軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

378.鉄壁リレー

推測だが、可能性は極めて大きい。

それを確認するためには、もう一度リジェクトクリスタルを入手して、倒してみるしかない。

「リジェクトクリスタルってどんなアイテムのハグレモノなんだ?」

「それがわかりません」

「え? なんで?」

「リジェクトクリスタルが絶滅種だからです」

絶滅種。

アントニオの口から出たのは、この世界に来てから初めて耳にする言葉だった。

「どういうことなんだ?」

「困るからですね、冒険者にとって。存在するポイント次第で、それだけでダンジョンに入れなくなるモンスターですし」

「……そりゃそうだ」

あの屋敷を手に入れる時の苦労を思い出した。

俺とエミリーが協力しあって、その上あらゆる力のベクトルを無視する鉄壁弾――当時はクズ弾と呼んでいた弾でようやく倒したんだ。

普通の冒険者じゃ手を焼くのはわかりきってる。

「ダンジョンマスターが大暴れした後に生まれたモンスター、そのやっかいさから一週間かぎりで姿を消したといわれますね」

「品種改良か」

アントニオははっきりと頷いた。

やっかい過ぎて、速攻で消されたんだな。

その当時に俺がいれば俺の所に話が来てた位の案件だろう。

それはいいんだが、絶滅種か

「こまったなあ……」

夕暮れ時のシクロ。エリと手を繋いだまま帰路につく。

あの後セルの所にも行ったが、彼にも入手は不可能だという。ただセルの所では情報が得られた。

リジェクトクリスタル、そのドロップ品は果物のドリアンだという。

ドロップがドリアンと言うことは、もはや一つたりとも残っていないということでもある。

これが道具系のドロップ品ならどこかに一つは残ってる可能性があるのだが、果物では可能性は0だ。

特にこの世界だ。

元いた世界なら、どこかに腐ってる残骸が残ってる、という可能性もあるが、こっちはもののそばに人間がいないとハグレモノに孵る。残骸ならゴミとしてフランケンシュタインになる。

リジェクトクリスタルのドリアンが今も残っている可能性は、「腐ってるドリアンをそばにずっと置いて生活してる人」というものしかない。

そんなものはあり得ない。

理論上0ではないがだれが考えてもあり得ないのがわかるのだ。

「まいったな」

「……(?)」

気づくと、エリがきょとん、とした目で俺を見上げているのが分かった。

若干だが心配しているようにも見える。直前で俺が深いため息をついたせいだろう。

「ごめんなエリ、リジェクトクリスタルが手に入らなさそうだからため息をついただけだ」

「……」

小首を傾げるエリ、よく分かってなさそうだからもうちょっと説明した。

「そういう名前のモンスターだよ、そこにいるだけであらゆる人間をテリトリーの外に押し出す能力のモンスターだ。それがほしかったんだけどね」

無いものはしょうがない。

さてどうするか。

あのやしきを増築する方向性でいくか。

増築して、庭にあるエリスロニウムダンジョンを取り込む形でやるか。

屋敷の中にダンジョンがあって、ダンジョンの中に隠れ家がある。

それはそれで悪くない気がする。

「……(ぐい)」

「うん、どうしたエリ?」

「……(ぐいぐい)」

エリは俺の指を掴んで、引っ張って歩き出した。

今まで真横に着いてきてただけだが、何を思ってか、完全に俺を先導しだした。

「お、おい。どうしたんだエリ」

エリは答えずひたすらすすんだ。

とは言え幼い姿のエリだ。

どんどん先に進む、と言っても大人の俺の普通の速度よりちょっと遅いくらいだ。

愛らしさすら感じるその姿に、俺は黙って、ゆっくりついていった。

エリは俺を引っ張って屋敷に戻った。

建物には入らず、そのままエリスロニウムダンジョンに入った。

エリスロニウム地下一階、屋敷の玄関ホールになっている場所。

エリはそこで俺から手を離して、ホールの中央に向かった。

そこで目を閉じて、両手をかざす。

光が溢れ、それが集まってモンスターになる。

これまで見た、エリスロニウムの綿毛そのもののモンスターだ――

「うおっ!」

瞬間、ものすごい斥力が俺にかかった。

たっていられない――どころかものすごい勢いで弾き飛ばされた。

気がついたらダンジョンの外で尻餅をついていた。

な、何事?

「……(にこっ)」

エリがワープで俺の所に来て、抱きついて俺の顔を見あげてきた。

ニコニコしている、ほめて欲しそうな顔をしている。

「あれ、エリが作ったのか?」

「……(こくこく)」

ああそういうことか。

俺から話を聞いたエリが、リジェクトクリスタルの特性を真似たモンスターを作り出した。

異物を排除する能力のモンスター。

よく考えたら、今のエリにはお手の物だ。

何せ、今の勢いはリジェクトクリスタルのそれを遥かに上回っている。

「そっか、ありがとうなエリ」

そう言って頭を撫でてやると、エリはものすごく嬉しそうに、俺に抱きついて頬をスリスリしてきた。

可愛いし、感謝もあるし。

しばらくの間なで続けた。

「よし。エリ、ここで待ってて。あのモンスターを倒してくるから」

「……(ふんす)」

エリがやる気を出した。

代わりに倒してくれるって意味だろう。

「ありがとう、でもこれは俺がやらないといけないから。代わりに応援しててくれる?」

「……(こくこく)」

エリを納得させたあと、俺はダンジョンに入った。

入った途端押し出す力が襲ってきた。

拒む、弾く力はリジェクトクリスタル以上。さすがエリだ。

が、問題ない。

俺もあの時より強くなってるし、やることがはっきりしてるから対策も考えてる。

アブソリュートロックの石、そして鉄壁弾。

かっちかちに固まった無敵状態で、撃った鉄壁弾を掴む。

鉄壁弾はあらゆる力を無視してゆっくり進む弾丸だ。

エリのモンスターの斥力にも負けることなく普通に進んだ。

それにアブソリュートロックの石で固まって、掴んで、鉄壁弾に引っ張られる形で先に進む。

鉄壁弾は少ししかすすめない。

それがそろそろ消えそうになった所に、新しい鉄壁弾を撃って、それを掴む。

鉄壁弾リレーだ。

鉄壁弾を撃って、掴んで進む。

消えそうになる前に新しいのを撃って、更に進む。

それを繰り返して、綿毛の所に辿り着いた。

念のためにゼロ距離から鉄壁弾を連射。

ポン! と言う音の後、綿毛が弾けて消えた。

「よしっ!」

シミュレーション通りに倒せたことに俺はガッツポーズした。