軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

564.ロマンチスト

プルンブムの所から、転送ゲートを使って、屋敷に戻ってきた。

「お帰りおじさん……あれ? なんかあったの?」

転送部屋を使おうとしていたさくらとばったり出くわす。

日中の、仕事する時間帯。

普通ならここで仲間と遭遇しても軽い挨拶だけでそれぞれダンジョンに散っていくのだが、さくらはそうせずに、俺の顔をのぞき込んできた。

「さ、さくら」

俺はちょっと戸惑った。

昨夜の事を思い出してしまったからだ。

一方、とうのさくらはまるで何もなかったかのように、平然として俺の顔をのぞき込んでいる。

「うん……なんかあったよね」

「な、なんかって?」

「のじゃロリになんか言われた?」

「いやロリじゃないから」

焦りを別の感情に上書きされた俺、微苦笑しつつ指摘する。

プルンブムは確かに、不老不死の長命種かつ語尾が「のじゃ」だけど、ロリじゃない。

「のじゃロリとロリババアって一緒じゃん?」

「一緒……なのか?」

俺はちょっと迷った。

頷いてしまうと、そっちの界隈の人に怒られそうな気がした。

「で、なんかあったの?」

「ああ……じつは」

俺はプルンブムとのやりとりをさくらに話した。

二人で転送部屋の前、珍しく立ち話だ。

「――って、言われてさ」

「ふむふむ」

「そうなのかもしれないな、って思っててね」

「そっか。いいとこついてるね、彼女」

「へ?」

「微妙に違うってこと」

「微妙に違うって、どこが?」

「彼女はこっちの世界のおじさんしか知らないってこと」

さくらはにやりと口角を器用に、片方だけ持ち上げて笑った。

「でも、あたしは元の世界のおじさんを知ってる」

「しらないだろ、さくらも」

「こっちの人たちが聞いてもピンとこないことをあたしはピンとくるからね。社畜だった、とかさ」

「ああ……」

それは確かにそうかもしれない。

元の世界でも、外国人からすればアンビリーバボーな、日本人の社畜。

その概念を、こっちの世界の人たちが完全に理解するのはちょっと難しい。

今までのみんなとの会話で、なんとなくそうなんだと、うすうす気づいていた。

「それをしらないから、結論がちょっとだけずれちゃったんだよ」

「じゃあ、さくらはどう思うんだ?」

「おじさんはロマンチストだよね」

「へ?」

いきなり何を――次の瞬間。

「努力は絶対に報われるのが良いんでしょ」

「むっ……」

それは、プルンブムの言葉よりも、クリティカルに俺の心の中に割り込んできた。

「おじさんの仲間達も、精霊達もさ、全員頑張ったけどおじさんと出会うまでは報われてなかった人たちじゃん? それをおじさんがなんとかしてあげた。そういう人たちばかりだもん」

「そう、だな」

ますます、苦虫をかみつぶした様な顔になるしかなかった。

プルンブムに「仲間が欲しいから」って言われたときは、そうかもしれないって思った。

だけど、さくらに「努力が報われるのがいい」って言われたときは、一瞬「そうじゃない!!!」って大声で反論しそうになった。

それは、核心を――痛いところを突かれたからなんだと自分でも分かった。

「そうだなぁ……精霊と出会って、身の上を聞いてから、俺はずっとなんとかしてあげたいって思ってた。たしかに、仲間が欲しいよりも、こっちの方がつよいな」

「でしょ」

さくらは得意げな顔をした。

「よくないかな、こういうの」

「なんで?」

さくらはけろっとした顔で聞き返してきた。

「いいじゃん、理想で。そりゃ元の世界で『いじめの根絶』とか言い出したらヘソで茶が蒸発するけどさ、こんな仕組みの世界で、努力が報われるってのは別にありありじゃん」

「そうか……」

そうだと、いいな。

いや、そうあり続けて、欲しいな。

「話戻すけどさ。ちょっとずれただけで、彼女の結論にはあたしも同意見だよ」

「結論?」

「だからおじさんはこの世界に呼ばれたってとこ」

「ああ……」

それはそうかもしれない。

「結局おじさんさ、こんなあからさまなチーレムなのに草食系――というか絶食系男子やってるのは、それが欲しい物じゃないからなんでしょ」

「そう、だな」

「こんなチーレム放っといて絶食系とかさ……YOUマジでサトニウムなっちゃいなYO」

おどけた言い方をするさくら。

サトニウム。

クレイマン達ユニークモンスターが住んでいる、ダンジョン型の村。

俺が建造させたもので、俺が名目上の主になってる、モンスターの巣窟。

そこを119番目のダンジョン、サトニウムって呼ぶネタが存在している。

「俺がサトニウムだったら、みんながそこのモンスターになっちゃうな」

軽口を軽口でかえした。

「いいね、エミリーさんがダンジョンマスター?」

「ダンジョンごと乗っ取られそうな気がする」

「最終階はレイドダンジョンとかにしちゃおうよ。4人パーティー二つで、ボスはおじさんとりょーちんを30秒以内に同時攻略」

「激しくムリゲー臭がするな」

「というかクソゲー?」

さくらと笑い合った。

この手のネタの話は、彼女ととしかできない。

プルンブムの話が一段落して、俺はさくらを見送ってから、自分も転送ゲートを使ってニホニウムにとんだ。

ニホニウム、地下10階。

真っ暗なダンジョンの中を、脳内マップ使って進んで、下の階に降りた。

初めて足を踏み入れる、ニホニウムダンジョン地下11階。

雪が降っていた。

真っ赤な真っ赤なダンジョンスノー。

赤い雪の中。

「ニホニウム!? ……いや」

ニホニウムの見た目をしたものが、一、二、三……たくさんいた。