軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

419.バイコーンホーン+9

テルルダンジョン、地下二階。

俺はバナジウム、そしてアリス、イヴの三人と一緒にここにやってきた。

長く通い続けたダンジョン、構造はよく把握している。

フロアの一番奥まった袋小路になっているところ、モンスターの発生もなく、普段は誰も来ないような所にやってきた。

途中でついでに眠りスライムを一体、拘束弾で捕まえて連れてきた。

「じゃあアリス、頼む」

「うん、任せて」

袋小路の一番奥に眠りスライムを置いて、離れる。

「ホネホネ、プルプル」

名前を呼んで、ビシッと眠りスライムを指さすアリス。

直後、その肩から二体のモンスターが飛び出した。

スケルトンのホネホネと、スライムのプルプル。

可愛らしい二体は眠りスライムに向かって行って、たこ殴りにした。

あっという間に眠りスライムは倒されて、そこそこのニンジンが一本ドロップ。

ニンジンをその場に置いたまま、ホネホネとプルプルが引き上げて戻ってくる。

そのニンジンをじっと見た。

俺たちに距離を取られたニンジン、俺の目には99%、98%、97%……と減っていくように見える。

それが0%になったのと同時に、ニンジンから眠りスライムが孵った。

「アリス」

「うん! 二人とも、もう一回!」

アリスの号令で、なんとなくヒャッハー感を出しつつ、向かっていくホネホネとプルプル。

今度は拘束弾はなかったが、それでもあっさりとたこ殴りで倒した。

すると、再びニンジンがドロップした。

「それ拾って戻って来て」

アリスがいって、ホネホネとプルプルがエッホエッホって感じでニンジンを運んで戻って来た。

それを受け取って、俺に見せるアリス。

「どう?」

「ああ、90%だ。それ以上行かない」

「そか。イヴちゃん、味は?」

アリスはそのままニンジンを待機しているイヴに渡す。

受け取ったイヴは「バリィ!」という、いつ聞いても「そうはならんやろ」と突っ込みたくなる音を立ててニンジンをかじりだした。

「ちょっと美味しい」

「なるほど」

「まっ、これはわかり切ってる事だしね」

アリスはニコニコしながらちょこっとだけ肩をすくめた。

ドロップアイテム転生のテストのためにここに来たおれが、アリスとイヴに協力を頼んだのには訳がある。

アリスはダンジョン生まれの特殊能力で、実際のステータスとは違って、「ドロップするタイミング」が見えるから、品質こそそこそこだが、ドロップ率はほぼ百パーセントだ。

百パーセントなのはテストしやすいし、品質もそこそこなら上昇したかどうかわかりやすい。

そして品質が上がったかどうかは、ニンジンに一切妥協しないニンジンソムリエのイヴに頼んだ。

これが俺なら、微妙に上手く行かなかったと思う。

こっちに来るまで毎年見ていた新年特番を思い出す。

あれを見てずっと思ってる事が一つある。

498円と5000円のワインの違いははっきりわかるだろうが、5000円のとン十万円のはそんなに違いはないんじゃないかと。

そういう意味で、品質そこそこでドロップ100%のアリスに頼んだ。

「もっとやってみよう」

「うん!」

別の眠りスライムを捕まえてきて、袋小路に閉じ込める。

倒して、孵して、倒して――を繰り返す。

それではっきりした。

街で見かけた五回転生の熟成肉が50%なのと同じように、ニンジンも一回転生する度にハグレモノ度(俺しか見えない数字なので仮に名付けた)の最高値が10%下がる。

四回目の転生で、孵った眠りスライムを見てアリスが声を上げた。

「あっ」

「どうした?」

「ダメっぽい、あたしじゃドロップする瞬間をつかめきれない」

「……スロットの回転が限界を超えたか」

初めて聞いた時から思っていた。

アリスのそれはいわばスロットの目押しをしているようなものだ。

アリスの能力でも4回でぎりぎりなのだから、5回転生熟成肉が「年に一回くらい」の頻度になるのも頷ける。

普通の冒険者が精霊と会うのと同じくらいの低確率かもな。

「大丈夫、それは予想してた。後は俺が引き継ぐ」

「ごめんねー」

「いいさ」

「あっ、ちなみにちょっとずつ強くなってるからね」

「そうなのか」

銃を抜いて、通常弾で眠りスライムを撃ち抜く。

なるほど、実際に戦ってみると分かる。

銃口を向けた時の反応がノーマルの眠りスライムに比べてちょっと早い。

