軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

518.テルルの煮物

「どうして……こんな物を俺に?」

「あなたの事はずっと見てましたですぢゃ」

テルルおばあちゃんはさっきとまったく同じ台詞を口にした。

「うちの子から生まれたみたいで、孫みたいな感じでずっと見てたですぢゃ」

本当に孫にお小遣いをあげるおばあちゃんだった!

というか……そういう風に感じられていたんだな。

詳しい原因はまだ解明していないけど、俺はテルルの1階でドロップされた。

スライムから生まれた、という見方も出来る。

そこから考えれば、おばあちゃんと孫、というのもまったく荒唐無稽な話ではない。

そう思うと、ますますこれをもらわなきゃいけないって気分になった。

「分かりました、ありがたく使わせてもらいます。すごく嬉しいです」

「それはよかったですぢゃ」

テルルおばあちゃんはそう言って、ふにゃり、と可愛らしく笑ったのだった。

「あっ、リョータ様!」

テルルおばあちゃんのところからダンジョンに戻ってくると、まわりを探していたマーガレットが気づいて、小走りで近づいてきた。

「大丈夫でしたかリョータ様」

「心配かけてごめん。ちょっとテルルおばあちゃんに呼ばれた」

「やはり精霊と会っていたのですね、さすがですわリョータ様!」

マーガレットは手を合わせて、思いっきり嬉しそうに笑った。

「テルルの精霊にも力を貸してもらえる事になったのですか?」

「力をっていうか、まあ、こんなのをもらった」

「これは……指輪、ですか?」

「うん、スライムいないかな」

「あちらに一体、通り過ぎていきましたわ」

「追いかけよう」

マーガレットに教えてもらった方向に、彼女を連れて歩き出した。

角を曲がるとすぐに眠りスライムと遭遇した。

「見てて」

「はい!」

力強く頷くマーガレットをその場において、俺は指輪を装備しながら、スライムにむかって歩き出した。

眠りスライムはこっちに近づいて、怒った顔で体当たりしてきた。

体当たりはものすごい勢いで俺の股間にジャストミートした。

「リョータ様!?」

当たり所が当たり所なだけに、マーガレットは俺の名前を叫んだ。

「うん、大丈夫」

股間に体当たりした眠りスライム、勢いを失って真下に落ちる。

そのままポヨンポヨンとゴムボールのように転がって離れていく。

俺ははめた指輪を見た。

スライム無効の指輪、効果はバッチリだ。

いきなり股間を狙われた事には一瞬だけ焦ったけど、今まで何人もの精霊と会ってきたから、間違いなく大丈夫だと確信していた。

「リョータ様!? 今のは?」

「見ての通り、スライムの攻撃を一切無効化する装備だ」

「すごい!」

「攻撃は無効化したけど、眠りの息はどうなんだろ」

そう言った傍らから、眠りスライムがますます怒った顔で、吐息を吐き出してきた。

これもまったく動じることなく受けた。

前はかかるとすぐに眠っていた眠りスライムの睡眠攻撃もまったく効かなかった。

「状態異常攻撃も無効化なんだな」

「ますますすごいですわ」

「よし、じゃあやり方変えよう」

「え?」

「俺が攻撃を引き受けて、マーガレットが倒す。行こう」

「はい!」

定時に上がって屋敷に戻ると、丁度同じタイミングでエミリーが戻ってきていた。

エミリーは担いでいたハンマーを下ろして、俺のところに駆け寄ってきた。

「お帰りなさいなのです」

「ただいま。丁度よかったエミリー、ちょっと頼みごとがあるんだ」

「分かったです、何をすればいいです?」

「料理を教えてくれ」

「はあ……料理、なのです?」

「ああ」

俺は深く頷いて、エミリーを見つめた。

「分かったです」

エミリーは深く訊かずに引き受けてくれた。

「おばあちゃん」

「おや、どうしたのですぢゃ? というより、どうやってここに入ったのですぢゃ?」

さっき別れた時とほぼ同じポーズのまま、駄菓子屋のおばあちゃん的な感じで座っていたテルルおばあちゃんは、俺を見て驚いた。

「これ、お裾分け」

俺は持ってきたものを差し出した。

深めの器に入っているのは、ニンジンとタケノコを使った煮物だ。

「今日取れたばかりの素材で作ってみた。口にあうといいんだけど」

「私に……ですぢゃ?」

「うん」

驚くテルルおばあちゃん。

俺は器を差し出し、ついでに持ってきた箸も渡した。

「どうぞ」

「いただきますぢゃ……おお、これは」

「どうですか?」

「おいしいですぢゃ。ダンジョンの野菜をこんな形で口にしたのは初めてですぢゃ」

そうなのか。

「口にあってよかったよ」

「……これを、食べさせるためにわざわざ、ですぢゃ?」

「うん」

頷くと、テルルおばあちゃんはまず驚き、それからまた、ますます嬉しそうにふにゃりと笑ったのだった。