軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

45.パーティー結成

シクロダンジョン協会のテントの中で、デュークが大わらわだった。

秘書達に矢継ぎ早に指示をだしてて、必死で何かをしようとしている。

討伐のための冒険者がダンジョンマスターにやられた話を聞きに来ようとしたけど、それところじゃないみたいだな。

しかたない、出直すか――。

「サトウさん!」

指示を飛ばしてるデュークと目が合った、向こうは椅子から立ち上がって、こっちに向かってきた。

「よく来てくれた、連絡をしようと思ってたところなんだ」

「なんか大変そうだな」

「そうなんだ、まさかコンラッド・ファミリーがやられるとは思ってなかったからいろいろ予定が狂ってしまってね」

「コンラッドって、あの四人組の事か?」

「知ってるのか?」

「昨日ちらっと見ただけだ」

「そうか」

デュークが頷き、おれにもそうするようにジェスチャーで示しつつ、ソファーに座った。

向かいにすわって、改めて話を聞く。

「今の状況はどうなんだ?」

「本部に連絡して新しい救援をよこしてもらう様にしてる、けど、ヘテロ側からチャチャが入ってる」

「チャチャ?」

「ここは慎重に行くべきだ、新しく生まれたダンジョンの新しいダンジョンマスター、犠牲を出さないためにも慎重に行くべきだ、と」

「……チャチャっていうからには、それはよくない考えなんだな?」

「……ダンジョンマスターは生態を変える」

デュークが苦虫をかみつぶした様にいう。

「ただ強いだけの魔物じゃない、長く存在し続けてるとダンジョンのモンスターの生態……種類そのものを変えてしまう事がある。だからマスターと名付けられたんだ」

「種類を変えるって?」

「階層ごとのモンスターが違うものに変わるんだ、それまでとまったくに別物に。もちろんドロップも変わる」

そこまで聞いて、やっと理解した。

「レアモンスターも?」

「そう、レアモンスターもだ」

「なるほど、ヘテロからすれば長く暴れてもらった方が都合がいいわけだ。うまくすればシクロになりかかってるのをひっくり返せる、最悪でも現状のまま」

デュークが重々しく頷く。

「それで、チャチャの内容は?」

「次の討伐はシクロとヘテロの共同編成にしろと」

「邪魔をする気満々だな」

「足を引っ張るだけでいい、いやこっちの人選が決まらないと口笛を吹いてればそれでいい」

……最悪だな。

「討伐隊じゃなくて、冒険者が自発的に行くってのはだめなのか?」

「そっちにも注文を出してきた」

「注文?」

「冒険者は最低三人以上、能力はなにかA以上、かつ全員が自発的に行く。人数も能力も、討伐隊が返り討ちにされた事を考えれば妥当だが、ここに出稼ぎに来てる人間は例外に洩れず安定志向だ、自発的にダンジョンマスターを倒しに行くのは期待出来ない」

「人数が多い方がいいのはわかる、最低三人という根拠は?」

「……サトウさん対策だ」

「え?」

「サトウさんが出てくるのを向こうは予想してた。だから人数に制限をつけたのだ」

「おれ対策……エミリー……」

「そう、サトウさんが二人組で来た事を向こうは知っている。そして今のセレン周辺で冒険したがる冒険者がいないことも承知している。周回型の冒険者は能力が高くなればなるほど慎重になっていくのだ。最初は格上のモンスターを相手にしていたのが、駆け上がった頃には2ランク下のモンスターに安定をとることもざらだ」

