軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

395.いつもあなたの事を考えてる

夜のサロン、仲間達が帰宅した後に集まる、賑やかな一時。

「リョータと! エミリーの! 合体クッキングー!」

アリスが盛大に、何かをお披露目するって感じで盛り上げる。

前もって打ち合わせして、エミリーが用意してくれたスープに、俺は銃口を向けて引き金を引く。

次の瞬間、スープが器ごと炎上する。

「あら、不思議な炎なのね」

瞬間に異変に気づいたのはセレストだった。

炎の魔法にかけてはファミリー随一、それどころか全冒険者の中でもかなりのエキスパートの彼女がすぐに気づいた。

冷炎。

人肌よりもちょっと高い程度の炎だと、見てすぐに気づいた。

「触ってみて」

「ええ……温かいのね」

分かっているからか、セレストはまったく躊躇することなく、炎上している器に触れた。

「燃えるスープ、なんか格好いいでしょ」

「格好いいのかしら?」

「スープもいいけど、それならお酒のほうが良くない?」

指摘したのはアウルム。

漆黒のドレスに頭から生えている角。

魔族のお姫様、な感じの出で立ちの精霊はここぞとばかりに幼げな顔に老成な笑みを浮かべた。

「燃える酒で月見の方が絶対風流だよ」

「あら、いいわね。エミリー、ぬる燗をもらえるかな?」

「はいです」

イーナがアウルムに同調して、エミリーがパタパタと厨房に走った。

ほとんど待つことなく、エミリーがトレイにぬる燗の銚子とおちょこセットを載せてかえってきた。

「ヨーダさん」

「ああ」

火炎弾と冷凍弾を詰め直して、冷炎をおちょこに打つ。

そこにエミリーが酒を注いで、アウルムとイーナが貰って口をつける。

ドレス姿のアウルムと濃厚な大人の色気を放つイーナ。

「二人とも、圧倒的な強者感を出してるな」

「あたしの言ったとおりでしょ」

「これ、良いわね、やみつきになりそう」

二人は満足げに燃える酒を飲んだ。

料理の中には高い度数のアルコールをあえて使って、火をつけてアルコール分を飛ばすことで完成をみるものもあるが、それとはまた一線を画す良さがあるみたいだ。

アウルムとイーナが大人な味を楽しんでる一方で、セレストは俺の手元を、握っている銃をじっと見つめた。

「今二つの弾を込めたわよね?」

「ああ」

「融合弾とはちがうのね?」

「違うみたいだな」

「他にも組み合わせられる物はあるの?」

「一通り試したけど、これが一番面白かった」

俺はそう言って、加速弾を二発取り出して、バナジウムの弾に装填して、セレストに銃口を向けた。

「私に撃つのね?」

「ああ。十秒くらいある」

「……分かったわ」

微かに首を傾げたが、セレストはすぐに頷いた。

やれば分かる、という俺の無言のメッセージを正しく受け取った。

そんなセレストに向かって引き金を引いた。

命中した瞬間、セレストが消えた。

「えっ? 何、今の」

「セレストさんがいなくなったです」

驚く、アリスとエミリー。

直後、セレストがドアを開いて、廊下からサロンに戻って来た。

「ええっ? 廊下に出てたの?」

「どういう事なのです?」

「セレストはもう分かってるな」

「……本当にそうなの?」

セレストは実際に体験しても、まだ信じられないって顔をしている。

「俺はなんかイタズラされるって覚悟決めてたんだけどな」

「十秒じゃ何も出来なかったわ。いきなりだったし」

「それもそうか」

「ねえねえ、どういう事?」

アリスが答え合わせを求めた。エミリーも俺を真っ直ぐ見つめた。

「時間停止だな。加速弾の倍付け――いや、二乗かもしれないな。その結果の時間停止だ」

「えええええ!?」

「そ、そんな事ができるのです?」

「俺も最初やった時、びっくりした。でもまあ、時間停止系のAVは九割偽者っていうから、時間停止もそんなに驚くようなものでもないんじゃない?」

「はえぇ……」

「ヨーダさんがどんどんすごくなっていくです」

俺は苦笑いした、ちょっとだけ切ない。

何となくボケてみたはいいが、元の世界のネタがまったく通じなくて、逆に恥ずかしくなってきた。

「ねえねえ、リョータ。もっかい、あたしにももっかいそれやって」

「いいけど」

何でそんなにわくわくしているのかと思いながら、もう一回、二発の加速弾を込めて、今度はアリスに撃った。

「えっ?」

「あわわ」

「使いこなすの早いよ」

声を上げるセレストと、微苦笑する俺。

セレストが後ろを向かされて、エミリーが持っていたトレイが頭の上に載せられる。

俺が右手で持っていた銃が左手に持たされていた。

時間停止のイタズラ、十秒間の間、アリスは目一杯楽しんだみたいだ。

「すっごーい、これすごいよリョータ」

「すぐに使いこなす、アリスの方が、すごいと思うぞ」

「ふふーん、伊達に毎日リョータの事を考えてないからね」

「「ええっ!?」」

驚く、セレスト。ガタッと椅子を倒してしまう、エルザ。

二人は同時に、そして盛大に動揺した。

「ま、毎日考えてるって」

「もしかして、アリスちゃん……も?」

「も?」

それに対し、アリスはきょとん、と小首を傾げた。

「違うのかしら?」

「考えてるって、どういう事なの?」

「りょーちんだよ。りょーちんを上手く使いこなすには、リョータの事をちゃんと考えて、分かってないとダメじゃん?」

「あ、ああ……」

「そういうことだったのね……」

セレスト、そしてエルザは見るからにほっとした。

でも、そうか。りょーちんか。

俺の事――戦い方をいつも考えてるから、時間停止もすぐに活用出来たんだな。

「ふふん、これであたしもまた強くなったよ。ありがとね、リョータ」

無邪気に笑い、お礼を言ってくるアリス。

「お礼はバナジウムに言ってくれ」

「そっか! ありがとうエリエリ。よし、メラメラタックルだ」

アリスはメラメラに命じて、俺にしがみついたままのバナジウムにじゃれ合わせた。

俺だけじゃない。アリスも強くなったと、改めて気づかされて、ますます嬉しくなったのだった。