作品タイトル不明
573.さくらの意地悪
サロンで待っていると、さくらがエミリー、それにアリスを連れて戻ってきた。
さくらの後ろにいるエミリーと目があって、彼女は恥ずかしそうに顔を赤くして背けてしまった。
つまりは そういうこと(、、、、、、) なんだろうと、俺はさてどうセクハラにならない範囲で話を聞こうかと思ったその時。
「ばっちり、ちゃんと確認してきたよリョータ」
さくらと同行したもう一人、アリスがハイテンションでこっちに駆け寄ってきて、得意げな顔でそう言った。
「ばっちり、なのか?」
「うん! ドロップ下がったけど、でもほら――」
そう言って、サロンのローテーブルに山ほどのブドウを積み上げるアリス。
「――全然関係なくドロップゲットしてきた」
「なるほど」
俺は素直に頷いた。
「すごいよねアリスちゃんは。ドロップがFになってるのに関係なくドロップさせるんだもん。裸んぼで」
「最後の情報いるかな!?」
ソファーから腰が浮きかけるほどの勢いでさくらに突っ込んだ。
「え? いるじゃん? 服を取り戻さなくても戦闘とドロップに影響しないって」
「うっ……」
それは……。
…………。
………………。
さくらが……正しい。
奪衣婆のギミックが服を奪うことである以上、奪われたままでいるとどうなるのかという情報はものすごく重要だ。
脊髄反射で突っ込んでしまったけど、これはよくなかった。
「突っ込んで悪かった、ごめん」
「裸に突っ込むなんて、おじさんえっちー」
「このネタには遠慮無く突っ込むぞ!!」
宣言通り遠慮無く突っ込んだ。
さくらの中身がただのおっさんなんじゃないかという疑惑が時々する、そういう言動が実に多い。
「あははははは」
「あはは、じゃないって」
「わ、私お茶を淹れてくるです!」
顔をめちゃくちゃ赤くさせたまま、サロンから逃げ出してしまったエミリー。
向こうでよほど恥ずかしい思いをしてきたんだろうな。
「お前のせいだぞ」
「えー、あたし何もしてないよ?」
「どうだか」
「エミリーさんの裸すっごい綺麗だったから瞬間スケッチしただけ」
「やってるじゃんってかそれ今すぐもやせ!」
「えー」
「えーじゃない」
「しょうがないなあ……あ、そうそう、チェックの結果なんだけどさ」
なんだか話を逸らされた気がするけど、この話題を続けても得する人はいないから、とりあえず話を聞くことにした。
「まずね、服奪われたままでも全然問題なかった。むしろ次のモンスターの時、開幕脱衣がないから時短になるよ」
「なるほど……周回を考えればそれは結構大きいな」
俺はあごを摘まんで考えた。
「ドロップステ減少のペースは? それとリセット」
さくらに、チェックしてきてくれと頼んだ事を聞いた。
「下がるのは確定じゃなくて、割合で一段階ずつ下がってた。そうそう、さがった瞬間からポーションの効果がなくなってた」
「ふむ」
さくらがいうポーションとは、金のハグレモノからドロップさせた、ドロップステを上昇させるアイテムのことだ。
紙幣からは各ステ+3、硬貨からは各ステ+1の効果がある。
それもそうなるのかをチェックしてもらってた。
「で、階層を跨いでもリセットなし、でも屋敷にもどってきたらリセットされてた」
「ってことは、ダンジョンをでたら、のパターンか」
「そう思う」
「ドロップを送り返したら?」
「魔法カートのあれだね。ダメだった」
「意地悪だな。地下十何階までいかせてから、ちょっと戦わせたらダンジョンでないといけないなんてな」
「でもアリスちゃんみたいなダンジョン産まれには良いところかもしれないよ」
「そうだな」
この世界での最重要な能力は「周回力」だ。
だから、ほとんどの冒険者は能力が尖っていて、通ってるダンジョンに合わせて最適化している。
ドロップ低下に関係なく、周回し続けられるダンジョン産まれは奪衣婆に最適化する適性を持ってる。
こういう階層も、情報が完全に解明されさえすれば、たくさんの冒険者の中から適応できるものがでてくるから、どれだけ尖ってて意地悪だろうがあまり問題はない。
「それともうひとつ」
「うん?」
さくらはにやりとした。
どういう事なんだろうとおもっていると、彼女は常に持ち歩いてるスケッチブックを開いて俺に見せた。
「それは……着物?」
「ニホニウムのものと同じ。これを召喚して着てたら脱がされなくなった」
更ににやりとするさくら。
それって……?