軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

375.プリンセスメーカー

テルル地下一階。

俺はエリと手をつないで、アリスの後についていった。

「こっちだよ、リョータ」

「おっ、りょーかい」

アリスの道案内でダンジョンを進んでいく。

途中で何回か冒険者とすれ違った。

顔見知りの冒険者達に簡単な会釈だけを交わして、更に進む。

三叉路の前で、アリスが両方を見比べている。

「んー、こっち――じゃないや、エリちゃん連れて右のこっち行くと、普段より足が遅いから途中でかちあっちゃうね」

「ちょっと速く歩けばいいのか?」

「ううん、左の方に行けば大丈夫。こっちならしばらく新しく生まれないから」

「わかった」

アリスの指示に従って、三叉路の左の方に入る。

見慣れたダンジョンの中を歩く。

まるでピクニックのような感じで、エリと一緒に散歩している。

さっきからエリは俺の小指を掴んで一緒に歩いている。

ダンジョンに入ってきた直後、俺と一緒にいるってだけで安心しているのがありありと見えたのだが、次第に不安そうな表情になった。

それもそのはず。

既にテルルの地下一階で一時間近く歩いているが、モンスター――スライムとは一度も遭遇していない。

一時間も歩いてモンスターとエンカウントしないという状況に、エリは逆に不安がった。

「大丈夫だよエリちゃん」

エリの不安にアリスも気づいた。

先導する彼女は振り向き、エリに近づいてくる。

「モンスターはちゃんといるよ、あたしが避けてるだけだから」

「……?」

小首を傾げてから、俺を見上げてくるエリ。

どういう事なの? って視線だ。

「アリスはダンジョン産まれなんだ。ダンジョンで産まれたから、ダンジョンにいるモンスターの気配が分かるんだ。どこにいるのとか、いつ生まれるのとか」

「最初はたまーに外れてたんだけど、最近は経験も積んできて、完璧に分かるようになったんだ」

「さすがだな」

「えへへ」

ほめられたアリスは嬉しそうにはにかんでから、再び歩き出す。

そのアリスについていく。やっぱりモンスターとは遭遇しなかった。

モンスターがいなくなったわけではないというのは、たまにすれ違う冒険者がここのドロップ品であるもやしを回収している事からも分かる。

モンスターはいる、しかし俺たちは遭遇しない。

ちらっとエリを見た。

エリはアリスをじっと見つめている。

エンカウントしないのはアリスが先導してるからだと分かって興味が出てきたな。

なら、次の段階へ移ろう。

俺は歩きながら、アリスにわざとらしく質問した。

「モンスターを感じるってどんな感じなんだ?」

「うんとね、頭のこの辺に地図があるって感じ」

「地図」

「うん、ダンジョンの地図。その地図がこの辺にあって、いろんな所がピコンピコン光ってるっていうのかな?今モンスターがいる所とか、そろそろ産まれそうな所とか」

「なるほど」

RPGのマップ表示、しかもアイテムとか魔法とかまで使った、一番詳細を表示するタイプのマップって所か。

前に聞いた話から更に進化しているようだ。

それはつまり、更にわかりやすくなった、と言うことでもある。

これなら――と、エリを見た。

エリはじっとアリスを見つめた。

難しい顔でじっと見つめた――かと思いきや。

俺を引っ張って――もっと早く歩いてと、引っ張ってアリスに追いついた。

来たか――と思ってアリスを呼び止めた。

「待ってくれ。アリス」

「なに?」

「……」

アリスの前に立つエリ、無造作で手を伸ばして、アリスに触れる。

やがて、触れられた所が光り出した。

「わわ、何これ?」

「大丈夫だ」

「そうなの?」

自分の体が光ったので驚いたが、俺に言われて冷静になってエリのやることを見守った。

アリスの体の光が、徐々にエリの体に移る。

能力のコピー。

ミーケにしたのと同じことを、アリスにもしている。

しばらくして、光が完全にエリの中に移った――コピーされた。

「どうかな」

「……(こくこく)」

数回、可愛らしく頷くエリ。

「俺の居場所が常に分かるようになった?」

「……(こくこく)」

「じゃあ……目を閉じてみて。周りをぐるぐるするから、俺の方を向いてみて」

「……(ぷるぷる)」

「大丈夫、俺がいなくなりそうならすぐに目を開ければいいから」

「……(こく)」

俺の説得に応じて、エリは手を離して目を閉じた。

俺は気配と足音を消して、2~3メートル離れてから、エリの真後ろに回った。

エリは目を閉じたまま、ゆっくりとこっちを向いた。

今度は左に90度移動してみる。おいかけてこっちを向いた。

更に90度移動、アリスと交錯しつつ目配せして、アリスには反対側に足音を立てて移動してもらった。

それにまったく惑わされることなく、エリは俺の方をしっかり向いてきた。

ダンジョン生まれのアリス、その能力をエリが必要分コピー。

いついかなる時でも、俺の居場所をレーダーの如く感じれる能力になったようだ。

エリは目を開けて、俺に駆け寄って、小指を掴んできて、ニコッと笑った。

そんなエリの頭を撫でつつ、アリスの方を向く。

「ありがとうなアリス、能力をコピらせてもらった」

「すごいね、話は色々聞いてたけど本当にコピれるんだ」

「ああ。計算通りのコピり方でほっとした」

「そうなの?」

「ああ」

「でもさ、エリちゃん、いつでもリョータの所に飛んでこれる、ワープの能力がついたって聞いたけど。それがあればあたしの能力なんていらないんじゃない?」

「いや、俺の居場所を感じられるのが重要だ」

「なんで?」

「もうちょっと安心してきたら、この能力があれば、屋敷の中で俺から離れて遊べるようになるだろ?」

「おー」

エリが望めばできるだけ一緒にはいたいが、そうは言っても、俺から離れて、信頼できる仲間達と一緒に行動が出来ればエリの生活に 幅(、) が出てくる。

せめて屋敷の中ではそうしてあげたいのだ。

「しっかし……すごいね。リョータ」

「うん?」

「普通さ、エリちゃんみたいなのがいたら、もっと都合のいい方に誘導して育てるじゃん」

「そういう人間にエリは懐かないと思うけど」

「うまくやれそうな気がするじゃん? リョータにくっつくのは大前提だけど、くっついてるときドロップ二倍にしたりとかさ」

「なるほど」

考えてもなかったが、出来る気はする。

とは言え、改めて気づかされてもそうする気はないが。

俺はエリの手を握り返しつつ、アリスに答える。

「エリにはとにかく、安心してうちで暮らしてもらいたい。今はそれだけだ」

「やっぱりすごいよ、リョータは」

俺を褒めるアリスに微笑み返して、俺は更に考える。

エリは「俺のそばで安心を感じる」という大前提で、いろんな能力をコピーしたり、エリスロニウムダンジョンを作り替えることができる。

エリを安心させるために、もっとなにかできないか、と。

俺はそのことを考え続けた。