作品タイトル不明
526.マーガレットとバナジウム
屋敷の玄関で、マーガレットを出迎えた。
武器の大剣を半分引きずって、「よいっしょ」って感じで入ってきた。
出迎えたのは俺、そして何よりバナジウム。
バナジウムがマーガレットを自分のテリトリーの中に招き入れた。
「悪いな、急にこんなことを頼んで。ちゃんとギャラは払うから」
「いいえ。リョータ様に頼っていただけるなんて、光栄ですわ」
「ありがとう。じゃあこっちへ」
マーガレットを連れて、バナジウムと一緒に地下三階に向かった。
そこにエルザとイーナが待っていた。
「準備、出来ました」
「いつでもいけるわ」
そう話す二人の横に、山のような瓶が積み上げられていた。
「これがそうなのか?」
俺は瓶を一つ取って、マジマジと見つめる。
「はい、マオさんが手配してくれました」
「マオが……?」
ちょっとだけ驚いた。
マオ・ミィ。
フィリンダンジョン協会の会長。
10歳くらいの可愛らしい女の子だが、匂いだけでほとんどの酒を利き分けられる特殊能力の持ち主。
初めての酒も、その品質がわかるという、よくよく考えたらチート級の能力者だ。
「ランタンはお酒のダンジョンですから、これが必要な事もあるんです」
「違うでしょ、エルザ」
「え?」
イーナはニヤニヤしながら指摘する。
「重要なのはそこじゃなくて、話を聞きつけたマオちゃんが、是非やらせてくれっていってこれを集めてきたことよ」
「あっ、そうね。そうだよね」
「というわけで、後でマオちゃんを褒めたげて」
「うん、わかった」
俺は頷き、マーガレットに振り向いた。
「それじゃ、やってもらえるかな」
「はい、お任せを」
「バナジウムも、頼むな」
「……(こくこく)」
意気込む二人。
まずはバナジウム、彼女がモンスターを召喚した。
ダンジョンの精霊は、息をするかのように軽くモンスターを召喚した。
それを、マーガレットが大剣を遠心力任せに振るって、迷いのない斬撃で倒した。
ドロップした炭酸水は用意した瓶に吸い込まれる。
瓶のラベルにマーガレットの顔写真が浮かび上がる。
パンドラボックスというアイテムがある。
ドロップした人間を表す顔写真が表に出てくるという結構すごいアイテムだ。
それの、瓶バージョン。
さしずめパンドラボトルとも言うべきアイテムで、マーガレット印の炭酸水、その一本目ができあがった。
「それでよろしいのですか?」
「ああ。わるいけど、あっちこっちにサンプルとしてまず配りたいから、ここにある瓶の分お願いできるかな」
「お任せ下さい」
「それじゃ――あれ?」
「どうかなさいましたかリョータ様」
不思議に思った俺を、小首を傾げて見つめてくるマーガレット。
「そういえば、例の四人の騎士は?」
「ラト、ソシャ、プレイ、ビルダーのことですわね」
「ああ」
マーガレットに付き従う、四人の騎士。
神出鬼没な事と、命じれば何でもできる――出来てしまう万能性から、俺は忍者っぽく感じて、ニンジャ騎士と勝手によんでいる。
その四人が姿を見せていない事に気づいた。
マーガレットも、それに頼る気配がまったくなかった。
「ダンジョンの外で待たせてますわ」
「外で?」
「はい。ここに連れてきては……ダメなのですわよね?」
マーガレットはそう言い、バナジウムをみた。
「気を遣わせてしまったか」
「いいえ、当たり前の事ですわ」
にこりと、上品に微笑むマーガレット。
こっちがうっかりしていた事に気遣ってくれた事に感謝――していると。
バナジウムがマーガレットに近づいた。
至近距離で見あげて、どうしたんだろう、と思っていたら。
「……(にこっ)」
マーガレットの裾をつかんで、ニコニコと笑みを浮かべた。
「あら」
「これは……」
驚くエルザと、当のマーガレット。
俺にするのと同じように、マーガレットに触れて、ニコニコしていた。