それでも所詮は眠りスライム、すぐに修正して撃ち抜いた。

ニンジンがドロップ、5回転生だ。

「おー、さすがだねリョータ」

「続けていくぞ」

宣言してから、ニンジンをくり返し転生させる。

五回、六回、七回、八回、九回。

ドロップSで、いわば全てが当たり目のスロットを回している俺は、難なく九回転生ニンジンを作った。

ハグレモノ度は想定通りの10%、遠距離で倒したのですぐに減り始めたから、慌てて近づいて拾い上げた。

「10%か……もう一回いったらどうなるんだ?」

「やってみようよ」

頷き、ニンジンを元の場所に戻して、ハグレモノになるのを待った。

九回転生でハグレモノ度10%のニンジン、すぐさま眠りスライムに孵った。

それを撃ち抜き、ドロップさせる――瞬間。

ニンジンが一瞬見えたあと、すぐに眠りスライムになった。

「0%かー」

「0%だね」

それを見た俺とアリスが頷きあった。

これも想定していたパターンの一つだ。

だから俺もアリスもなるほどとばかりに頷いたのだ。

「ニンジン……」

イヴが、ちょっと切ない顔をした。

一瞬だけ見えたのは幻の十回転生ニンジンだ。

俺はもう一度銃を構えて、ポーチを取り出す。

このポーチは、ドロップした瞬間、アイテムをこのポーチに吸い込む能力を持つ。

それを持って、眠りスライムを撃ち抜く。

眠りスライムが倒され、一瞬だけニンジンの姿が見えたあと、ポーチが膨らんだ。

ニンジンがあった。

それを取り出してみると。

「どう?」

「0%――あっ1%だ」

取り出した瞬間は0%だった10回転生だか11回転生だかのニンジンは、最初こそ0%だったのが、持ってる間に1%になった。

しかし、1%から先は伸びない。

「1のままだ」

「それが限界ってことだね」

「そうだな」

「低レベル、ウサギにニンジンを」

「そうだったそうだった。ほら」

ニンジンを差し出す。

一瞬たりとも触れない期間を作らないように、イヴが受け取ったのをちゃんと確認してから手放す。

イヴは早速ニンジンをかじる――。

「わわっ! ど、どうしたのイヴちゃん、真顔でものすごく大号泣してるよ」

「……低レベル」

「うん?」

「ウサギ、低レベルの子になる」

「そんなに美味しかったのか」

「ウサギを好きにしていいから、もっとニンジン」

「すごく美味しいんだね」

「みたいだな」

さて、これでだいたい分かった。

ハグレモノ度のおおよその仕様が。

これを何かに活用できないもんか、と考えつつ、今し方撃った分の通常弾を込めなおす。

「ん」

「どしたの?」

「いやこの銃弾、そんなにないけど、一部だけ90%だ」

「へえ……あっ、たまにリョータやってんじゃん、銃弾からもスライムに戻して、もう一回銃弾にするの」

「ああ、あったあった」

言われてみれば確かにそんな事もしていた。

かなり初期の頃に。

それ以来は必要性がないのでしてないからまったくしてないが、その頃の名残なんだろう。

まっ、分かればどうという――。

「この弾も良くなるのか?」

「撃ってみればわかるじゃん?」

「それもそうだ」

二丁拳銃を構えて、両方とも通常弾を装填。

片方はハグレモノ度100%の通常弾、もう片方は90%の 一転(、、) 通常弾。

その二つを同時に壁に向かって撃つと。

「ああ、微妙にちょっと強いな」

「本当に微妙いね」

「これは……わざわざやるほどじゃないな。消耗品だし手間を考えると」

「だね。あっ、でもでも」

アリスは何かを思い出して、俺に耳打ちした。

「おお」

アリスの提案はすごく魅力的だった。

夜のサロン、皆が集まっている前で。

セレストは二本のバイコーンホーンを同時に使って、炎の玉を撃った。

片方はいつも通りの炎の玉を打ち出した――かと思えば、ちょっと遅れて打ち出されたもう片方の炎の玉は、ものすごく大きくて、最初の炎の玉を飲み込んだ。

きょとんとするセレスト、「おぉ」と微妙に感動するギャラリーの仲間達。

「す、すごい。リョータさん、これすごいわ!」

セレストは俺が渡したバイコーンホーン――九回転生のやつを持って、小躍りする位驚いた。

消耗品の弾は手間を考えたら意味ないけど、バイコーンホーンは違う。

アリスの提案で作った九回転生――いや。

バイコーンホーン+9と頭の中に浮かび上がったその名前のアイテムで、セレストはさらに強くなった。