軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

529.サトリウム

夜の酒場・ビラディエーチ。

ネプチューンと向き合って座っていた。

ネプチューンの両脇には相変わらずのランとリルがいて、こっちは一人だ。

そのネプチューン、ビラディエーチも流行りにのって仕入れた炭酸水を飲んで、ニコニコとわらった。

「さすがだね。こんな飲み物がこの世にあるなんて知らなかった。水なのに水じゃないみたいな味だ」

「それ炭酸の効果だ。しばらくほっとくと炭酸が完全に抜けて、ただの水になる」

「ビールと同じだね」

「ビールと違って、炭酸抜けたらただの水になるけど」

「あはは、それじゃ早く飲まなきゃ」

ネプチューンはそういいながら、炭酸水をグイッ、と飲み干した。

「君の大活躍で、あっちこっちで面白い動きができちゃってるの知ってる?」

「面白い動き?」

「ダンジョンごとを借り切りたいってはなしが、あっちこっちのダンジョン協会に上がってきててね」

「そうなのか」

「ふふ、君の真似をして一攫千金を狙ってる人があっちこっちにね」

「へえ……」

そんな事になってたのか。

まあでも、そうなってしまうのか。

「もっとも、今は時期が悪すぎてどこも話がとおらないけどね」

「時期が悪い?」

「ほら、あっちこっちで精霊がへそを曲げちゃってるでしょ」

「……ああ」

その話か。

紙製品のドロップ半減から始まって、俺のファミリーでもニホニウムがいろいろやっているのも。

もっとも、ニホニウムはヘソを曲げているんじゃなくて、楽しんでいるんだと思う。

人の困ることをしたいのがニホニウムで、その対象として今俺がロックオンされている。

事実、ここ最近のニホニウムは機嫌がよさそうだった。

落ち着いた感じの上機嫌。

ああしているから、俺は彼女にやめろというつもりはない。

「どこもかしこもちゃんとダンジョン協会が管理してるから、とおらないよな」

「そういうこと。実質管理されてないのは三つだけだけど、どれも金にならないしね」

「三つ?」

そんなにあるのか、ダンジョン協会の管理下から外れているダンジョンって。

「まずバナジウム、貸し出し中だから管理から外れてる」

「ああ」

「それにニホニウム。ぼくが調査を終わらせた直後からほとんど放置されてる」

「……ナウボードも表の一個だけだしな」

「最後にリョータ」

「はい?」

なんでそこで俺の名前が出てくるんだ?

「ダンジョンの話じゃなかったのか?」

「君が作った、あのユニークモンスターだけの村」

「ああ……たしかにあそこは『リョータ』って名前になったけど、村だよ?」

「君がお金を出して、ダンジョンみたいなのを作らせたじゃない」

「……ああ」

確かに作らせたけど……。

あそこにいるのはみんなモンスターだ。

ハグレモノで、ユニーク化しているが、モンスターばかりだ。

下手に人間の家をつくって街にするよりは、ダンジョンっぽい構造の建物にした方がいいと思って、俺が金を出してそういう建造物を作らせた。

今、あの村のモンスターたちは全部あの建物の中に住んでいるはずだ。

「商談にいった人間が言うには、中の雰囲気が完全にダンジョンだったんだって。そういう場所に、モンスターがうじゃうじゃいればね」

「なるほど」

「それで、あそこを119個目のダンジョンだって冗談半分でいう人も出てきたって訳」

「そんな話になってたのか……」

「おめでとう、精霊・サトリウムさん」

「サトリウムか」

なんだかちょっとおかしかった。

冗談だと分かってるから、気楽に笑っていられた。

「どうだい、君もここで一つ、ヘソを曲げてみないかい」

「俺がヘソを曲げても何も影響ないだろ」

本物の精霊じゃあるまいし。

アウルムとかカーボン、プルンブムとかがヘソを曲げたら確実に大変な事になるけどな。

亮太と別れた後の、ネプチューン一家。

ネプチューンは歩いてるときも変わらずに、ランとリルを左右に侍らしている。

「彼はわかってないね」

「なにが?」

「彼自身の影響力をさ」

ネプチューンはクスッと、いたずらっ子――にしてはちょっとエグい笑みを浮かべて。

「精霊付きの名前を名乗ってないけど、彼が怒ったときに同調してストライキする精霊、何人いると思ってるんだろうな」

「何人いると思うの、あなたは」

「最低で五人」

「そんなに!?」

「それだけ重要な存在なんだよ、彼は。本人はそれを分かってないみたいだけどね」

「……」

「どうしたのリル、ぶすっとして。そんな顔も綺麗だけど」

「ばっ――何いってるのよ!」

「リルさんは、ねーくんが彼を褒めるのが面白くないんだよ」

「……そうよ、あなただって。その気になれば精霊の――少なくとも二人は」

「あはは、ありがとう」

ネプチューンは楽しげに笑いながら。

「この先、もっともっとふえるだろうね、彼なら」

と、預言めいた言葉を放ったのだった。