軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

334.柔術巫女

俺が困惑してる間も、スケルトンは待ってはくれなかった。

俊敏な動きで更に襲いかかってくる。

仕方ないまずはこいつを倒してからゆっくりと――と思ったその時。

サクヤが動いた。

俺に向かってくるスケルトン、その間に割り込んで、前進を続けるスケルトンの懐にするりと潜り込む。

骨だけの腕に関節技をしかけたと思ったら、関節技のまま背負い投げ(っぽい)感じで投げ飛ばした。

ボキッ――メキメキッ!

最初の音は投げた時に決まったままの関節が折れた音。

すぐに続いたのは投げたあと即座に体重をかけて肋骨に当て身をして骨を砕いた音。

柔道――いや関節技しながら投げてるから柔術の方が近いのか。

柔術巫女、時代劇のようでそうじゃない格好。

サルファクイーン・サクヤ。

「それがあんたのスタイルか」

「はい」

「ためらいとか無かったな、サルファクイーンだからすぐに慣れるとは思ったが、それでも『サルファと一緒だ!』で一瞬戸惑うと思ったのに」

「え? サルファと同じって?」

「え?」

その反応にこっちが驚いた。

気づいてもいなかった……って事か?

「いや、だからサルファと似てて、ここに入るとレベルが1に戻ることなんだが」

厳密には種で上がった能力も初期値に戻るが、それは俺だけの事だから言わなかった。

「そうだったんです。さっき見せた悪い方の能力、ありましたよね」

「ああ、EとかFとかがずらっと並んでる方だな」

頷くサクヤ。

「実はあれ、レベル1の時と同じなんです」

「え? ……ってことは66まで、65回レベルアップしたのに能力が1つも上がらなかったって事か」

「はい」

「……」

俺は言葉を失った。

大昔にゲームの中で起きた出来事を思い出した。

レベル20位から、レベルアップの時50%の確率でおぼえる魔法がある。

それを、ゲームをクリアするレベル――多分50くらいかな、そこまで上げても覚えなかった。

最後の最後まで覚えなかった事を思い出した。

あたりも外れも50%、その外れを引き続けて30回。

確率は――0が10個前に並ぶ。

ざっと計算しても汎用人型決戦兵器の09システムよりも更に低い確率だ。

それと同じように、サクヤも能力が上がらないパターンを65回引き続けてきたって事だ。

思わず歯ぎしりした。

運がわるいと言ってしまえばそれまでだし、ぶっちゃけ誰が悪いわけでもない。

サクヤ自身の運が悪いだけだ。

それでも、俺は歯ぎしりする程もどかしかった。

「あの……どうかしたんですか」

「……いやなんでもない。それよりも」

そっちを気にし続けてると行き場の無いムカムカを抱えてしまうから、話をそらした。

「あんたがニホニウムで見たのはさっきのスケルトンじゃないんだよな」

「はい。もっとこう、うー、とか、あー……とか呻きながら歩いてる感じでした」

「それが普通の、今までのニホニウムだ」

「ここは違うんですか?」

周りをきょろきょろするサクヤ。

「ああ。……理由は分からないが俺だけが入れたようだ」

「今は私も入ってますけど?」

「屋敷の転送部屋を使えば連れてこれる。その気になれば精霊の部屋にも連れて行ける」

「精霊の部屋……?」

「精霊付きって知ってるだろ? その精霊と会える部屋だ」

「……」

サクヤはポカーンとした。

「どうした」

「ああっ! ごめんなさい! そんな事も出来るなんてすごいなって」

「そうか」

転送部屋は仲間内で普通に使ってるし日常の一部になってきてるから、サクヤの反応が新鮮だった。

まあそれはともかく。

「ちなみにニホニウムにいったのはいつ?」

「さっきも、来る前に」

「そうか」

となると裏って呼んでるここはやっぱり俺しか入れないって事になるのか。

その事をニホニウムに後で確かめるとして、せっかくここまで来たら、実地でミニスケルトンを倒して種を手に入れて、まずは一つだけでも。

希望と未来の可能性があることを分からせる為にも、一つはサクヤのレベルを下げてやろうと思った。

一方で、サクヤが倒したスケルトンがドロップしなかった事もあって。

「ここからは俺がやる」

「分かりました」

素直なサクヤを連れて裏ニホニウムの一階を回った。

スケルトンと出会ったそばから倒していく。

サクヤほどスムーズには行かないが、俺も既に三回目。

能力が低くても、あの手この手で俊敏なスケルトンを倒していった。

「……」

ふと、サクヤがじっと俺を見つめているのに気づいた。

「どうした」

「……はっ! ご、ごめんなさい!」

「いや怒ってるとかはなくて、どうしたんだそんな風にぼうと俺を見つめたりして」

「リョータさんも……レベルが戻ってるんですよね」

「うーん、まあな」

厳密には能力だけ下がってる状態だけど、それを言うと元のニホニウムの事も、なんならドロップSの事も説明しないといけなくなる。

サクヤはサルファを知ってるし、その流れで話を合わせることにした。

「それがどうした」

「能力低くてもいろんな倒し方をしてました」

「そうか、普通はもっと安定志向だもんな」

「それが……すごく格好良かったです」

気づけば、サクヤの目が熱っぽかった。