軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

311.テネシンが一晩でやってくれました

テネシン一階。

ダンジョン村の建設が順調に進んでいくのをセルと一緒に眺めていた。

「まるでシム○ティだなあ」

「はじめて聞く名だ。どのようなものなのだ?」

「そうだな……あれみたいなもんだよ」

俺は離れたところに置かれている、村の設計模型をさした。

台座があり、その上に数百分の一くらいに縮小して作った村の模型が置かれている。

学生の時、建築学科の同級生がよくこういうのを作ってるのを見てるから、ちょっと懐かしい気分になった。

「ああいうのをもっと手軽に作れるものだ。リアルタイムで建っていく光景もみられるから、眺めてるだけで結構面白い」

「さすがサトウ様。余の知らない事もよく知っている」

「それはいいんだけど……」

俺は困った顔で模型に近づき、村の中央に鎮座している俺の銅像、フィギュアサイズの銅像を取り上げた。

「これは無しにしてくれ」

「なぜだ。ここに村を作れるのはひとえにサトウ様の尽力によるものだ。それを常時知らしめなくてはならん」

「知らしめなくていいから」

「サトウ様の名前を冠した村もある、銅像など今更のことだ」

「普通の村ならそれでいいんだけど」

俺は真顔でセルを見た。

「ここはフロアマスターが村から出られない事前提、今でも一年は出られない様になってるんだ。作るなら俺の銅像じゃなくて担当フロアマスターの像を建てるべきだ」

「むぅ」

呻くセル。

不満げな顔をしている、俺の銅像をおけないのはものすごく不満、って顔だ。

が、そこで無理矢理意見を通そうとはしないのがセルだ。

「……確かにサトウ様のおっしゃる通りだ。仕方ない、銅像は全て余の屋敷でそのまま飾っておこう」

「もう作ってあるんか!」

ツッコミはしたが、先回りして銅像を造ってあるのもまた彼らしい。

改めて、建設の様子を眺める。

「順調だな」

「建設そのものは」

「何か問題があるのか?」

気になって聞き返した。セルがこんな奥歯に物が挟まったような物言いをするのは珍しい。

「フロアマスターが一年経たないと出られないからそっちはいい、と言う話が」

「? ……ああ、通常時の出入り」

セルは頷いた。

ほとんどのダンジョンと同じように、テネシンの次の階に行くための階段が階ごとに場所が違う。

階段と階段の距離が遠く離れてる。

一気に上がったり、降りたり出来ない構造だ。

フロアマスターは年一の出入りだからいいけど、他の人達は不便でしかない。

上の階に行けば行くほどそうだ。

最上階のフロアマスターの 通販(、、) を発送するのも一苦労だ。

「まるでテレビ局だな」

「なんだそれは?」

「うーん、セルの屋敷とかそういう構造になってないか? 不届き者の侵入時間を稼ぐために、階段を一本化じゃ無くて、あっちこっちに散らばらせてるの」

セルは頷く。

やっぱりある程度いくと、そういう作りに行き着くんだな。

俺がそういうのを知ったのは、元の世界のネットで見たからだ。

テレビ局はテロリスト対策のために、あえて階段を散らばらせてわかりにくくしてるって。

それが図らずも、今のテネシンと同じ状況になってる。

そしてテネシンはそういう必要がない。だから不便でしかないとセルは言う。

「階段が一箇所に固まっていればそこに村を作ればすむのだがな」

「そうだなあ……」

「やあ」

転送部屋を使って、テネシンのところにやってきた。

「……」

驚愕するテネシン。

目尻が裂けそうな勢いで目を見開いて驚いた。

「てめえ、どうやってここに」

「うん? ここって人間は絶対に来れない場所だった?」

「んなこたねえ、ねえが……ほいほいこれるもんでもねえぞ」

「そうか、ならいい」

絶対に来れないわけじゃない、って分かれば十分だ。

