軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

499.ジ○リヒロイン

「な、なんなんだ今のは……」

精霊カリホルニウムは驚愕した。

目の前に起きたことを理解できずにいるようだ。

「こ、これなら!」

焦った顔で、再びゴブリンを大量召喚――は出来なかった。

カリホルニウムの召喚を見るのはこれで三回目だ。

まったく同じ動きを何回も見せられたら覚えてしまう。

俺は二丁拳銃を構えて、ゴブリンが召喚される片っ端から撃ち倒した。

出現即消滅。

召喚する場所も同じだから、ほとんど先読みにも見える感じで弾丸を「置いて」倒した。

傍目からは、頭が弾けたゴブリンの死体を召喚した――そういう風に見えてしまうだろう。

ゴブリンを再び一掃した後、カリホルニウムに話しかける。

「話をしたいんだ」

「う、うるせえ! こうなったら俺が直々に――」

カリホルニウムはそう言って、わずかに残った中二心をくすぐるような、格好いいポーズで襲いかかってきた。

仕方ない、怪我させない程度に――。

「まって」

「えっ? こ、これは――」

さくらに呼び止められた次の瞬間、体に違和感を覚えた。

ほんの少しの違和感。

それが何なのか――を深く考える暇はなかった。

カリホルニウムが既に目の前に迫っていた。

無駄に跳躍して、技名がつきそうな跳び蹴りをしてきた。

反撃――は出来なかった。

体は動く、しかし反撃をと思った瞬間固まってしまった。

まるで――シートベルト。

ゆっくり引くとベルトを伸ばせるのだが、勢いをつけて引っかかるとセーフティに引っかかって伸ばせなくなる。

あんな感じで、反撃を考えた瞬間からだが動かせなくなった。

「アブソリュートロックの石!」

何を考えたのか、さくらはそれを俺に使った。

反撃は出来ずに、俺はカリホルニウムの攻撃を食らってしまう――がダメージはない。

蹴りからはじまるラッシュを全部体で受けたが、アブソリュートロックの石の絶対防御で、ダメージは一切受けなかった。

数十秒にも及ぶラッシュ、一方的に攻撃をしたカリホルニウムは、ぜえぜえと息が上がった。

そして、怒った顔で俺の襟を締め上げて。

「なぜだ! 何故反撃をしない!」

「それは――」

「分からないの?」

「「えっ?」」

会話に割り込んできたさくら。

俺とカリホルニウム、戸惑う「えっ?」が綺麗に重なった。

その戸惑いを半ばスルーして、さくらは真顔で、カリホルニウムにだけ話しかける。

「一瞬でゴブリンを殲滅。先読みまでして殲滅できるほどの男が、あんたの攻撃にまったく反撃しないで全部体で受けた。その意味をよく考えて」

「意味……だと?」

意味……だって?

正直、さくらが何をしようとしているのか分からなかった。

だが、何かをしようとしている、というのははっきり分かる。

そうでもなければ、アブソリュートロックの石をわざわざ俺に使って、なんか芝居がかった口調でカリホルニウムと話さない。

「あなたと話をしに来たからに決まってるじゃない」

「話……だって?」

「そう、話。精霊の事はわかってる。だからモンスターは倒すけど、あなたには手を出さない。あなたと話をしたいから」

「……」

カリホルニウムは俺を睨む。

襟を締め上げる手にますます力がこもる。

このまま爆発するんじゃないか――って案じていたのだけど。

「ふん!」

膨らみきった風船は、爆発する事なく徐々にしぼんでいった。

カリホルニウムは俺を放して身を翻し、不機嫌そうな足取りでつかつかと離れていった。

「これで話せるね。話をしに来たんだよね」

「それはそうだけど……今のは?」

「あれ? おじさんはジ○リとか見ない派?」

「ジ○リ……」

「こわくないこわくない」

「あれかよ!」

さくらに言われて、記憶が一気によみがえった。

凶暴なリスがヒロインの指を噛んでも、ヒロインは痛いとも言わずに、 噛ませて(、、、、) ただひたすらに宥める

「あれ、やってみたかったんだよね、一度」

「えっと……」

俺はすこし複雑な気分でさくらを、そして離れたところで改めてこっちを向いたカリホルニウムを見た。

「なんの話だ、とっとと言え」

どうやら、上手くいった……? みたいだ。