軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

553.あまのじゃく

地下十階の存在がものすごく気になる。

今すぐにでも降りて探りたいが、グッとこらえた。

ダンジョン探索をセルから依頼されたのと、精霊の部屋に行くには多くの場合全階層を「制覇」しなきゃいけないのが経験上分かっている。

だから今すぐにでも確認したいが、それをぐっとこらえて、まずは九階の攻略をする事にした。

もはや慣れてきて内臓ダンジョンを進む。

すると、すぐにモンスターとエンカウントした。

「ゴブリン?」

現われたモンスターを見た瞬間、そんな感想が口をついてでた。

それは小鬼と呼ぶにふさわしい、体躯が小さく、目つきと露わになっている牙が鋭くて、全裸で肌の色がくすんだ灰色のモンスターだった。

だから俺はとっさにゴブリンという言葉が口から飛び出したのだが。

「ああ、そういえば 天邪鬼(あまのじゃく) ってモンスターもこういう見た目だっけか」

すぐにその事を思いだして、なるほどと頷いた。

新・ニホニウム、ここまで全部「和」の妖怪がでているダンジョン。

その妖怪の中に、ゴブリンと特徴がほとんど一緒の天邪鬼という妖怪がいる。

そうとなれば、ますます攻略しなきゃいけないって思う。

これが本当にゴブリンじゃなくて天邪鬼という妖怪なら、その違いをちゃんと判明させた上で報告しないといけない。

なので、俺は気を引き締めて、銃を抜いて銃口を向けた――のだが。

「あっ」

天邪鬼はまったく躊躇することなく、身を翻して逃げ出した。

戦う気がまったくなくて、最初から逃げ出すモンスターはほとんど初めてだ。

俺は銃をしまい、天邪鬼を追いかけた。

ダンジョンの角を曲がると、少し先で天邪鬼がこっちを振り向いていた。

それでまた銃を抜くと――逃げ出した。

「ちっ、待て!」

舌打ちしつつ、天邪鬼を追いかける。

こんなにはっきりと逃げていくモンスター、今まであったことない。

これは、倒す前にちゃんと様子を見極めた方がいいな。

なんて、思ったその瞬間。

「なに!?」

天邪鬼が止った、立ち止まって、こっちを振り向いて見つめてきた。

距離を引き離されたわけでもなく、角を曲がって一瞬視界から消えたわけでもなく。

なのに、天邪鬼は立ち止まった。

「どういう……事なんだ?」

疑問に思いつつも、とりあえずは拘束しよう。

そうおもって――また逃げ出した!

逃げ出した天邪鬼は今度こそ角を曲がった。

それで追いかけていくと、角の先には三叉路の分岐になっていた。

「くっ」

アリスと違って、俺はモンスターの居場所を察知する能力は無い。

三叉路に逃げ込まれて姿が見えないのでは、事実上見失ったのも同然だ。

「しょうがない、引き返して別の個体を探すか」

そう思い、銃をしまい、くるりと身を翻した――ペタン。

足音に振り向くと、天邪鬼が自ら姿を見せた。

「……」

天邪鬼は逃げ出した。

「……」

天邪鬼は再び姿を見せた。

「……」

天邪鬼はまたまた逃げ出した。

「……」

天邪鬼は姿を見せた。

天邪鬼は姿を見せたまま引っ込めなかった。

「……なるほど」

大体、分かってきた。

こっちの「敵意」――いや、心の中を読んでるんだな、こいつ。

攻撃しようと思えば逃げ出すし、諦めて立ち去ろうとしたら姿を見せる。

こっちの心を読んで、正反対の行動をしてくる。

「なるほど、あまのじゃくだな、まさしく」

正反対の事を延々とされて普通はイラッとするところだが、ちょっと納得した。

名前通りの天邪鬼で、ちょっとおかしかった。

「……まあ、だけど」

俺は深呼吸して、考え方をまたまた変えた。

倒す、コロス、やっつけてドロップさせる。

そう思った瞬間、天邪鬼はまたまた逃げ出したが。

「甘い」

地を蹴って突進した俺は、一瞬で天邪鬼を先回りした。

速さSS、その速度を本気で出せば、天邪鬼の逃げるスピードなんて止まっているような物。

身を翻して更に逃げようとする天邪鬼の、更に先回りして銃口を突きつけて――撃つ。

至近距離のヘッドショットで、天邪鬼を倒した。

心を読めても、最終的には身体能力が物をいう。

そんな感じの倒し方になった。

「自分を撃つ、で加速弾をってのも考えたけど、必要なかったな」

そんな事をつぶやきながら、ドロップをまつ。

完全に消えた天邪鬼がドロップしたのは、薄ピンクで、手の平サイズの鈴のような形をした果物だった。

拾い上げてかじってみると、リンゴのような、ナシのような食感で、やっぱりちょっと甘酸っぱかった。

これもさくらは名前をしっているのかな? と思いつつ、九階を歩き回って、速さ任せで天邪鬼を倒してドロップを集めていった。