軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

308.ニホニウム大活躍

ニホニウムと見つめあった。

彼女はまっすぐ俺を見つめ返して、一歩も引かなかった。

表情はいつもの如く穏やかだが、目が真剣だ。

「分かった」

「では……?」

俺は頷き返しつつ、少し考えた。

頼むとなったら、遠慮はない方がいいな。

やらないならやらない、やるならやる。

その方が絶対にいい。

折れて頼んだはいいけどその内容にも遠慮が残ってしまうのが一番良くない。

ニホニウムが自ら申し出たのなら、なおさら。

それらを踏まえて、あえて踏み込む――で少し考えた結果、俺はニホニウムに告げる。

「見た目だけでわかる様にしたい」

「それどういうこと?」

アウルムが不思議そうに聞いてきた。

「今テネシン一階のモンスターは俺もどきになってる。俺が関与しているアピールのために」

「だね」

「ニホニウムがこれからやるのはドロップをなくす事。ならそれも俺が関与してるって、一目で分かるようにしたい。『あれぇおかしいな』じゃなくて、『これもリョータかよ!』って感じで」

「ふむふむ、なるほどなるほど」

頷き、納得するアウルム。

彼女はニホニウムに振り向き、聞いた。

「って事らしいけど、それできる?」

「ええ」

ニホニウムはほぼノータイムでうなずいた。

事もなさげに。まるで「造作も無い」と言わんばかりに即答したのだった。

善は急げ、って事で俺たちはテネシンにやってきた。

転送ゲートを通ってやってきたテネシン一階。

俺とアウルムとニホニウム、そして当たり前のように二人の精霊にゲートを通らせたミーケ。

四人で、テネシンの一階に降り立った。

「で、どうすんの?」

「もう終わりました。分かりませんか?」

「うん? どゆこと?」

「……俺は分かる」

「はあ? 本当にどゆこと?」

まったく理解できないと首をひねるアウルム。

よく見ればミーケも似たような反応だ。

モンスター、精霊には分からないのか? それともニホニウムのこれは例外なのか?

それは分からないが、二人には説明してやった。

「ダンジョンマスターの気配だよ」

「ああ、もうしたの?」

「ええ」

「あんたんとこのダンジョンマスターをここに出したって事ね。でもそれじゃリョータが絡んでるってわからないじゃん?」

「いいえ、分かりますよ」

「なんでさ?」

「……ああ、わかるな。そしてこれはエグい」

「だからなんの話――ひゃっ!」

こっちを向いたアウルムがぎょっとした声を上げた。

俺を見てアウルムは俺の目線の先に目を向けた。

そこには、数体の俺もどきがいた。

ただの俺もどきじゃない。

全員がダンジョンマスターの気配を放っているとんでもない奴らだ。

一体だけじゃない、全員。

全員がダンジョンマスターの気配を放っている。

「これって、つまり……」

「はい。全てにダンジョンマスターの属性を乗せました。それだけです」

「それだけって――ヤバイ逃げよう」

俺はニホニウムとアウルム、そしてミーケをゲートの中に押し込んで、慌てて屋敷に戻ってきた。

ダンジョンマスターの属性が どこまで(、、、、) のものなのかはわからないが、十中八九弱くはならない。

ただでさえ強い俺もどき、そこにダンジョンマスターの属性上乗せで強化するようなことになれば、あそこはもう地獄と言っていい。

だから俺は慌てて、三人をゲートに押し込んで戻ってきたのだ。

戻ってきて、落ち着いた俺はニホニウムに向かって。

「ありがとう!」

と言い。

ニホニウムは穏やかに微笑んだのだった。

次の日、シクロダンジョン協会会長室。

俺はセルに会いに来て、会長室の中で彼と二人っきりで顔をつきあわせた。

用件は、もちろんテネシンの事――なのだが。

部屋の隅っこにあるクローゼットだかロッカーだかの収納が、ぎちぎちに何かを詰め込まれてて、膨らんで今にも中のものが飛び出しそうな感じだ。

押し入れにものを詰め込んで開けたら雪崩が起きる、それと同じ不安感を覚える。

「あれはどうしたんだ?」

「なんのことだ?」

セルはすっとぼけた――が。

バキッ!

