軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

480.ゴブリンキング

「はい、確かに五千万引き落としました」

にっこり微笑みながら、処理の手続きをやってくれたイーナ。

彼女達が元々在籍してた「燕の恩返し」にいた頃から、口座の事はほとんど任せている。

独立してファミリーに正式に入った後はなおさら任せっきりだ。

今ではもう、俺よりも俺の口座――俺の資産をより詳しく把握している。

というか、自分の資産が今どれくらいなのかはもう分からない。

事件や依頼を解決するごとに、税金やら分け前やらで、持続の収入が入り続けている。

毎週、いや毎日のように、何もしなくてもお金が入ってくるようになってから、詳しく把握することを諦めた。

だからイーナが本当に引き落としたのかも分からないのだが。

「良かったわね」

「うん……」

親友コンビが嬉しそうにしてるのをみて、間違いなく引き落とされたんだろうと思う。

「リョータさんは、これからどうするんですか?」

「セルから券を預かってる、このままダンジョンに行ってくるつもりだ」

「おてつだいは?」

「ダンジョンの事は大丈夫。それよりもこの石だ。値段が落ち着いた頃にまた頼むと思うから、相場は見ておいてくれ」

「分かりました。任せて下さい!」

また夜に、と言い残して、俺は「金のなる木」から立ち去った。

ハセミの街を通って、屋敷に一旦戻るためカルシウムを経由する。

「むぅ?」

ダンジョンに入った瞬間、異変に気づく。

ポケットの中が何の前兆もなく光り出した。

ポケットの中に手を突っ込んで、光っているものを取り出す。

今し方エルザ達から買い取った亀裂の石と、使うから前もって仕入れてきた券だ。

その二つが光っていた。

「……まさか」

石は五千万かかったかなりの高価アイテム……なのだが。

目の前の可能性にかけてみることにした。

一旦ダンジョンを出て、ハセミの街中にあるダンジョン協会に向かって、協会長のアーロンと会った。

少し迷惑をかけてしまうけど、カルシウムダンジョンをちょっとの間使わせてもらいたいと申し出た。

「リョータさんはこの街の救世主、どうぞ好きなようにやって下さい」

と、実にあっさり許可をくれた。

冒険者達に通達する為に30分間欲しいということだったから、俺は三十分だけ待って、街中をぶらぶらしてから、改めてダンジョンに入った。

無人になったダンジョンの中で、券と石を使う。

すると、オークキングの時と同じような現象が起きて、モンスターが現われた。

今度は大量のゴブリンだった。

ざっと見渡しても200体は越えている、大量のゴブリン。

その中でも、一際目立つゴブリンが一体いた。

体は一回り大きく、きらびやかな王冠をつけたゴブリン。

「ゴブリンキング、か」

この石で召喚するモンスターは全て「王」なのか? と熟考する暇もなく、ゴブリンキングの号令で、大勢のゴブリンが一斉に襲いかかってきた。

一体一体はそれほど大した動きではないのだが、それでも200体まとめて襲ってくると「圧」を感じてしまう。

俺は銃を抜いた、いつもの通りまずは通常弾を込めた。

オークキングの特殊能力もあったから、慎重になってゴブリンに向かって引き金を引く。

先頭に突っ込んできたゴブリンの二体は、銃弾に眉間を撃ち抜かれてはじけ飛んだ。

更に今度は五体まとめて飛びかかってきて、それに向かって通常弾を連射。

ただの通常弾、変哲のない最弱の弾丸。

それでも、一発一殺で、ゴブリンを倒していった。

「弱い――」

「――――!」

ゴブリンキングが持っているこん棒を上下に激しく振った。

すると、ゴブリンキングのまわりにゴブリンが追加された。

数は――七。

俺が倒したゴブリンの数とまったく同じだ。

「……」

倒したゴブリンが消えた場所を見た。

新しく召喚された 同数(、、) のゴブリンを見た。

「無限湧き、か」

なんとなくゴブリンキングの特殊能力がわかった気がした。

これしかない、という確信をもった。

ゴブリンを倒してもドロップはしない、そして倒したのと同じ数だけ追加召喚するという現象。

こういうパターンは、大抵の場合無限に召喚出来るもんだ。

「試してみるか」

俺は二丁拳銃を構えて、深呼吸した。

集中力を高めて――乱射。

精度を極限まで高めた乱射だ。

放った銃弾は全て、ゴブリンの眉間を撃ち抜くヘッドショットだった。

一発一殺、それをハイスピードでやっていって、数を減らす。

ゴブリンの数は猛スピードで減っていき、200体はあっという間にゴブリンキングのまわりにいる数体だけになった。

だが、ゴブリンキングはこん棒を振った。

すると、ゴブリンが再召喚された。

数は――元通りに。

一桁まで減らしたゴブリンは、元の二百体までもどった。

俺はそれに付き合った、更に撃ち続けた。

弾丸を無限雷弾に切り替えた。

位置を調整して、一発で複数体倒せるようにした。

そうして――一セット、二セット、三セット……。

ゴブリンキングは、まったく変わることなくゴブリンを召喚し続けた。

「すごいな、普通に消耗戦を挑まれたら勝ち目なんかないぞ」

無限弾丸があるから渡り合っていられるだけで、それがなかったらこの物量に押し切られてるところだ。

普通の冒険者なら、速攻できない時点で「詰み」だな。

ゴブリンを倒した数が1000を越えた辺りで、「もういいか」と思った。

多分無限なのは間違いない、これ以上試す必要は薄い。

次は、ゴブリンキングに攻撃してみることにした。

無限雷弾をゴブリンキングに撃った。

その軌道上に、別のゴブリンが割り込んで、身替わりになった。

もう一度撃ってみた、やはりゴブリンが身を投げ出して王を守った。

「合理的だ」

俺は苦笑いしつつ、ちょっと感心した。

無限召喚出来るのなら、いくらでも使い捨てた方が合理的なのだ。

同時に、やはりゴブリンキングを倒すべき――倒さないと終わらない事も察した。

「かばうのなら――追尾弾はどうだ?」

二丁拳銃に追尾弾を込めて、一斉に連射する。

「――っ!」

驚く事に、弾はゴブリンキングには向かって行かなかった。

全て、まわりのゴブリンに向かっていき、ゴブリンを撃ち抜いた。

「ならば!」

今度は加速弾を自分に撃った。

加速する世界の中で、ゴブリンキングに肉薄して、ゼロ距離でのヘッドショットを放った。

「むっ!」

そして、驚く。

ヘッドショットがまったく効いていない。

弾がゴブリンキングに当った瞬間、力を失って地面にぽとりと落ちた。

「……つまり」

加速弾を使っていて良かったと思った。

俺は乱射をはじめた。

さっきと同じく、高速のマルチヘッドショット。

加速する世界の中から、通常弾の乱れ打ちが召喚速度を上回り、ゴブリン達を一掃。

そして――追尾弾。

ホーミング軌道を描く弾丸が、今度こそはとゴブリンキングに向かって行き――胸を打ち抜いた。

ゴブリンキングはよろめき、そして倒れ、消える。

「なるほど、まわりを一掃しないとダメージが通らないパターンか。それに無限召喚つき――やっかいだな」

派手な強さはないが、確実にやっかいなモンスターだと思った。

俺は待った。

加速する時間が少し残っていて、ゴブリンキングがまだ消えてる途中。

しばらく待って、加速が解けたのとほぼ同時に――ドロップした。

「……形が違う」

ドロップしたのは、前とは違う形をした指輪だった。