軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

473.騎士サーの姫

これだけじゃ分からない、もっと色々テストしなきゃ。

ということで、通常弾から鉄壁弾に切り替えて、引き金を引いた。

一発込めただけなのに、さっきと同じように二発の鉄壁弾が打ち出された。

「こっちもふえるもんだな」

つぶやきながら、のろのろと進む鉄壁弾に触れてみる。

すると――驚いた。

これはもう感覚と言うほかない。

イベントにでてきた相撲の力士と組み合った瞬間、何をやっても勝てないのを悟ってしまうのと同じように、この鉄壁弾に触れた瞬間 それ(、、) を悟った。

いける、と。

深呼吸一つ、鉄壁弾をつかんで引っ張る。

「うぐぐぐ……はっ!」

力SSでの全力、なんなら体重をかけるほど(気分的な意味しかないが)全力を出した後、鉄壁弾の進行方向が「まがった」。

かつてはくず弾とも呼んでいて、最近では空間をねじ曲げるほどの直進力を誇っていった「絶対的」なレベルの鉄壁弾。

それが、俺の力だけで方向を変える事ができた。

出来てしまった。

これは衝撃的である。

同時に、ほぼ理解した。

「数を増やす代わりに、効果を弱めるって事か」

火炎弾から蒼炎弾まで、特殊弾を一通り撃ってみた。

どれも例外なく、一発込めて打ち出すだけで二発に変わる。

そしてどれもが、効果がてきめんに弱くなっている。

なるほどな、と思った。

「というわけだ」

シクロダンジョン協会、会長室。

俺は一番無難な、くず弾を打ち出してセルに見せた。

「この指輪をはめていると、数がふえる代わりに、効果は弱くなる」

「なるほど、さすがサトウ様。あっさりとあの亀裂の石の効果を解明するとは」

「解明したのはいいんだけど、使い道がな。それに」

「それに?」

「他の冒険者がやってもドロップするのかが分からない」

セルにはドロップSの詳細は話していないが、長い付き合いで色々共にやってきた事もあって、セルは俺が「普通の冒険者よりもドロップ力が高い」ことは分かっている。

「では、試してみるとよい」

「え?」

「これを」

セルはそう言い、再び、亀裂の石を取り出した。

ついでに券も取り出して、両方テーブルの上において俺に差し出す。

「まだあったのか」

「サトウ様ならばすぐに必要になると思って、ドロップしたものを最優先で確保していた。それでも一つだけだったが」

「結構なレアものなんだな」

「存分に試すがいい」

「ありがとう、試させてもらうよ」

俺はそう言い、立ち上がりつつ、手をセルに向かって差し出した。

セルは微笑み、同じく立ち上がって俺と握手してきた――瞬間。

ゴトッ。

セルの懐からフィギュアサイズの銅像が地面におちた。

「仕事が早いよ! というかほぼ予知レベルじゃないかそれ!」

盛大に突っ込んでしまう俺。

セルが落とした銅像は、格好良くペアでダンジョン攻略している風の。

俺と、マーガレットのペアのものだった。

再びダンジョンに戻ってきた俺は、マーガレットを連れていた。

「悪いな、いきなり呼び出して」

「いいえ。リョータさんのためなら火の中水の中、ですわ」

いつものように、純白の姫ドレスで身を包んでいるマーガレットは、微かに頬を赤らめつつ言った。

セルに「予知レベル」とはいったものの、これがわかりやすく最善なのは確かだ。

マーガレット。

レベル99でありながら、全戦闘能力がFで、全ドロップ能力がAの、極端なステータスの冒険者だ。

自分の戦闘力は悪い言い方をすればカスみたいなものだが、とどめに特化すれば全冒険者中最高のドロップ力を持つ。

更に全ドロップが高いし、全戦闘力がそもそも最低レベルで低いから。

どのダンジョンでも対応できる。

そのとどめに特化するために、彼女はラト、ソシャ、プレイ、ビルダーという四人のニンジャ騎士を連れている。

