軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

58.じゃれるモンスター

「今の薬はどういうもの?」

「……そうだな、仲間だし教えるか」

イヴの質問に答えるために、近くのナウボードを操作して、ステータスを出した。

―――2/2―――

植物 S

動物 S

鉱物 S

魔法 S

特質 S

―――――――――

おれの隣にやってきたイヴはステータスをみて、小首を傾げてウサミミをたらし、おれを見あげてきた。

「……S?」

「こんな感じでおれのドロップは全部Sで、SはAの上だ。これのおかげで色々と普通ではあり得ないものがドロップで入手出来る」

「なるほど」

「……あっさり納得するんだな」

「わたしのニンジンより美味しかった、納得」

「そこでもニンジン基準かよ」

苦笑いしたが、イヴらしいと思った。

気を取り直して説明を再開する。

「あの薬とか、色々見せる事になるけどいろんなアイテムをもってる、それは全部ドロップSでモンスターからドロップさせたものだ」

「そっか」

「この事は仲間にしか喋ってないから、一応内緒な」

「わかった」

イヴはものすごく真剣な顔で頷いた。何がなんでも話さないぞ、といきこんでいる様に見える。

内緒にって頼んだのはおれだけど、この真剣さはなんだ?

その理由はすぐに分かった。

「絶対に誰にも言わない例えこの身がバラバラに引き裂かれて世界中のダンジョンにばらまかれようと」

「決意が重い! いやそこまで秘密にしなきゃって程じゃないんだけど」

「ニンジンのために!」

なんか合い言葉っぽく言われた。

そして納得した。イヴに「ニンジンのために」って言われると大抵の事はなっとくする。

……すごいな、そう思わせるイヴって。

そんなイヴは決意を語ったあと、改めてナウボードをじっと見つめた。

「どうした?」

「こっちの能力、HPSと体力B……SはAよりもすごい?」

「さっきもそう言ったはずだ」

「……」

イヴはもうしばらくナウボードを見つめてから、おもむろにおれの方を向いて、手を伸ばしてちょっぷしてきた。

ペチッて音がした。

「なんだ? いきなり。また『低レベルきらい』か?」

「……」

イヴは答えず、真横のダンジョンの壁にチョップした。

壁の一部が粉々になった。

割れた、でもなく、斬った、でも無い。

一部が粉々になったのだ。

そうした後、改めておれを見あげて。

「頑丈」

といった。

「おれにしたのそのチョップなの?」

「一秒に細かく百回チョップした」

「高周波カッターかよ! ってそんなの人にするな」

「でも頑丈」

「まあ……あんまり痛くなかったしな」

「体力もSだったら全然痛くなくなるかも」

「――っ!」

イヴの何気ない一言におれは衝撃を受けたのだった。

昼過ぎ、シクロの街中。

合流するために待っているエミリーとセレストのところにやってきた。

「お疲れ様ですヨーダさん」

「今日はどうするの? テルルの六階に潜る?」

「ごめん! 今日は別行動させてくれ!」

二人に拝むように手を合わせて、頭を下げた。

「え? 別行動って……それってどういう……」

「ちょっと用事ができたんだ」

「用事……それは急ぎなの? ダンジョンに潜ってからでも――」

「分かったです」

戸惑うセレストに対して、エミリーは実にあっさり受け入れてくれた。

「こっちは任せるのです」

「サンキューエミリー! セレストもごめん! そうだ! これは植物ドロップアップの薬、二人で使ってくれ」

赤いポーションをありったけ二人に渡して、おれは身を翻して駆け出した。

やりたいことと、それが成功したときの光景を思い浮かべながら街の人混みを縫って全力で走っていった。

亮太が立ち去ったあとのエミリーとセレスト。

セレストは困惑と消沈が半々という表情をしているが、エミリーは穏やかな微笑みを浮かべたまま亮太が人混みの中に消えて行くのを見送った。

「行ってしまったわ……よかったのエミリー、なにも聞かないでいかせてしまって」

