作品タイトル不明
542.首の数
「かまいたち?」
「ああ」
俺は頷き、残り数少ない拘束弾を込めて、いまだにまともに姿を見せない――ものすごく速く動き回っているモンスターにしっかり狙いを定めて――撃った。
拘束弾が当たって、モンスターは光のロープにつかまって動けなくなった。
「なにこれ面白い!」
拘束されたモンスターを見て、さくらは目を輝かせた。
ぱっと見、色違いの三体のイタチだった。
三体はしっぽというか、根っこのところで繋がっていて、それぞれの口には縄、カマ、薬壺をくわえている。
「これが妖怪かまいたちだ。なるほど、こういう見た目をしてたんだな」
「知ってたの?」
「子供の頃マンガで見た事がある」
左手に鬼を宿す小学教師が主人公のマンガだ。
「三位一体の妖怪だ。最初の一体は人を転ばせて、次の二体目がカマでざくっと斬る、でもって三体目がさくっと切り傷を治すっていう妖怪だ」
「何それ面白い、意味わかんない」
さくらは好意的な「意味わかんない」を口にした。
俺の説明で更に目をきらきらさせて、拘束されているかまいたちを見つめた。
「あのマンガとか昔話とかだと三体が別々の存在だったんだけど、これは繋がってるな」
「つながってるね。ヤマタノオロチみたい」
「ヤマタノオロチは知ってるのか」
「ほら、例の刀のソシャゲ」
「ああ、それにでてたのか」
「んーん。でてないけど何時でるのかっていつも話題に上がるから、それで逆に覚えた」
「なるほど」
そこから元ネタをしって、ヤマタノオロチに行き着いた訳か。
「……」
「どうしたのおじさん?」
「いや、なんでもない。それよりも倒してしまおう」
「うん、あたしがやる? それともおじさんが?」
「とりあえずドロップは欲しいから俺がやるよ」
「わかった」
さくらは一歩下がって、俺に任せた。
俺は通常弾を込めて、拘束しているかまいたちに三連射。
一発目が壺の首を吹っ飛ばしたが、残りの二発はキーンと金属音とともにはじかれた。
そして拘束が解かれ、壺の首も再生する。
「なんだと?」
「おじさん、多分首の順番!」
「――っ! なるほど!」
俺は再度銃弾を込めた。
猛スピードで動きだしたかまいたちに集中して、照準をつける。
ものすごくはやいが、それは速いだけ。
ダンダンダン!
連続でトリガーを引いて、通常弾を撃つ。
さくらの言うとおりに、縄の首、カマの首、壺の首と次々に撃ち抜いたら――倒れた。
ポン、と緑色の果物がドロップされる。
「どうだった? 速すぎてちょっと見えなかったけど」
「さくらの言うとおり、順番で打たなきゃダメみたいだった」
「やっぱり。ここ五階だもんね」
「五階から特殊な倒し方をしないといけないケース出てくるもんな。ありがとう」
「えへへ-」
さくらに感謝しつつ、ドロップした果物に近づき、拾い上げる。
「レモンか」
「緑色のレモンなんてあるんだ」
「あるよ、あまり見かけないけど」
俺はレモンを割って、一口かじる。
「すっぱい」
「レモンだもんね」
「レモンだしな」
「ってことは、やっぱり四階だね」
「そうだな」
他のとちょっと違う、四階の特殊ドロップ。
自身に味はないが、その後に口にした酸味を全部甘さに変換してしまうもの。
ミラクルフルーツ。
「ねえ、四階にもどってみようよ。なんかあるかもしれない」
「そうだな」
頷き、さくらと一緒に来た道を引き返す。
脈動する内臓ダンジョン、降りしきる赤いダンジョンスノー。
そんな中、たどりついた登りの階段の所に。
「あっ、ヤマタノオロチ」
巨大なヘビ。
首がいっぱい――かまいたちよりも遙かに多く生えているモンスター。
ヤマタノオロチが、まるで階段を守るように鎮座していた。