軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

434.精霊部屋の品種改良

「あるにはあるんだけど……」

こっちが全員そろって盛大にびっくりしているのをみて、カーボンは申し訳なさそうに気持ちうつむいてしまった。

「見た目だけ、だよ」

「見た目だけ?」

「うん」

「とりあえずやって見せてくれるか?」

「わかった。バナジウム、ちょっとだすよ」

カーボンはバナジウムにあらかじめ断った。

この場所はバナジウムダンジョンの中だからある意味当たり前の行動だが、なんとなくちょっとおかしかった。

俺がそう感じていることもしらず、カーボンはパチンと指を鳴らして、モンスターを呼び出した。

カーボンダンジョンの外で誕生した時からハグレモノ扱いだが、能力はそのまま。

呼び出されたモンスターは、たちまちカーボンの姿に変化した。

ハグレモノは通常に比べて凶暴化するのが当然だが、そこはニホニウムと同じで、主たるカーボンがいるから動きが完全に制御されている。

「そっくりね」

セレストが感心げにつぶやいた。

モンスターが化けたカーボンは本人そっくりだった。

今までもカーボンダンジョンでいろんなモンスターが化けたのをみてきた俺たちだが、目の前で化けられるとやっぱりそのそっくりさに感心するものだ。

「りょーちんも能力はリョータそっくりだけどね!」

「なにはりあってんだか」

いきなり主張してくるアリスに微苦笑して、カーボンに化けたモンスターを改めて観察。

「本当にそっくりだな。これ、能力はないのか?」

「ないよ。もっというとこれ見た目だけ」

「うん?」

「うごかないんだよ」

「え? それはカーボンがいるからじゃなくて?」

「ちがうよ。変身したら動かないんだこれは」

「マネキンってことか」

「アルセニックみたいなのです」

エミリーの感想に、俺たちはみな次々と頷いた。

アルセニックダンジョン。

そこにあるのは全て岩系のモンスターで、まったくうごかない、世界で一番安全なダンジョンだ。

それと同じで、このマネキンも動かない。

「だったら、話は簡単だ」

おれが言うと、仲間達は全員、一斉にこっちを見た。

「改良すればいいんだ」

次の日、カーボンダンジョン精霊の部屋。

セルにいって、今日一日ダンジョンから冒険者を閉め出してもらった。

もともと、俺に「夜も稼げるようにしてくれ」っていう依頼が来たようなものだから、申し出は実にあっさりと通った。

そうして、冒険者がいなくなったカーボンダンジョン。

精霊の部屋には俺と、カーボンと、ミーケと、そしてホネホネ。

「アリスはオーケー?」

聞くと、ホネホネは頭の上で「○」をつくった。

「よし、じゃあ始めようか」

「うん!」

「わかりました」

頷くカーボンとミーケ。

カーボンが手をかざすと、精霊の部屋の空気が変わった。

ダンジョンマスターが現われる。

そいつはすぐさま俺の姿に変化した――が、今回はカーボンが こっち側(、、、、) だから攻撃はしてこなかった。

しばらく待って、リペティションを唱えて倒す。

「どうかなカーボン」

「ちょっとまって」

カーボンが更に手をかざす。

モンスターが現われて、今度は彼女の姿に化けた。

それをカーボンはしばし見つめて、隅から隅まで観察してから。

「うん、初めての子だよ」

「よし。ならミーケ、頼む」

「分かりました!」

頷いたミーケ、カーボンの手を取って、部屋の少し離れた所にある光の渦に飛び込む。

残されたカーボンの姿をしたモンスターを眺めて、しばし。

「ホネホネ、アリスの方はどうだ?」

ホネホネはクビを振って、頭の上で腕をクロスさせた「×」を作る。

「ダメか」

そのまま更にしばらく待って、「約束の」五分後。

転送ゲートがひらいて、ミーケとカーボンが戻って来た。

「どう?」

「ダメだった。難しいな」

「大丈夫、これも試練だから!」

カーボンはまったくめげた様子なく、むしろ更に乗り気になった。

プランはこうだ。

カーボンは自分のダンジョンのことは自由に操作できる。

そしてどうやら、精霊達が出せるモンスターは「存在したことのある」モンスターだけ。

と言うことで、精霊の部屋には、彼女の姿に化けられるモンスターが出るように設定した。

ちなみに最大数は1、これも精霊が自由に設定出来るものだ。

そうやって設定した部屋で、ダンジョンマスターを出して、品種改良する。

彼女でも初めてみるモンスターになったら、変身して、ミーケと一緒に一旦バナジウムのダンジョンに退避する。

その間、変身したモンスターが精霊の代わりになるかどうか、カーボンの通常フロアにいるアリスに見てもらった。

こっちにアリスで向こうにホネホネたちという配置じゃないのは、アリスならダンジョン内のモンスターの居場所――つまりいるかどうかを、探し回らなくても分かるからだ。

それを仲間モンスターとのテレパシーを使って、ホネホネに伝えて、俺に知らせた。

そうして一回目の改良は、失敗に終わった。

「よし、どんどんいこう」

「うん!」

カーボンがダンジョンマスターを出した。

まってる間に、俺は∞回復弾を注射のごとく自分に撃ち込んで、MPを最大値まで回復する。

空気を読む、

リペティションでダンジョンマスターを倒す。

新しいモンスターがカーボンに化ける。

カーボンとミーケがバナジウムに退避する。

ホネホネに聞く。

今度も「×」だった。

カーボンが離れると通常フロアにモンスターは生まれない。

戻って来たカーボンとミーケに向かって。

「次行こう」

「うん!」

空気を読む、

リペティションでダンジョンマスターを倒す。

新しいモンスターがカーボンに化ける。

カーボンとミーケがバナジウムに退避する。

ホネホネに聞く。

……。

…………。

………………。

空気を読む、

リペティションでダンジョンマスターを倒す。

新しいモンスターがカーボンに化ける。

カーボンとミーケがバナジウムに退避する。

ホネホネに聞く。

延々と、そのことを繰り返した。

繰り返せば繰り返すほど、カーボンは元気になっていった。

試練を乗り越えている、と言うのが本人のメンタルに好影響を与えている。

そして、何度目から分からないテストの果てに。

ホネホネから、「○」のサインがでた。