向こうも合わせているのかもしれない。
「すごいな、みんなは」
「何を言っているの?」
「え?」
「一番すごいのはヨーダさんなのです」
「いやぁ」
「今のも、ヨーダさんなら軽々とできるのです」
「それは……まあ」
出来るか出来ないかって言われたら、多分出来ると思う。
だけど彼女達にそう言われるとなんだかちょっと恥ずかしい。
「えっと……あっ、ドロップした。階段もでた」
俺はドロップした蛇鱗の果物――さくらにスネークフルーツと言われた果物を拾った。
この辺り、日本語は素直だ。
スターフルーツとかスネークフルーツとか。
多分英語の名前をそのまま使っている。
まあ、わかりやすくていい。
「よし、じゃあおりよっか。がんばろうな」
「ええ。頑張るわ」
「ファイトなのです」
互いに励まし合って、俺達は現われた三つの階段をおりていった。
おそらくどこを降りても変わらないと思うのだが、俺は真ん中を、エミリーとセレストはそれぞれ右と左を降りていった。
降りた先、地下十六階。
そこはいつもの内臓ダンジョンだった。
そして現われたモンスターは――
「カラス? 三本足!!」
巨大で真っ黒なカラスが現われて、その特徴に驚いた。
三本足のカラス。
ここ数年サッカーブームで、神話とかそういうのに明るくない人でもテレビとかで見かけるようになった。
ヤタガラス。
三本足が特徴のカラスで、日本神話に深く関わっているものだ。
最近じゃグー○ル先生に聞くと、ヤタガラスの後ろに、予測でサッカーが来るようになっているのがちょっと面白い。
「さて、まずは時間稼ぎ――むむっ」
ヤタガラスの頭の上に三つの玉が浮かび上がった。
三つとも違う色で、それが頭の上をぐるぐる回っている。
やがて、ヤタガラスは玉の一つを吸収した。
オレンジ色の玉――元ネタを考えればおそらく太陽を象徴する玉。
それがなんなのか――すぐに分かった。
「あつっ!」
思わず声をあげてしまった。
太陽の玉を取り込んだ直後、まわりが火の海になった。
灼熱の炎は、直接じゃなくても体を灼いてくる。
そして、他の二つの玉も消えた。
しかし、変化はない。
「……頑張れ、エミリー、セレスト」
ここと同じように、環境が一変しているであろう仲間達に、心の中で声援を送った。