軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

407.ファミリーの本気

カーボンダンジョンの外。

一旦地上に出た俺たち。それなりの数の冒険者が残ってて、遠巻きに見守っている中、今後の状況を話しあった。

「君はこれから本拠地に帰るんだろ」

「ああ」

ちらっとバナジウムを見た。

いつも通り俺のズボンを掴んで、キョトンとした顔で見上げてきたバナジウムと目があった。

「 何も起こらなかった(、、、、、、、、、) けど、ひとまず退散するよ」

「そうだね、その方がいいね」

「それ甘過ぎなんじゃない?」

リルがネプチューンの背後から不満をぶつけてきた。

「それはちがうよ、リル。もちろん彼が優しいのもあるけど、あえていやな言い方をすればね、爆弾なんだ、その子は」

「爆弾?」

「精霊だからね。人間のパニックに相当する状況になった時、なにが起きるのか想像もつかないね」

「だったらおいてくれば――」

「それもリスキー」

ネプチューンは先回りした。

そう、置いてきても、それはそれで良くない事に発展する可能性が。

今のバナジウムは子供だ。

普通の子供のようにぐずっただけでも大ごとになる可能性がある。

もちろん、それはバナジウムが悲しいからって事だから、避けたいんだけど。

「……そう」

不承不承ながら、納得したリル。

彼女を宥めたネプチューンはトレードマークの笑顔を浮かべたまま俺に振り向いて。

「それじゃあ後は僕たちに任せて。一旦他の冒険者から情報を聞いて、僕たちの調べた分とまとめる」

「入り口が消えた時の事も頼む」

「もちろん」

はっきりと頷くネプチューン。

俺たちはすんなりと入って、すんなりと出られたが、今回の一件で一番やっかいなのはダンジョンの入り口の消失だ。

それが一番必要な情報だ。

「それさえ分かれば、後は」

「そうだねえ、ただ」

「ん?」

「上手く行けばいいんだけどねえ」

ニコニコ顔で話すネプチューンは、何かが見えている、そんな風に見えた。

夜、新屋敷のサロンで。

仲間達が帰宅して、集まった後のまったりタイム。

今日の事を、セレストが他のみんなに話していた。

「私を認識した瞬間、狂気がすぅ――と消えていったの。セレストがいる、じゃあリョータも来る、そっかだったら安心だ。ってね」

「すごーい! 何それ、その現場見たかった」

「さっすがだね-」

仲間のうちでも、一番食いついたのがアリスとアウルムのコンビだった。

エミリーは戻って来たセレストにほっとしたような穏やかな笑顔を浮かべていて、イヴはいつも通り我関せずニンジンをかじっている。

自分のダンジョンの中だからか、安心感に包まれたバナジウムは俺から離れて、ニホニウムのそばで何かをしている。サクヤもそこにいるが、直接接触しなければ平気のようだ。

「あたしも見たいから、も一回人間達が閉じ込められないかな」

「アウっちは自分のダンジョンでやればいいじゃん。ダンジョンの変形で絶対に出口にいけないようにすればオッケーだよ」

「その手があったか!」

「いややめて」

アリスのろくでもない提案に乗り気なアウルム。

本気でやりかねないから、先回りして止めておいた。

「えー、でもみたいじゃん」

「なんでまたそんなに」

苦笑いする俺。

「そりゃ、『あたしたちのリョータ』が人気な所を見たいじゃん」

「『おらが村の世界一』ってヤツ?」

アリスとアウルムは本当に意気投合して、それっぽい理由を仕立てあげてきた。

「分からないでもないけど、本当にやめてな」

「はーい」

「ちぇー」

俺に言われて、渋々引き下がるアリス・アウルムコンビ。

これだけ言っとけばとりあえず大丈夫だろう。

俺はセレストの方を向いて。

「そういえば、セレストは地下何階までいってたんだ?」

「三階まで降りたわ」

「本当か? じゃあ後で転送部屋の開通、手伝ってくれ」

「いいけど……三階程度で?」

「二階は出来れば経由したくないんだ」

そういい、ちらっとバナジウムを見る。

それで訳ありだと理解したセレストは頷いた。

「わかったわ、お安いご用よ」

「ありがとう」

「明日も行くの?」

「ああ、早めに全貌解明した方がいいと思ってね」

「わかった、じゃあ――」

セレストが何か言いかけた時、バナジウムが飛んできた。

ニホニウムの所から駆け寄ってきて、俺に抱きついた。

「どうしたんだ?」

「……(ぐいっ)」

バナジウムは俺にしがみついたまま、服を掴んで、上の方に引っ張った。

上――地上。

そこをさして不安そうな表情に戻るバナジウム。

「誰か来たのか?」

「……(こくこく)」

「エミリー」

「わかったなのです」

エミリーがサロンを出て、訪客の正体を見に行った。

しばらくしてエミリーが苦い表情で戻って来た。

「ヨーダさん……」

「どうした」

「カーボンがまた閉じたです」

「え? どういうこと?」

「ヨーダさん達が無事戻ったのです、もう大丈夫って思ってカーボンに何組も冒険者がはいったです、それでまた閉じちゃったです」

「……そうか」

「功を急いだわね」

セレストはため息を吐いた。

「助けに行くの?」

「そうせざるを得ないだろ」

「だったら明日まで待って。今いっても、多分中の人達は閉じ込められたとすら気づいていない可能性が高いわ。半日も経っていないし、それに何組かと言う程度だから、噂は拡散しないしね」

「なるほど」

「人数はすくないし、一晩程度ならどうもしない人達だから、懲らしめるためにもほっときましょう」

セレストの提案を少し考える。

そうだな、数が少ないのなら、パニックの可能性はそれこそゼロだし。☆持ち冒険者なら一晩くらいは大丈夫だろう。

「それより、今後も先走る人が出ないように一計を案じたのだけれど」

「へえ?」

提案するセレスト。

その言い方に興味をもって、俺たちはセレストの提案に耳を傾けた。

翌朝、カーボンダンジョンの外。

朝食のあと、転送部屋であえてセレン一階を経由してやってきた俺たち

俺と、エミリーと、アリス。

そしてセレストに、イヴ。

おまけで俺にくっついてるバナジウム。

それを見た、カーボンの周りで様子見している冒険者達がひそひそ言い出した。

「おい、あれみろよ」

「リョータファミリー総出じゃないか」

「そこまでやっかいなのか?」

「今までで一番だぞあの感じは」

周りの会話を聞きながら、俺は感心した顔でセレストを見た。

セレストは得意げな顔で微笑んだ。

彼女の「一計」とは、リョータファミリー冒険者組総出でカーボンに入る事。

冒険者達が再突入したのは、カーボンを舐めているからだ。

それを無くすためには、「あのリョータファミリーでさえ本腰になった」と言うのを見せるのが効果的だとセレストは言う。

上手く行くのかと半信半疑だったが、効果は絶大のようだ。

俺たちは前もって打ち合わせたとおり、真剣な顔を最後まで保ったまま、カーボンの入り口を再びこじ開けて、冒険者達に見守られる中ダンジョンに突入していった。