軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

353.互いに高めあう関係

やる気になってる仲間は、出来るだけやりたいようにさせてやる。

それが俺の――リョータファミリーの方針だ。

「赤のポーション、植物+1、動物-1」

装備とアイテム、それをフルにイヴに投入した後、ナウボードで能力を確認。

―――2/2―――

植物 A(+3)

動物 B(-1)

鉱物 E

魔法 C

特質 C

―――――――――

素のステータスの傾向が逆転して、植物が一番高くなった。

ちなみに植物+1装備をあえてつけたのは、ニホニウムの種で同じランクでも細かい差があるかもしれないという事を知っているから。

もしかしたらAの下限かもしれないから、念のためAの上限に、っていう事だ。

「ウサギ、草食になった」

「元からだろ」

「今日から真・ウサギ」

フンス! 意気込むイヴ。

元から今回はやる気満々なイヴだったけど、ステータスの植物が動物を上回ったことで更にやる気がでたみたいだ。

ドロップのステータスは戦闘能力にはまったく関与しない、だが、こういう精神的な物が実際のパフォーマンスの違いになって現われるのはよくある話。

日の丸を背負った日本代表が、普段以上のパフォーマンスを出すのが最たる例だ。

それと同じ、イヴは「植物>動物」が大きな原動力になる、本当に強くなっても驚かない。

「よし、なら次行くか」

俺は牛の模型を取り出して、地面に置く。

「リョータさん、ここは任せて」

「セレスト? いやでも、イヴが……」

「状況は理解してるわ。なら私にミノタウロスの足止めだけでもさせて」

「ウサギの出番を奪う事は許されない」

「これをあげるわ」

セレストはイヴにニンジンを差し出した。

持ってきてたのか、用意が良いな。

「ニンジン一本くらいじゃウサギは買収出来ない」

「これはただのニンジンじゃないのよ。リョータさんが生産したニンジン、それも」

「そ、それも?」

セレストの空気に飲まれて、イヴがゴクリ、と生唾を飲んだ。

「エルザが査定した中で、一番質が高かったもの。エルザベストセレクションよ」

「――ッ!」

盛大に驚くイヴ。背景に稲妻がおちたような幻覚が見えた。

「低レベルの、エルザベスト……ごくり」

「一回だけ任せてくれたらこれを上げる」

「ウサギは譲るわけじゃない、こだわるのをやめるだけ」

「ありがとう」

イヴは引き下がって、セレストからニンジンを受け取って、うっとりした目でそれを見つめた。

「話はついたわ」

「すごいな、そこで引き下がるなんて。エルザの鑑定眼をイヴも認めてるって事か」

「そういうことね。あなたの周りにまったく使えない子はいないのよ」

「いや、みんなすごいのは分かってる。あのイヴが素直に認めるのがちょっと予想外なだけだ」

「……私の事も見てて」

「うん? ああ、頑張れ」

何故かやたらと意気込むセレストに頷いた。

セレストは離れたところに置いてきた牛の人形と向き合った。

少し待って、ミノタウロスが孵った。

空気が一変する中、セレストが腕を振って、十本の指を踊らせる。

なんだ? 今までの動きと違うぞ?

それに――指先が光ってる?

俺が不思議がったのとほぼ同時に、セレストの体からバイコーンホーンが計十本、一斉にミノタウロスに向かって飛んでいった。

真っ直ぐとんでいった――かと思えば直前で散開し、ミノタウロスを取り囲んだ。

三百六十度全方位で取り囲んで、炎の玉が一斉にミノタウロスに向かって打ち出される。

「おおっ!」

思わず歓声が上がった。

まるで生き物の様に動くバイコーンホーン。どういうからくりなのかと目を凝らすと――。

「糸、か?」

セレストはちらっと肩越しに俺を見て、微かに微笑んだ。

あたりのようだ。

セレストの白魚のような指がさらに踊って、その指先からきらりと伸びている糸がバイコーンホーンを縦横無尽に操作した。

全方位の炎の玉。

それを受けつつもミノタウロスは突進。

セレストは自分で援護射撃をしながら、炎の弾幕で突進が遅くなったミノタウロスの攻撃を避ける。

そして――詠唱。

全方位からの射撃の後に、ドカンと打ち込まれた大魔法のインフェルノ。

新しいセレストのスタイル。

近接戦闘もこなせる砲台。完璧だな。

俺はそんな感想を持った。

セレストはミノタウロスを圧倒した。

糸制御バイコーンホーンのオールレンジ攻撃に加えて、速さこそないが経験に裏打ちされた無駄のない動き。

そして、とどめの大魔法の更に成長した火力。

セレストはソロで、ミノタウロスの14の命のストックを使い切らせたあと、イヴと同じく手足を焼いて、ぎりぎりで生かして無力化した。

「ふう」

「お疲れ、すごいぞセレスト」

「そう?」

言葉こそ素っ気ないが、セレストは嬉しさを隠しきれない表情を浮かべている。

「ああ、見る度にどんどん強くなる。すごいよ」

「それはあなたのおかげよ」

「え?」

思わずドキン、と胸が高鳴った。

セレストの言い方が、まるで――。

「りょ、リョータファミリーの一員が弱かったらお笑いでしょ」

セレストは慌てて言い直した。

直前のしっとりした口調と空気が一掃される。

なんだ、そういう意味か。

俺はてっきり……いやなんでもない。

セレストは更に続けた。

いつの間にか、いつもの調子に戻っている。

「リョータさんは強くなりすぎてるのが問題なのよ」

「どういうこと?」

「強くなりすぎて、誰も本当の強さを理解出来ない。だから私が尺度になるのよ。私は強くなる、みんなに理解出来るレベルで。そうすればリョータさんは『ここより強い』ってみんなが分かるでしょ」

「うーん、つまり?」

いまいちよく分からなかったので聞き返した。

すると、セレストはにこりと微笑みながら。

「セレスト強い! リョータはこれより強いらしいぞ! マジで!?」

芝居がかった口調でなんかのやりとりを演じた後、今度はイタズラっぽい笑みで。

「と、こうなる訳なのよ」

「そうなるかな?」

俺は苦笑いした。

「なるわ、だって本当のことでしょう。私より強いのは」

更に微笑むセレスト。

彼女の信頼に応えるために、俺は更に強くならないとダメだなあ、と何となく思った。