軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

549.むいむい

翌日、俺は転送部屋を経由して、ニホニウム地下六階に降りてきた。

相変わらずの内臓ダンジョン、ダンジョンスノーが止んだ分、おどろおどろしさは大分収まった。

あれはあれで、害はないけど、内臓と血のような雪のコンボでちょっとした精神攻撃になってたから、収まったのはよかった。

まずは能力でダンジョンの構造を把握する。

形は上と違うが、それは通常の範疇内。

大きく違って、何か特別違うところがある――という訳ではないようだ。

ダンジョンの構造を確認したあと、モンスターを探して歩き出した。

適当に歩く。調査期間なのでダンジョンには俺しかいなくて、この階のモンスターとドロップを確認するまで下には降りないから、ダンジョン構造を無視してあるいた。

いや、むしろ行き止まり・袋小路にも何かがあるかもしれないと、積極的に階段から遠ざかるような歩き方をした。

そうしている内に――。

「女の子?」

一人の女の子と出くわした。

おかっぱ頭に、可愛らしい柄の着物。

「なんでこんなところに女の子が?」

と、俺が思ったのは、女の子がこっちをみるなり「ニコッ」って微笑んで、とてとてと小走りで駆け寄ってきたからだ。

俺の前にやってくるとそこで足を止めて、もう一度「ニコッ」と微笑む。

まるで、バナジウムのようだった。

ただの可愛らしい女の子。

「君、名前は? どうしてここに?」

「?」

女の子は首をちょこん、と傾げた。

「えっと……」

俺は困った。

ここもバナジウムと同じだった。

言葉はなくて、表情とボディランゲージだけでコミュニケーションを取ろうとしているような女の子。

だから、気付くのが遅れた。

「え?」

少し離れた先に、もう一人、女の子がいた。

微妙に顔が違ったり、髪型もやっぱり微妙な違いがあるが、目の前にいる子と同じ、おかっぱ頭で可愛らしい着物姿だ。

思わずこっちの子を二度見して、二人と交互に見比べてみた。

「………………座敷童!!」

脳裏に白い雷が突き抜けていって、その名前が口から飛び出した。

新・ニホニウム。妖怪ばかりのダンジョン。

そこに現われた可愛らしいおかっぱ頭で着物姿の女の子。

俺が知っている座敷童という存在の特徴と一致している。

ぐいぐい――と後ろから服の裾を引っ張られた。

更にもう一人、女の子が現われた!

微妙な違いはあるが、やっぱり似たような見た目の女の子。

ここにいたって、俺は確信する。

ニホニウム地下6階、モンスターは――座敷童。

「……えっと」

それはいいんだけど、困った。

困り果ててしまった。

相手がモンスターなら、倒してドロップを得るのがこの世界の基本なんだけど、この見た目ではどうしても攻撃できない。

向こうが攻撃して来ないのもあって、モンスターだとどうしても思えないのも攻撃をためらう理由の一つになっている。

攻撃してこなくて、ニコニコ笑ったり、ちょこんと小首をかしげてこっちをみたりしているだけの女の子に、一方的に攻撃を加えるのは罪悪感が。

「とは……いえ……」

苦り切った表情をしてしまうのが、自分でもわかった。

調査なのだから、倒さないと話にならない。

でも、どうしても攻撃を加える事ができない。

「ぐっ……ま、まずは」

俺はその場から逃げ出した。

「モンスターだったよ」

転送部屋で戻ってきたアリスが教えてくれた。

「そうか。ありがとう」

ダンジョンから逃げ出した俺は、アリスに協力を頼んだ。

ダンジョン産まれ。

アリスの特殊能力は俺の上位互換、ダンジョンの構造が分かるだけじゃなくて、モンスターがどこにいるのかも分かるもの。

それは言い換えれば、目の前の存在がモンスターなのかどうかが分かる能力でもある。

倒さないでも、とりあえずモンスターかどうか分かる能力を持ったアリス。

俺は、彼女に協力を頼んだ。

「ありがとう、わるいな。ちょっと攻撃するのが」

「ううん、分かるよその気持ち」

「ニホニウムが一般開放されたら、毎日が地獄絵図だろうな」

「かもね。あっ、そうだ」

アリスはポンと手を叩いて、何か思い出した様な仕草をした。

「むいむい、リョータに挨拶して」

「むいむい?」

何者だ? と思った次の瞬間、アリスの背中から何かがひょこっと顔を出して、彼女の肩にのった。

それはぬいぐるみのような、あの座敷童のようなもの。

「新しく仲間になったむいむい」

「(ペコリ)」

「倒したのか!?」

アリスの容赦のなさに、俺は盛大におどろいたのだった。