騎士達は彼女にものすごく忠実だ。

その事を、実情を最近さくらに説明したら。

「騎士サーの姫だね!」

という、身も蓋もない、合ってるんだか合ってないんだかなまとめ方をされた。

そんなマーガレットに微笑みかけつつ、まずはお礼を言った。

「ありがとう。あんたの騎士達は一緒に来てる?」

「来ておりますわ。ラト、ソシャ、プレイ、ビルダー」

「「「「はっ」」」」

瞬間、彼女の向こうに四人の騎士が出現した。

視界の中なのに、いつ現われたのかまったく分からなかった。

相変わらずの神出鬼没っぷり、まるでニンジャだとおもった。

「攻略をまず共有すると、アイテムを使った後、オークの王みたいなのが戦車にのって出現。ある程度ダメージを与えると戦車が壊れてオークキングが降りるけど、その際に範囲効果の即死級ダメージが来る。対処できるかな?」

「造作も無い」

騎士の一人即答した。

残りの三人もそうだと言わんばかりの、真剣な目で俺を見つめた。

「あー……えっと、戦術的に詳細を把握しときたいんだけど」

何せアブソリュートロックの石の絶対防御と俺のSSステータスを貫いてくるほどのダメージだ。

ちゃんと把握しなきゃと思って更に踏み込んで聞いてみた。

「どういう感じでどうやって?」

「我らの姫を敬愛する心をもって事がなる」

「いや、そういうことじゃなく。もっと具体的な技術とか原理とかをね」

「主君に仕える真の騎士であれば、主君にまつわる全てを可能にする」

「我らは真の騎士とはいえぬが、姫は真に主君たり得るお方であり、我らも四人いる」

「半人前も四人いれば不可能などない」

「なるほど分からん」

分からないけど、ものすごい自信――いや確信なのは伝わってきた。

というか、もはや確定事項のようにさえ聞こえてしまう。

すごいなあ。

まあ、それはそうと。

「ならいい。それじゃ――攻撃は全部俺がやる。マーガレット、とどめになったときは合図を送る」

「はい、わかりましたわ」

騎士達はマーガレットの防御に専念してもらうことにした。

彼らが自信満々なのはいいが、なにも分からないからそっちに専念させた方が安心だ。

ざっくりとした作戦がまとまって、俺は券と、加工した亀裂の石を取り出して、使った。

前回同様、戦車に乗ったオークキングが現われた。

リペティションが効くかどうかも気になったが、まずはマーガレットに。

ドロップA(普通のぼうけんしゃ) でもいけるのかを確認するのが先だ。

大ダメージも無効だから、俺は飛び出しつつ、通常弾でチクチクけずった。

幸い、戦車の突進は慣れてしまえばワンパターンだから、適当にあしらいつつ削ることができた。

そして――オークキングが戦車から降りる。

二度目の事だから、アブソリュートロックの石をあらかじめ使って、「くる」直前から回復弾を連射した。

一瞬気が遠のくほどのダメージを負ったが、直後に回復弾で回復出来たから、大した事はなかった。

完全に降りたオークキング、更に通常弾で攻撃しつつ、マーガレットをちらっと見る。

「?」

上品なたたずまいを崩していない彼女。

まるで何も起こっていないかのように、けろっとしていた。

……すごいな騎士たち。

本当にマーガレットの事を守り切ったぞ。

俺は感心しつつ、オークキングを削っていく。

体感でそろそろ倒れそうだな、となると手を止めて。

「マーガレット!」

「分かりましたわ」

マーガレットは大剣を引きずるようにして駆け出した。

お世辞にも大した動きじゃない。

むしろ大剣を引きずっている分ダメっ子感さえある。

それでも彼女は駆け込んで、いつの間にか四肢が影らしき何かで縛られたオークキングの脳天に大剣を振り下ろした。

無抵抗のオークキングに見舞ったとどめの一撃。

それがしっかり効いて、オークキングは倒れた。

そして。

「やりましたわ」

マーガレットは、ドロップした指輪を拾い上げて、花が咲いたような笑みを浮かべるのだった。