「……」

「このセレンで、能力がAの冒険者でいきたがるものを見つけるのは……」

デュークはそう言って、深々とため息を吐いたのだった。

テントを出て、何人かの冒険者に声をかけてみた。

何日も通ってるとある程度互いに顔が知れるようになる。

特に買い取りを多く持ち込む――実力者の顔はなおさらだ。

そういう冒険者に声をかけて、ダンジョンマスター討伐を持ちかけてみたけど。

全員、すげなく断った。

言葉の端々から安定志向がにじみでてる。ダンジョンマスターなんてそのうちシクロかヘテロが討伐してくれるだろう、というのが大半だった。

悪意を感じた。

三人なら入れる、おれとエミリーがいるから、もう一人見つければいい。

一人だけなら何とかなる――と思うところ駆けずり回って、一人も見つからない。

冒険者の習性はそれほどにつよい。

ダンジョンが全てのものをドロップするこの世界では、周回する冒険者は実質「生産者」だ。

呼び名の割りにはみな冒険をしたがらない、安定をとる。

数百人いるが、一人も見つからない。

おれ対策というよりは、おれに対する嫌がらせに感じてきた。

ピンポイントでおれに嫌がらせしてきてる。

デュークの複雑そうな表情を思い出す、向こうもこれを分かってたんだな。

「はあ……」

「なにをため息ついてるのかな」

「どわ!」

いきなり耳に生暖かい息が吹きかけられて、盛大にびっくりした。

飛び上がる位びっくりして、距離をとって振り向く。

そこに予想外な男がいた。

「ネプチューン!」

「やあ、久しぶり。元気だった」

ホモ疑惑の優男、ネプチューンがなぜかそこにいた。

背後にこれまた見た事のある、シリルとランの二人の女がいた。

「あえてよかったよ、ねえ、今夜時間ある?」

「時間ないしお前とは絶対に『今夜』とかはない!」

「あはは、つれないなあ。将来の仲間に向かってひどいや」

「仲間になんかならないぞホモ野郎――仲間?」

目の前に救世主が現われた気がした。

「なあ、一日でいいからパーティーを組んでくれ」

おれはネプチューンに頼んだ。

彼なら能力は申し分無しだ、力Sのおれと打ち合える、Aはある人間。

それにニホニウムダンジョンが生まれた時も最初の探索に入ったから、完全に安定志向って訳でもない。

彼なら、条件を満たしている――。

「それがね」

ネプチューンは残念がった。

「ぼくはシクロダンジョン協会の正式な依頼を受けちゃってね、向こうの同行者待ちの状態なんだ」

「なっ――」

「本当残念だよ。もうちょっと遅れてきて、到着報告する前にキミに会いたかった」

ネプチューンはものすごく残念がって、ちらっとおれをみた。

ずぞぞぞぞ、と背筋が凍って尻に思わずきゅっとしまった。

身の毛がよだつほどの恐怖、同時に、彼は期待出来ないと理解した。

一瞬だけ現われた光明が、潮が引いていくかのように消えて行った。

エミリーのテントに戻ってくると、外からでも分かるくらい、中が何故かバタバタしていた。

どうしたんだろうと思っていると、エミリーが出てきた。

「あっ、おかえりですヨーダさん」

「ただいま。何をしてるんだ?」

「ダンジョンに行く準備なのです。ダンジョンマスター討伐の準備なのです!」

「すごいなエミリーは、おれが何も言わなくてもそうしてくれて」

相変わらずだと思い、おれは苦笑いした。

「でもごめん、今回はただ働きさせてしまった。実は三人じゃないとダンジョンに入れないんだ」

「はいです、それも聞いてるです」

「? 聞いてるならなんで――」

エミリーの笑顔に不思議がっていると、テントからもう一人出てきた。

綺麗な髪の長身美女、セレストだ。

「わたしもいくわ」

「セレスト? え、ゴミは――」

パッと振り向く、いつものゴミの山のあたりに、数人の冒険者がいた。

冒険者は楽しそうに世間話しながら、ゴミの山を焼いている。

「わたしの給料をわたすといったら、みんな快く引き受けてくれたの」

「……安定志向だなあ」

おれが人捜しに苦労した分、セレストは簡単に見つかったんだろうなと思った。

ゴミ処理なんて、安定も安定、ド安定もいいところだ。

代役を見つけるのは簡単だっただろう。

それはいんだけど、とセレストをみる。

「でもいいのか、ダンジョンなんかに」

セレストは何故か赤面しつつ、近くにある――出稼ぎが多いこの期間であっちこっちに設置されてるナウボードを操作した。

―――1/2―――

レベル:21/54

HP D

MP C

力 E

体力 F

知性 A

精神 A

速さ E

器用 F

運 C

―――――――――

―――2/2―――

植物 F

動物 F

鉱物 F

魔法 F

特質 F

―――――――――

セレストの能力をはじめて見た、一ページ目はいかにも彼女らしく、二ページ目はさりげなく冒険者じゃなくゴミ処理をしている理由を物語っていた。

「一緒にいきたい」

セレストはそう言って、ますます頬を染めて、おれをまっすぐ見つめて。

「リョータさんの力になりたい」

思わず、胸がキュンとした。