軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

32.ダンジョン長の依頼

ニホニウムの地下三階でマミー相手に速さの種集めと、融合弾の性能チェックをした。

二丁拳銃から打ち出した銃弾がモンスターよりも先に互いにぶつかった場合、融合して新しい効果を生み出す。

通常弾同士で貫通弾、火炎弾と冷凍弾で消滅弾、回復弾同士で睡眠弾。

また火炎弾と回復弾で神々しい炎が生まれて、マミーのようなアンデットは燃やされた瞬間バターのように溶けていく。

現象と相手モンスターの性質からして、浄化の炎、聖炎弾と名付けた。

二つの弾が作り出す融合弾。

それはこの銃だからなのか、それともおれの体質だからなのか。

それは分からないが、ぶつかったら必ず融合するって事はわかった。

問題は一つだけ、融合するには二つの弾をうって空中でぶつける必要がある。

今のところ成功率はまだ90%くらい、それを使う場面ってのは 必要な(、、、) 場面だから、練習を重ねて100%にあげたい。

そう思って、通常弾を使った貫通弾でマミーを倒していった。

マミーのタフな肉体に通常弾じゃほとんど効果はないが、貫通弾になったら頭を一発でぶち抜ける。

ニホニウム特有の奇襲はあるけど、ゾンビやスケルトンに比べてスピードの遅いマミー相手に、たっぷりと融合弾の練習をする事ができて、気持ち成功率がちょっとだけ上がった。

ちなみにマミーを狩っていくうちに、速さの種でBからAに上がったのだった。

午後、日課のテルルダンジョンじゃなく、街の立派な建物の中。

シクロダンジョン協会、その応接室でおれは先日あったスキンヘッドのヒゲ、ダンジョン長と向き合っていた。

前にあったときは戦いの直後で気分が昂ぶってたから気にならなかったけど、落ち着いてる時に二人っきりになるとちょっと怖い。

そんな厳つい顔の持ち主だった。

「いきなり呼び立ててすまない。まあ、茶でも飲んで落ち着いてくれたまえ」

ダンジョン長はそういって、秘書がいれてくれたお茶をすすめてきた。

ティーカップは二つ、入ってるのは香り高い紅茶だ。

ダンジョン長は自分の紅茶に角砂糖を入れた。

ポトン、ポトン、ポトン、ポトンポトンポトンポトンポトンポトン――。

「入れすぎなんじゃないですかそれ!」

声が裏返るほどのツッコミを入れてしまった、それほどの光景。

ティーカップに角砂糖を文字通り山ほど入れて、角砂糖が海に浮かぶ氷山みたいに紅茶の上にせりでていた。

ダンジョン長はその紅茶(?)をのんで、厳つい顔をほっこりさせた。

「何を隠そうわたしは甘党でね」

「限度がありますよ!」

「キミも遠慮しないで、さあ飲みたまえ」

「いただきま――っていつの間にこっちの紅茶にも砂糖入れたんですか!」

おれのティーカップも角砂糖山盛りだった。

それが微妙に溶けてて、琥珀色のどろどろとした液体になってる。

こんなの飲んだら一発で糖尿病だ。

さすがに飲めなくて、それを置いて話を聞いた。

「えっと、今日はどうしておれを呼んだんですか?」

「うむ。ヘテロという街をしっているね?」

「ヘテロ?」

思わず首をかしげた。

知らないとまずいのかな、もしかして。

おれが首をかしげたのをみて、ダンジョン長は説明をはじめた。

「このシクロの東にある街でね、3つのダンジョンしかもっていないが、その分どこも上質な肉をドロップする畜産都市なのだよ」

「なるほど」

ヘテロ、近くにある街、ダンジョンは三つで全部肉をドロップ。

亮太、覚えた。

「そのヘテロがどうしたんですか?」

「だいぶ前にこのシクロとヘテロの間に一つダンジョンが生まれてね。場所はちょうど二つの街の真ん中あたりなのだよ」

「へえ」

「ちょうど真ん中と言うこともあってね、そのダンジョンがシクロのものなのかヘテロのものなのか色々ともめてね。知っての通り、ダンジョンドロップを買い取る際はあらかじめ一定の税金が差し引かれている。ダンジョンがどっちのものなのかは街の財政に大きく関わるのだよ」

へえ、源泉徴収されてたのか、買い取りの時に。

「そういう意味ではニホニウムは痛かった」

あぁ……ドロップないから税金取れないもんなあ。

「それで最近ようやく合意が出来てね、ドロップの内容でどっちのものになるのかを決めるという。野菜の階層が多ければシクロのもの、肉が多ければヘテロのもの。という話にまとまったのだよ」

「なるほど」

「そこでキミに調査をお願いしたい。強くてドロップ率の高いキミに」

「おれのドロップ率を何故?」

エミリー以外誰にも話してないはずなのに。

「タケノコとスイカの噂は聞いている。数値はしらないが、あれほどのドロップを持ってこれるということは相当ドロップ率が高いはずだ」

「なるほど」

状況証拠か、そりゃしょうがない。

「実はね、ある程度の下調べは済んである」

「へえ?」

「二つの街の間にあるだけに、階層的に野菜と肉のドロップはほぼ互角なのだ」

「じゃあなんで?」

「レアモンスターのドロップだよ」

ダンジョン長はまっすぐおれを見た。

怖いくらい真剣な顔で。

「レアモンスターのレアドロップ、それ次第で結果が決まる。そしてレアモンスターのレアドロップはだれにでも出せるわけじゃないから、ドロップ率の高い者を派遣する必要がある」

「なるほど」

「頼む。もちろんただ働きはさせない、向こうのものになったときは金一封出すし、ダンジョンがシクロの管轄になったら、キミに限ってドロップの税金を完全に免除しよう」

税金の免除か。

それは美味しいな。

それに……うん、妥当な報酬でもある。

ダンジョンがシクロのものになれば、シクロは数百人から税金をとれる、その立役者の一人の税金免除なんてむしろやすい位だ。

話は納得出来る、なら。

「わかった、頑張ってみる」

「ありがとう! 本当にありがとう」

ダンジョン長は立ち上がって、テーブル越しにおれの手を強く握った。

「これはささやかだが――報酬の先払いだ」

ガチャ、とドアが開いて、さっきの秘書が山ほどの角砂糖を持ってきた。

「それはいりませんから!」

「まあまあまあまあ、砂糖はエネルギーだよキミ」

ダンジョン長は角砂糖を一つそのまま口の中に放り込んで、厳つい顔をほっこりさせた。

冗談抜きで糖尿になりかねないので先払い報酬は丁重にお断りした。

こうしてダンジョンの調査という、意外な依頼が舞い込んできたのだった。