軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

360.てかげん

衆人環視のもとで、違約金を肩代わりして、十人を自由の身にする。

ポーンと一億ピロを、しかもまったく見ず知らずの人間の為にだしたと言うこと。

普通はやらないことをやった俺。

買い取り屋の中でほぼ全員あっけにとられていた。

一度お礼を言ってきた冒険者達も。

「これであんた達はもう自由だ」

と改めていってやると、「自由……?」って感じで戸惑いだした。

戸惑ってるのは彼らだけではなかった。

ブラックパーティーのリーダーの男も、まったく関係のない他の冒険者達も。

みんなあっけにとられていた。

唯一、そうじゃないのは。

「ではここにサインしてください。事が事ですから受領の証明です」

「免税対象に申請しておきました」

事務的に残務処理を続ける、エルザとイーナの二人だった。

俺の仲間だけあって、 こういう(、、、、) 事には慣れてて、驚くとかそういうのはまったく無くて普段通りに動けた。

そんな中、助けた十人の内、一番若い男――仲間を責める時ずっと語彙が足りなくてつっかえていた男が真っ先に我に返った。

「あ、あの。本当にあ、ありがとう!」

「気にするな」

「このご恩はか、必ず! お金は必ずか、返します!」

「ゆっくりでいい。それよりも一つ約束してくれ」

「約束?」

朴訥な男は首をかしげた。

それ以外の九人をぐるりと見回した。

男だけじゃなくて全員そうだ、って感じで告げる。

「無茶はするな。ゆっくりと、そうだな、九時五時程度で働けばいい」

「し、しかしそれじゃ立て替えてもらったお金は」

「エルザ」

「はい」

残務処理が一段落したエルザが俺の呼びかけに応じた。

表情は「分かってますよ」と既に先走ってるが、それでも分かってない てい(、、) で俺の言葉を待った。

「この人達の事を覚えといて。無茶なダンジョンの籠もり方をしてたら買い取らなくていいから」

「わかりました」

「リョータさんがカルシウムをアウルムの様に変えちゃえばいいのに」

イーナが店に飾っている、アウルムの黄金像を親指でぐいっと指して、いたずらっぽい笑みで言った。

「アウルムと同じって……ああ、夜間はモンスター出ないようにするっていうあれか」

俺が得心して頷いたのと同時に、冒険者がざわざわした。

「アウルムダンジョンの夜ってモンスター出ないのか?」

「そうらしいっていう噂を聞いた。あいつがやったって噂もある」

「っていうか……あの黄金像やっぱりほんものなのか?」

「精霊にそこまでの影響力を持ってるってのか……」

ざわざわして、一部驚愕した。

「それは今後の展開次第だ。しばらくはハセミの働ける人は働きたいだろうって思うから」

「うーん、それもそっか」

ざわざわがますます大きくなった。

俺が間接的に「やろうと思えば出来る」って言ったのがざわざわを大きくする原因になった。

それをスルーして、十人の男達に向き直った。

「そういうわけだ。無茶をして稼いだ金は受け取らないからそのつもりで。ゆっくり、無茶しない範囲で返せばいい」

十人は互いに顔を見比べながら、困った顔をした。

まあ、そうだろう。

俺自身、甘すぎる上に干渉しすぎかもしれないとも思う。

しかしこういうブラックパーティーを見るとどうしても必要以上に感情移入して、色々したくなる。

「……ありがとうございます」

「「「ありがとうございます!」」」

助けた十人、全員がひとまず納得して、俺にお礼を言ってきた。

この件はとりあえず解決だ――

「ふ、ふふふふ!」

「ん?」

いきなり笑い声が聞こえた。

声の方を向くと、ブラックパーティーのリーダーの男が肩をふるわせておかしそうにわらっていた。

「俺もコケにされたもんだ」

「おい馬鹿やめろ」

近くにいる別の、多分関係のない冒険者が声を出して止めたが、リーダーの男は鼻で笑った。

「リョータ・サトウの前で理不尽な事をしたらいけない。ふん! そんな噂ばかりが先行してるが、実際に何がどうなったのかなんて話は聞いてこない」

……。

「何がいいたいんだ?」

「このまま引き下がったら面子丸つぶれってことだよ!」

男は俺に飛びかかってきた。

握った拳で殴り掛かってくる。

拳の乱打、秒間で十数回はあるというパンチのラッシュ。

かなりの使い手――だけではない。

拳は微妙にきらきらしている。

目を凝らすと、何か手甲のような物をつけている。

金属――いやダイヤか?

かなりの装備って事だ。

それで俺に殴り掛かってきた、敵意、いや殺意を持って。

俺は慌てず、おもむろに拳銃を一丁だけ抜いて、銃弾を撃った。

鉄壁弾。

相手のラッシュの軌道を読み切って、その全てに鉄壁弾を置いた。

ガガガガガガ――。

連続でこだまする打撃音、男のパンチは一つ残らず防がれた。

「これしきの事で!」

「それ以上前に進まない方がいい」

「え?」

驚愕する男、動きが止まる。

鉄壁弾、二丁拳銃のもう片方を使って、こっちは彼の進行方向をさき読みしてうっておいた。

徐々に進行する鉄壁弾。進行方向に置いたそれはまるで迫る壁と天井。

少しでも前に進むと、ダンジョンマスターすら完全に止める鉄壁弾に圧殺されるようにうった。

男はそれを理解した、一歩も動けなかった。

「「「おおおおお!!」」」

銃弾を撃ったのは一瞬、しかし鉄壁弾の進行は極めて遅い。

だから、冒険者の全員が状況を理解した。

「お前さん、そこでやめとけ」

「手加減してもらってるのわからんわけでもねえだろ」

「ボーナスラッキー、って事で引き下がっとけ」

冒険者がつぎつぎに男をたしなめた。

男はわなわなと肩をふるわせ、顔を真っ赤にして。

「くそっ!」

やがて悪態をついて、この場から逃げるように立ち去ったのだった。