「いつものヨーダさんです」

「え?」

「ヨーダさんが何か思いついてそれをする時っていつもあの顔をするです。応援したくなっちゃう顔なのです」

「それは……たしかに世界一すごく格好良かったけど……」

エミリーに言われて、セレストは頬を朱に染めて、恥じらった表情で亮太が消えて行った方角をみた。

「リョータさんのあの顔……やりたい事……よし!」

亮太の後を追って駆け出そうとするセレストだが、エミリーが彼女の腕を掴んで引き留めた。

「ヨーダさんの邪魔をしちゃダメなのです」

「でも、助けが必要かも知れないわ、だから」

「必要ならヨーダさんは言ってくるです。言われなかったからわたしたちはわたしたちでダンジョンに潜るですよ」

「離してエミリー、お願いあっちに行かせて」

「ダメなのですー」

「いーかーせーてー」

向こうに行きたくて、しまいにはだだっ子の様に懇願しだすセレストだったが。

エミリーは彼女の手を掴んで、ずるずるとダンジョンに引きずっていくのだった。

ニホニウム地下4階、いつも通り無人のダンジョン。

降りてすぐにエンカウントしたマミーの喉笛を掴んで突進、そのまま壁にたたきつけて喉を握りつぶす。

首がポロッととれて、マミーが倒された。

肉体が溶けて、包帯だけになった瞬間回復弾を撃ち込む。

包帯がまだギリギリ人型を保ってるうちに消した。

種がドロップされて、体力が1アップした。

次のモンスターを探す。

遠くにマミーを見つけて、貫通弾をうって、時間差で回復弾を撃った。

その間もダッシュして距離を詰める。

脳天を貫通されたマミーが倒れ、包帯が浄化されて、種がドロップした頃にちょうど到着して拾って体力アップ。

ニホニウムに潜ったおれはテンションがマックスだった、一刻も早く体力を上げたかった。

高いテンションのままマミーを見つけた片っ端から、最速の方法をその場で判断して倒して行く。

昼から入って、全力でダンジョンの中を暴れ回った結果体力はBからAに、そしてAからSに一気に上がった。

一旦外に出て、表にあるニホニウム唯一のナウボードで能力を確認した。

―――1/2―――

レベル:1/1

HP S

MP F

力 S

体力 S

知性 F

精神 F

速さ S

器用 F

運 F

―――――――――

レベルは相変わらず1のままだけど、体力はしっかりSまで上がっていた。

それを確認して、ダンジョンに戻った。

ニホニウム地下一階、スケルトンが出没する階層。

早速スケルトンが現われた。

いつもなら即倒すのだが、おれは何もしなかった。

手をあえてポケットに入れたまま棒立ちした。

スケルトンが骨をカクカクゆらしながら向かってきて、おれに攻撃してきた。

ぺちっ、って感触がした。

スケルトンの攻撃、まったく痛くないって訳じゃないが、幼稚園児に叩かれたくらいの痛さしか感じなかった。

そのまま更に棒立ち、うん、やっぱりいくら叩かれても痛くない。

おれは歩き出した、スケルトンはおれを追いかけて、攻撃しながらついてきた。

普通はドロップしないニホニウムは別の冒険者がいないから、すぐに別のスケルトンとエンカウント。

そのスケルトンと、最初のスケルトンが左右から攻撃してきた。

ペチペチ、ペチペチ。

やっぱり痛くない。

念の為にちょっとよけた。スケルトンの振り下ろした攻撃が地面をえぐった。

うん、結構重い攻撃だ。

でもペチペチ。

おれにはまったく効かない。

HPSと、体力S効果だ。

今のおれはゲームでいうと1の攻撃を食らい続けてる状態だろう。

スケルトンを倒さずつれてあるいた。

二体が三体になって、三体が四体になって、四体が――。

スケルトンが増え続けていき、しまいには全員おれに群がるように攻撃し続けてくる。

二十体になったあたりで密集しすぎて歩けなくなった。

それでもまったく痛くない、1ダメージの攻撃を延々と受け続けてる状態。

スケルトンたちにペチペチたこ殴りにされた状態で、おれはこの力をどういう形で活用出来るか、それをずっと考えたのだった。