作品タイトル不明
558.デートのお誘い
金のなる木の本店、応接用の貴賓室で、座ってエルザとイーナの二人と向き合う。
間にあるテーブルの上には、様々な果物が置かれている。
全部がニホニウム産で、まだ値がついていないものばかり。
それをエルザら金のなる木に依頼して、炭酸水の時と同じように市場調査をしてもらっていた。
「これが一番人気でした」
エルザが手に取って見せたのは、あの薄紅色をした、鈴の形をした果物だ。
さくらに聞いてみると「レンブ」という名前で、グァバにとても近しい関係にある果物だという。
ミラクルフルーツといい、彼女のさりげない博識さに俺は舌を巻いた。
「これが一番人気か」
「はい、食感もよくて、みずみずしさもあって、くどくない後味が人気を博しています」
「なるほど」
「あと、なんかデリケートに扱わないといけないのも高評価だったね」
「デリケートに?」
どういう事だ? って顔でイーナに聞く。
「こうするとね」
イーナは手に取ったレンブを、十センチくらいの高さからテーブルに落とした。
すぐにそれを拾い上げて、俺に見せる。
「ね、もう傷付いて、へこんじゃってるでしょ」
「ああ」
「このデリケートなのがね、高級感をそそるらしくて好評なのよ。割れ物のように扱わないといけないとなると、それだけで高級っぽいらしいのね」
「そういうものなのか」
「みたいよ」
「新しいニホニウムで、一から十階までのドロップ品で、これが一番人気でした。次がミラクルフルーツです」
「ミラクルフルーツが人気なのか」
「はい。特に酒場で、大笑いしながら食べるのが人気みたいです」
「ああ、なんとなく分かる」
俺は容易にその光景が想像出来た。
先に食べると、どんなすっぱいものでも甘く感じる様になってしまう魔法の様な果実、ミラクルフルーツ。
話のタネに、ネタとして優秀なのは間違いない。
酒が入ると、よりそれで盛り上がれるのは間違いない。
「他も良い感じです。リョータさんがレシピを作った、青リンゴとお酒を混ぜる飲み方も大好評です」
「青リンゴサワーだな。あれはうまいよな」
エルザ達から、これまでの十種類の果物の報告を一つずつ受けていく。
概ね好評なのがうれしかった。
「さっそく、植物ドロップの高い冒険者達がうずうずしてるね。リョータさんの調査が終わったら一気になだれ込むと思う」
「そっか。これでニホニウムが、必要とされている、って思うようになればいいんだけど」
彼女の悩みを思い出して、それが解消されることを願う。
いつの間にか、この世界の精霊達にすごく肩入れしてしまうようになった俺。
数百年、あるいは数千年間感謝も見返りもなく働き詰めで、たまに人間と接するだけの精霊達の事は他人とはとても思えない。
「……にぶちん」
「え?」
「もういいじゃないのエルザ、これがリョータさんなんだから」
「……そうかもしれないですね」
「えっと……」
ちょっとだけ唇を尖らせてしまうエルザと、ニヤニヤしているイーナ。
気づかない内に何かをしてしまったんだろうか、とちょっと不安になる。
「えっと……」
「頼みごと分の報酬をどうしようか、って話よ、リョータさん」
「え? ああ、お礼はもちろんするよ。何がいい?」
「じゃあ夜の、大人のデート一回で」
「それでいいのか? じゃあビラディエーチで――」
「にぶちん」
「え?」
またまた拗ねられてしまう。
エルザはひとしきり拗ねた後、ふう、と笑顔に作り替えて。
「嘘です、なんかリョータさんをちょっと困らせてみたくなっただけです」
「え、あ、ああ」
「じゃあ今夜、空けて置いて下さいね」
「わかった、エミリー達に話したら迎えに来る」
「はい」
「待ってるわね」