軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

319.マーガレット・テネシン

マーガレットたちに一旦別れを告げ、その足でシクロのダンジョン協会、セルの所に駆け込んだ。

割合弾を俺じゃなくてマーガレットたちに渡すため、そうするための攻略法と、実現に必要な事をセルに話して、協力を求めた。

「どうだろう」

「それ自体は造作もないことだが」

「だが?」

「サトウ様はそれでよいのか」

「ああ、俺が持ってるよりもマーガレット、もっと言えば彼女を守るあの四人に渡した方が有効活用してくれる」

「ふむ」

セルは頷いて、納得した。

「さすがサトウ様、強力であっても必要に応じて下げ渡す。まさに王者の風格」

「どう考えても俺より彼らの方がうまく扱えるからな」

あの四人の忍者騎士。

上手くあの四人に渡せれば、マーガレットは今以上に活躍出来るだろう。

そのためのテネシン攻略、そのためのセルの協力。

「で、人は集められるのか?」

「造作もないと言ったはずだ。余がサトウ様の期待に背くことなど天と地がひっくり返ったとしてもあり得ぬ」

「俺はニンジンじゃないぞ」

セルの物言いは彼のキャラによく似合ってるが、一瞬だけ饒舌イヴと姿が重なった。

それはそうと。

「助かる、ありがとう」

「決行はいつがよいのだ?」

「出来れば早く渡したい、いつまでに集められる」

「サトウ様は『出来れば』であっても、日常を妨げることを望まない」

まあ、そうだな。

「 それを踏まえて(、、、、、、、) 明日の日没後」

「ありがとう」

協力だけじゃなくて配慮までしてくれるセル。

感謝しかなかった。

次の日の夜、日没した後。

ニホニウムがミーケと共に屋敷に戻ってきたのを確認してから、俺はマーガレットを連れて、転送部屋経由でテネシンの部屋に飛んだ。

マーガレットを連れてきた俺をテネシンは驚いていた。

俺は開口一番。

「もっと人を増やせる方法を思いついた」

「ふざけんな帰れ!」

テネシンは俺に怒鳴りつけた。

一方でテーブルを出し、精霊の力で切り分けた黒玉スイカをだした。

口では追い返そうとしつつやってる事は歓待モード。

はじめてこのツンデレなさみしがり屋に会ったマーガレットは戸惑い、俺に救いを求めるように見つめてきた。

「せっかく出してもらったスイカもったいないから食べていこう。いいだろ?」

「ふん! 片付け面倒だから残さず食っちまえクソッタレ」

口の悪さは相変わらず、ツンデレなのも相変わらず。

俺はマーガレットにスイカを薦めつつ、スイカの間に話を――終わらなくても大丈夫だけど一応終わるようにと話し出した。

「紹介するよ。マーガレット姫。彼女は外の世界での一番の人気者だ」

「人気者だあ?」

「ああ、どれくらいの人気者なのかというと……」

俺は用意してきた、マーガレットの空気箱を取り出した。

「物」としては空気が入った箱、それだけ。

マーガレットの姿がラベルになって箱に張られている。それだけの物だ。

それを開けて、テネシンに見せた。

「何も入ってないぞ」

「空気が入ってたんだよ」

「なんだと!? てめえ俺を馬鹿にしてるのか!」

今までテネシンにさんざん怒鳴られてきたけど、今のが一番怒鳴られて当然だと俺は思った。

「それっぽい」箱を開けたら何もない、いいえ空気が入ってました。

事情を知らなければ俺でもムカッとするだろうな。

その反応は当たり前に理解できるから、俺は落ち着いて説明した。

「違う違う。これはドロップした物を自動で取り込んで、ラベルにドロップ者の顔をプリントするアイテム。例えばこんな」

俺は別の箱を取り出した。

俺の顔がラベルにあって、開けると――。

「リョータさんのマツタケですわね」

「うん、言い方やめような」

「???」

首をかしげるマーガレット、一方で何もない空間から殺気を感じる。

当たり前のように、四人の忍者騎士がついてきてるみたいだ。

姫様に何を言わせる。

殺気から声が聞こえた気がした。

背中につーと冷や汗が流れるのを感じつつ、テネシンに向かって話を進めた。

「あんたなら分かるだろ? これは俺がドロップしたヤツだって」

「ああ」

