軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

482.風説の流布

テスト部屋の中、無数のファイヤボールがりょーちんを消し飛ばして、全員から感嘆の声が上がった。

エミリー、アリス、そしてセレスト。

早めに帰宅して、テストに付き合ったみんなが同じ反応をした。

「す、すごいわ……こんなにもだったなんて」

その中でも、実際にテストしたセレストが一番驚いている様子だ。

「りょーちんをやっちゃった。こ、これってつまりさ……」

「よーださんでも……なのです」

「ああ」

軽くショックを受けているようにも見えるアリスやエミリーと違って、ある程度想像がついて、故にアリスにりょーちんをだしてもらった俺はあっさり頷いた。

「三分裂で、付け替えて威力二倍。単純に計算して威力六倍だ」

「ろ、六倍……」

「バイコーンホーンでやってもらったけど、この付け替えをインフェルノでやったら、ダンジョン全体を巻き込みつつ、通常の倍の威力で焼き払えると思うぞ」

「す、すごい……」

半ば絶句したようなセレスト。

通常の倍の威力での全体攻撃。

インフェルノでやれば、それはもはや兵器並みの威力だ。

「それに、こっちの指輪なら、エミリーにも使えると思うんだ」

そういいながら、セレストが持っている三つの内、威力倍増の指輪を取って、エミリーに渡す。

「私もです?」

「ああ、前のは特殊性が強かったけどさ」

「なるほど、これは威力を強くする指輪だから、エミリーやイヴでも、つけっぱなしでもいけるのね」

実体験したからか、セレストはすぐに俺が言いたい事を理解した。

「やってみて」

「分かったです」

エミリーはそう言って指輪をつけて、ハンマーをとりに行った。

その間、俺達はテスト部屋でハグレモノ、エミリーがいつも倒しているであろうダンテロックを用意する。

ハンマーを持って戻ってきたエミリー、ダンテロックを見て一瞬で理解して、俺達に頷いてそっちに向かった。

ハンマーを振り上げて――叩きつける。

ダンテロックが一撃で粉々になった。

それはいつものこと。

ダンテロックを粉々にするくらい、エミリーにとって日常であるが。

「見て、床が」

「ひび割れてる……」

ハンマーの威力はダンテロックを貫通して、床に到達した。

ダンテロックがあった床は、まるで蜘蛛の巣のように、放射線状にひび割れていた。

「すごい、すごいです!」

「こっちはもっと数を揃えたいな。ぶっちゃけ、常時つけておいてもいいくらいだ。純粋な威力アップなら」

「確かにそうね」

「でも……さっきエルザのところで買い取りの精算にいったとき話を聞かされたのだけど、これ……5000万ピロもしたのでしょう」

「えええええ!?」

「ご、5000万なのです!?」

アリスとエミリーが揃って驚愕し、声を上げた。

「ああ、亀裂の石が今高騰しているみたいだ。……ぶっちゃけもっともっと上がるだろう」

「そうよね」

セレストが頷いた。

「この指輪、ハグレモノではないのよね。マーガレットでもドロップさせられたし。ということはドロップAおそらく特質系だけど、そういう人なら活用できるから、この指輪の能力が明るみに出ればますます高騰するでしょうね」

「……一つ一億、くらいまではあると思う」

「い……」

「いちおく……」

アリスとエミリーはますます絶句してしまう。

だがそれくらいは余裕であると思う。

それほどの性能だ、この指輪は。

「それなら大丈夫よ」

「イーナ!」

テスト部屋の入り口で、帰宅してきたイーナが立っていた。

彼女は両手を肘に添える、色っぽさただよう腕組みをしたまま近づいてきた。

「大丈夫って、どういう事なんだイーナ」

「もう手は打っているわ。というか、今やってる」

「手を? 何をしたんだ?」

「噂を流しただけ、リョータさんが、セルの依頼でフェルミウム入りしているって」

「……?」

俺は首をかしげた。

確かにそれは今俺がやっている事だが、その噂を流してどうなるんだ?

俺と同じように、アリスもエミリーも不思議そうにしていたが、セレストが

「……なるほど」

と、得心顔でつぶやいた。

「どういう事だセレスト」

「リョータさんの実績よ」

「俺の?」

「これまでリョータさんが依頼を受けてどこかのダンジョンに入った時って、全てそのダンジョンを変えてきた」

「……ああ、そうだな」

「この指輪は、亀裂の石と、フェルミウムの券が反応してモンスターが召喚される。でも、リョータさんがフェルミウムに入ったことで――」

「券がなくなるかもしれないです!」

エミリーが声を上げた。

「そういうことね」

イーナは得意げに――妖艶に見える笑みを浮かべた。

「券がなくなれば亀裂の石だけあっても無用の長物。そして、リョータさんがフェルミウム入りしたのは事実で、ここまでの実績もある。あとは勝手に、風評が雪玉のように転がり出してくれるわ」

「なるほど……」

ゴミになるかもしれない、という印象を植え付けて、値上がりを抑えたって事か。

やるな――と思っていたら、更に 上(、) があった。

「『金のなる木』では買い取りを中止したわ」

「……やるな」

俺は本気で感心した。

ここで彼女達が買い取りをやめたことで、噂と想像の余地を更に残したと言うことになる。

『金のなる木』と俺が深く繋がっているのはみんな知っている事、その彼女達が買い取りをやめれば、買い控えは一気に進む。

「ふふ、商売の事は私達に任せて」

イーナは、得意げな笑みを浮かべて、そう言い放ったのだった。