蝶番が弾けた音がした、ドアがちょっと外れて、中のものが見えた。

頭が、ひょっこりと顔をだした。

俺の銅像だ。

「……」

セルは無言で立ち上がり、無言で飛び出た俺の銅像を押し込み、力尽くでしめた。

そして戻ってきて、俺の向かいに座って。

「今日はダンジョン日和だな」

「隠す気実はないだろ!」

俺は盛大に突っ込んだ。

ああ(、、) なってるって事は、普段この部屋は俺の銅像でぎっしりって事だよな。

俺が来たから急遽押し込んで取り繕った、って訳だ。

「……ごほん」

咳払いして、仕切り直した。

セルのそれはいつもの事、突っ込んでもしょうがないことだ。

だからそれをスルーして、来た用件を切り出した。

「向こうとの交渉はどうなってるんだ」

「もはや時間の問題、という段階だ」

「大丈夫なのか?」

「余はできない事は口にしない」

自信たっぷりのセル。

あの(、、) 趣味をのぞけば超有能な人間だから、今の返しもむしろ格好良く見えてしまった。

「サトウ様に隠す必要もないが、すでに金額交渉の段階に入っている」

「なるほど、だったら本当に時間の問題だな」

追加の説明に納得した。

造幣ダンジョンを一族でしきってるセルだ、金銭面でしくじりはしないだろう。

最悪札束で顔を叩けばいいこと。

「問題はテネシンの中で街を作るにあたってだが」

「何か問題でもあるのか?」

「これがサトウ様が究明してくれた情報だ」

そう言って、セルはローテーブルに紙の書類を置いた。

「結論から話せば、街を作る工事の最中は、誰一人として攻撃を受けてはいけない」

「……そうだな」

少し考えて、俺はその理由を理解した。

攻撃を受けると影がもどきになって強くなるのはもちろん、それを戻すのもかなりの手間だ。

「誰かが攻撃を受けてしまうと、それだけで工事は数日単位でとまる」

「なるほどな。うん、言われて見ると確かに工事中は誰一人として攻撃を受けちゃダメだ」

「それはハードルが高い、正攻法ではない、なにか別の方法を模索している最中だ」

「それなら大丈夫だぞ」

「え?」

テネシン、二階。

屋敷の転送部屋経由で、セルをここに連れてきた。

俺はスタスタと先に進んだ。

「待ってくれサトウ様、余は戦闘能力を持たぬ――」

「それなら大丈夫だぞ」

「え?」

更にスタスタ進む、セルを連れて進んで行く。

ダンジョン生まれでもない俺は、エンカウント無しで三階に上がる階段にやってきた。

「これは……モンスターがいない?」

「気づいたか。まあここまでわかりやすいとな」

「どういうことなのだ?」

「ちなみに――」

答える代わりに階段を上って行く、セルはついてきた。

三階も、モンスターなどいないもぬけの殻だ。

「――こんな感じだ。ああ、上の階もおなじだ」

「これは……どういう事なのだ」

「ニホニウムに協力をしてもらって、ダンジョンマスターにしてもらった。一階限定でな」

「ニホニウムに!?」

驚愕するセル。

当然だ、テネシンじゃなくてニホニウムだと言われればそうもなる。

が、それも一瞬。

セルはすぐに平然となって、ふっ、と笑って。

「さすがサトウ様だ」

「で、これはやって思いついたいわば副産物だが、実際の建設の時は塔の外にダンジョンマスターでも置こう。ニホニウムの広範囲なら外にいても全階層モンスター無しだ」

「おおっ!」

セルが感嘆の声を上げる。

「既に対策を講じていたとは、さすがサトウ様だ」

バキン!

蝶番が二度弾け、「俺」のドヤ顔が再び顔をのぞかせたのだった。