「これと同じように、マーガレットがドロップさせた空気は、マーガレットの空気ってだけで売れる――ぶっちゃけあんたのダンジョンのドロップ品よりも高く」

「てめえふかしてんじゃねえぞ!」

テーブルを叩いて、いきり立つテネシン。

うん、これもまた正しい反応だな。

「本当だ。それだけ彼女が人気者だって証拠さ」

「……」

テネシンは不審げな目でマーガレットを見た。

まだ半信半疑、って顔だ。

しばらくして、テネシンは少し落ち着いた顔で、俺に聞いた。

「こいつが人気者だとして、それが何だってんだ」

「レアモンスターってあるだろ?」

「ああん? ダンジョンに、たまにしか 出さない(、、、、) ヤツか?」

「うん、普通でもない、ダンジョンマスターでもない、レアモンスター」

「それがどうした」

「それを彼女の姿にする事は出来ないか? もちろん彼女をダンジョンに閉じ込めないで」

「こんなんか」

テネシンは少しの間俺を見つめて、パンパン、と手を叩いてモンスターを呼び出した。

まるっきりマーガレットと同じ見た目の、マーガレットもどきだ。

「そうそうそれそれ。これをたまにでいいからダンジョンに出して欲しい」

「こんなんで人が呼べるのか?」

「まだ分からないか?」

「は?」

なに言ってんだ? って顔をするテネシン。

しかしその直後に――。

「これは……ぞろぞろ入ってくる。なんだこいつらは、行列とか作ってるぞ。行儀良すぎてきもちわりい!」

「どうやら分かったようだな」

そしてセルはきちんとやってくれたようだ。

セルに頼んだのはデモンストレーション――先行イベントの様なもんだ。

レアモンスター・マーガレットもどきとふれあうことが出来るテネシンダンジョン。

それを宣伝して、マーガレットのファンを集めた。

宣伝時間はたったの一日――いや半日程度だな。

それでもたくさん集まった。テネシンがぎょっとするくらいたくさん集まったようだ。

「おい一万超えたぞ、まだ増える……どんだけ来るんだこのやろ!」

俺を怒鳴るテネシン。

その顔は今までで一番ニヤニヤしていた。

「これが彼女の集客力だ」

「…………」

テネシンはニヤニヤしながら無言でマーガレットを見つめた。

マーガレットはちょっと引いた。うん、わかる。

分かるけどテネシンのニヤニヤは入場者が多いってだけだから。

「本当かどうかは、これを入って来た人達の前にだしてやれば分かる」

「ふ、ふん! てめえの言うとおりになんかするか」

そう言いつつも、目の前のマーガレットもどきが消えた。

「歓声……なんで全員拝んでんだおい! しかも自主的に行列作り始めたぞおい!」

と、ちゃんとマーガレットもどきをダンジョンにいる彼女のファン達の前に出したようだ。

ちなみにマーガレットもどきは弱い。

彼女はレベル99、カンストしても全能力Fだ。

テネシンダンジョンの「もどき」で才能限界に達してても多分弱い。

その証拠に、ファンの護衛を頼んだセルが、「何かあったらすぐに知らせろ」と言いつけたセルが何もいってこない。

ファン達の「詣で」にも最適な相手と言える。

「これで彼女の人気と集客力は分かっただろ?」

「ああ、本物みてえだな」

「これをもっとあげる事ができる」

「――、ふ、ふん。そんな事やったら人間どもが増えるだけだろうが」

意地を張ってても、そっぽ向いてても、チラチラと俺を見るテネシン。

俺は、割合弾を取り出して彼に見せた。

「これ」

「それはてめえにやったものじゃねえか」

「この力を俺じゃなくて、彼女に。マーガレット・テネシンにする」

ダンジョンの名前を名乗れる、精霊付き。

レアモンスターはマーガレットもどきだが、本人がダンジョンと精霊の力をもつマーガレット・テネシンになれば、マーガレットもどきは実質本物になる。

アイドル、偶像とはそういうものだ。

むしろ完全に本物じゃなくて、「九割本物」とかそういう感じで、本物よりも気楽に会いにいける可能性すらある。

そう思った俺は、更にテネシンを説得する。

「そうすれば彼女のファンはもっとくる」

「もっとくる……」

「そう、もっとだ」

「もっと……」

断言する俺、つぶやくテネシン。

俺が示した未来に、テネシンはすっかり虜になっているのがわかった。