つまりは今までの精霊達と同じ。

人間でも、超低確率で来れてしまう。

ドロップSの俺なら確実で、転送部屋を保有してるからもっと普通に来れる。

テネシンは驚いているが、スルーすることにした。

「おっ、スイカを食べてたのか」

テネシンの前に置かれているのは、半分に切った黒玉スイカ。

そのスイカのまん中だけスプーンでえぐった感じで、一口だけ食べられている。

それが複数――合計で7個ある。

ちょっとクスッときた。

前に来たとき、テネシンに教えてあげたヤツだ。

「どうだ、スプーンでスイカのまん中だけ食べるとより美味いだろ」

子供の時母親がそれをしてた。

スイカを切ると、真っ先にスプーンでまん中の一番甘いところを自分でたべてから切り分ける。

子供の俺が自分も食べたいって訴えても、これは大人しかやっちゃだめと意味不明な事をいう。

前に教えてあげたヤツを、テネシンが試して、しかもやり続ける位気に入ってるのがうれしかった。

「ふ、ふん。人間にしては悪くない発想だ」

「そうか。にしてもそれもったいないな。せっかくの高級黒玉スイカだし、残りも食べてしまおう」

俺はそう言って、スイカに近づき手を伸ばすが、先んじてテネシンがそのスイカを消してしまった。

「あれ? ダメだったか?」

「むっ……ふ、ふざけるな! 俺に恥をかかす気か」

「恥?」

「そうだ! この俺が食ったものを人間に食べられるとか精霊の恥だ。てめえはこっちだ」

強く言って、テネシンは手をかざしてスイカを出した

半分に切った、まん中の一番あまいところが健在な黒玉スイカを――合計で十個。

ご丁寧に、全部スプーンが添えられている。

「いいのか?」

「ふん、とっとと食え!」

「それはいいけど、多いな」

「お、多くしねえと、いやしいてめえが俺のも狙ってくるだろうが」

そう言ってそっぽ向いてしまうテネシン。

だがよく見るとおれの方をチラチラ見ている。

出会って間もないが、だいぶ彼の性格を掴んできた俺は、十個の黒玉スイカに全部、スプーンでまん中の一口だけ掬って食べた。

それをやると、テネシンは密かに満足げな顔をした。

「ごちそう様、すごく美味しかった」

「ふん、当たり前だ。人間には過ぎたる味だろうがな」

そう言いながらも、まんざらではなさそうなテネシン。

これならいける、と俺は来た目的を切り出した。

「なあ、一つ頼みたいことがあるんだが」

「俺に頼みだと? ふざけんな、つけあがるのもいい加減にしろ」

「だめか」

「……言って見ろ、てめえのふざけた性根をたたき直すのはそれからでも遅くねえ」

「階段を一本化してくれないか」

「階段?」

「ああ。今だと階段と次の階段が離れてるだろ。それだと不便なんだよ。一本化してくれると助かるし――人が来やすくなる」

「人が来やすい……」

最後にそう付け加えた。

テネシンにとって効果的な一言のはずだ。

テネシンは思わず考え込むようになったが、すぐにハッとして。

「ふざけるな! そんな事をしたら人間どもがもっとつけあがるだけだ」

「だめか」

「当たり前だ! とっとと帰れ!」

テネシンはそう言って、俺を追い出した。

逆に俺がチラチラした。

出会って間もないが、ここでテネシンが「フ、フン! しょうがないからやってやる」でやってくれるものだとおもったから、立ち止まってチラチラしたが。

「何をしてる、かえれ!」

予想に反して、テネシンは有無を言わさず俺を追い出そうとした。

うーん、読み違えたか。

テネシンの今まで反応ならいけると思ったんだがな。

仕方ない、別の方法を考えるか。

そう思って、俺は引き下がった。

翌日。

翌日、セルが屋敷に直々にやってきた。

「やったぞサトウ様。テネシンの階段に変化が起きた」

「お?」

「一階から最上階まで直通出来るようになったぞ!」

セルの報告に、俺は苦笑いする。

結局やってくれたのか、と。