作品タイトル不明
519.縛りプレイで本気だす
「十一万と……三百二十ピロです」
夜、テルルおばあちゃんのところから帰ってきて、みんながサロンに集まる前に、同じく帰ってきたエルザを捕まえて、テスト部屋に入った。
そこで彼女が読みあげた数字、それは俺の今日の稼ぎだった。
テルルを丸一日回ったの稼ぎが、十一万ちょっとという、ピークからすればかなり少ないものだった。
「なるほど」
俺は頷く。
効率の低下は感じていたが、こうして数字に出すとより昔との差が浮き彫りになった。
「半分こ、って話ですよね」
「ああ、マーガレットとドロップ品を半々で分けた。労力はだいたい同じくらいだったからな」
「今のリョータさんだと一日かけて狩りしても、二十万ピロくらいにしかならないんですね」
「まあ、そうだな」
俺が頷くと、エルザは深刻そうな表情をした。
「いくら何でも、少なすぎますよ。このままじゃいけません、バナジウムちゃんの賃料がまかなえません」
バナジウムダンジョンの賃料は年間十五億、日割りで400万くらいだ。
11万程度じゃ焼け石に水、到底足りない。
「ニホニウムさんにいって、やめさせてもらいましょう」
「……それもどうなんだと思うんだけどね。だって、それは彼女がしたいことなんだから」
「でも、このままじゃ――」
「まあまあ。今日は11万だったけど、まだ慣れていないことと、テルルおばあちゃんに会ったことと、マーガレットと組んでレクリエーション的にやったのと……いくつもの原因が重なった結果だ。明日から全力で周回すればきっと大丈夫なはずだ」
「でも――」
「ニホニウムにやめさせるようには言わない」
俺ははっきりと言い放った。
何か言いたげだったエルザは息を飲んで、身じろぎした。
「バナジウムに15億ピロも使ってるからそうみえるかもしれないけど、バナジウムと同じくらいニホニウムも大事だよ。というか関わった精霊はみんな大事だ。望んでる事を全力で実現させたい」
「……」
エルザはものすごく複雑そうな顔をした。
「どうしてもこのままで行くんですか?」
「ああ、やめるつもりはない。言っておくけど、俺が言わないからって言い訳で、エルザがニホニウムに頼み込むのは無しだからな」
先回りした。
こういう時によくあるパターンで、まわりの人間がよかれとおもって、悪役になる覚悟を決めて何かをするという。
それはダメだ、と先に断った。
「……分かりました、とりあえずは」
「とりあえず?」
「『金のなる木』として、リョータさんに融資したり、前借りさせたりしてます」
「ああ」
「それがちゃんと払えてる間は何もいいません。滞ったらこっちはこっちで動きますからね」
「ああ、それでいい」
落とし所としてはすごくいい。
俺が何とかして、支払いを滞らせなければいいだけの話だ。
☆
翌日、俺は一人でテルルに向かった。
テルルおばあちゃんからもらった指輪をつけて、テルルを周回していった。
スライムの攻撃を一切無効化する指輪、つまり無敵になる指輪。
それをつけて、捨て身の戦いをしていった。
攻撃してくるスライムを相打ち覚悟で反撃したり、とにかく無理矢理にスライムを狩りつづけていった。
魔法カート一つを満杯にしたら階を降りる。
狩ったドロップ品をどんどんどんどん『金のなる木』に送る。
昨日よりもかなりのハイペースだった。
捨て身で、ダメージを無視出来るのはことのほか強くて、何も考えないで力押ししたら、効率がグングン上がった。
☆
「230万ピロです」
夜、再びのエルザ。
彼女に教えてもらった集計の額は、前の日と比べものにならないくらいの額だった。
これでも、まだまだ足りないのは足りないんだが、エルザは昨日のような焦ってる表情ではなくなっている。
「さすがリョータさんですね、心配は余計だったみたいです」
「まだ半分くらいで足りてないけどね」
「桁が違うのなら心配しますが、たかが二倍程度」
エルザはにこりと笑う。
「リョータさんならきっとなんとかしてくれる、そう思います」
信頼はありがたかった。
ちゃんと応えなきゃと、強く思ったのだった。