軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

42.闇討ちを返り討ち

テントの中、上機嫌なデュークと向き合っていた。

「本当にありがとう、サトウさんのおかげでセレンはほぼほぼシクロのものになりそうだ」

「役に立ててよかった」

セレンに出張してきた仕事を果たして、おれはホッとした。

「いま、本部でサトウさんへの報酬を検討してて、多分三つくらい来ると思います」

「三つ?」

「セレンのドロップ買い取り、サトウさんが税金免除になること」

「それは聞いてる」

出発する時に提示された。

「それと多少だけど、現金での報酬も出ることになります」

「そうか」

妥当なラインだ。

「ダンジョン長は上質な砂糖一年分を用意しに走ってるとのことです」

「そんなにいらないよ!?」

砂糖一年分とか。

「……ちょっとまって、その砂糖一年分て何の基準なの?」

「……」

デュークは目をそらした。

「あの人の基準じゃないよね? あの人の基準じゃないよね? あの人の基準じゃないよね?」

「……わたしの口からはとても」

大事な事なので思わず三回言った、そしてデュークは目をそらした。

やっぱり……あのダンジョン長基準の一年分なんだ。

大量な砂糖を押しつけられそうで、おれはちょっとうげげ、ってなった。

テントを出て、エミリーのところに戻ろうとする。

これでセレンでやる事は終わり、もうちょっとここにいるのか、それとももうシクロに帰るか。

エミリーと相談して決めようと思った。

セレンのまわりは相変わらず賑やかだ、むしろヘテロから呼ばれてきた連中が、邪魔する意味をなくして普通のドロップ――生産するためにダンジョンにこもり始めたから、更に賑わったと言っていい。

ダンジョンに潜る冒険者、それをサポートするもの達、そして商品を売りつけて儲けようとするもの達。

ざっと数えて千人単位で、ちょっとした街くらいに賑わっていた。

そうだ、もし帰るのなら、いつもお世話になってるエルザとイーナになんかお土産を買ってってやろう。

そのための行商人が数多くいるから、品物選びには困らないはずだ。

それならもう何日かここにとどまって、稼いでから戻ろう。

そうやって色々考えてあるいてる内に、ふと異変に気づく。

賑やかだったまわりから人の気配が消えた。

いや、完全に消えた訳じゃない。

雑踏としての空気が消えたのだ。

その代わり囲まれた。

あきらかに敵意を持った相手にくるりと囲まれた。

五メートルくらい離れた距離で、くるりとおれを取り囲む男達。

人相が悪くて、おれをにらみつけている。

ざっと……二十人はいる。

「なんのようだ」

「悪く思うな」

おれの真っ正面にいる、前歯の欠けた男が答えた。

「お前さんをちょっと懲らしめてくれって頼まれてな。なあに命までは取らねえ、やり過ぎたお仕置きに腕をちょっとへし折ってしばらく働けなくしてやるだけだ」

「……ヘテロか」

「お前さんに仕事を奪われた連中の恨みだよ」

なるほど、そういうことか。

多分ヘテロが呼びつけた冒険者たちで、おれのせいで仕事がなくなって……多分金も払われなくて、それで恨んで闇討ちにいたった、ってことか。

気が進まないけど、降りかかった火の粉は払わないとな。

銃を抜いた瞬間、男が手をあげた。

次の瞬間、おれのあしもとから魔法陣が広がった。

「これは?」

「お前さんの戦い方は分かってる。それで飛び道具をうちだすんだろ? これは飛び道具を無効化する魔法陣だ」

「飛び道具を?」

「魔力嵐の様なものさ、人工的に作られたもののな」

魔力嵐、天候のようなもので、それが来てる時は魔法が使えない現象の事。

それを人工的にやって、飛び道具を使えなくしてるのがこの魔法陣か。

「念入りだな」

「ふっ。おまえら、やっちまえ!」

男が号令をかけると、おれを囲む男達が一斉に襲ってきた。

銃をしまった、そして拳を握った。

最初に飛び込んでくる男の攻撃を躱して、殴り飛ばす。

男はきりもみして吹っ飛んでいった。

「なっ!」

絶句するリーダーの男、こんなの聞いてない、って顔だ。

「そういえばおれはセレンに来てほとんど銃しか使ってなかったな」

「ど、どういう事だ?」

「効率さえ気にしなければ」

地を蹴って踏み込んで、男の懐に潜る。

そしてちょっと手加減する事を意識して、ボディブローを放つ。

男の体が「く」の字に折れ曲がって、がはっ、と胃液を吐いた。

「銃を使わない方がおれは強い」

ニホニウムの種で育てた、力Sに速さAだからな。

リーダーが倒れて、悶絶するのを見て。

男達は逆上して、一斉に襲いかかってきた。

パワフルで、スピーディーで。

基礎能力に任せて、男達を次々と倒して行く。

手加減もわすれない。

モンスターは倒してドロップさせるが、同じ人間はそこまでする必要がない。

戦闘能力を奪えばいいだけだ。

そうして五分もしないうちに、魔法陣の上に男達が一人残らず倒れていた。

「ばか、な……」

うめき、悔しがる男達。

全員がどこかしら押さえて、のたうち回っている。つらそうだ。

こいつらに別に恨みはないから、おれは銃を取り出した。

魔法陣がまだ地面で輝いてる、が、それは障害にならないと確信してる。

弾をこめて――リーダーの男を撃つ。

弾丸が飛び出す、ダメージを負って動けないリーダーの男は抵抗出来ないまま撃たれた。

白い光が男を包む。

撃ったのは回復弾だ。

飛び道具無効の魔法陣の中で、おれは、たおした男達全員に回復弾を撃ち込んだ。

魔力嵐同様、この魔法陣もおれの弾丸を無効化することは出来ない。

あっちこっちが白い光でつつまれ、男達は回復していく。

全員が一瞬で回復して、何がおきたのか理解できなくて戸惑う。

「飛び道具を使える……お前さん一体……」

言葉を失うリーダーの男。

最後にもう一脅し――そう思って地面に消滅弾を撃ち込んだ。

飛び道具無効の魔法陣のど真ん中に消滅弾を撃ち込む、そこに発動する何かがあったようで、消滅弾にえぐられて、魔法陣は音もなく消えて行った。

「おれにこういうのは効かない。そして」

銃を突きつけ、まわりをぐるっと見回す。

「つぎはない」

と脅した。

男達はこくこくこくと、壊れた人形のように首を縦に振ったのだった。