作品タイトル不明
292.精霊の信頼
アリスと一緒に屋敷に戻ってくると、想像していた以上の光景が広がっていた。。
贈り物の山は屋敷の外まであふれ出している。
屋敷に入りきらなかった分も、馬を外した荷馬車ごと庭に置かれている。
一つ一つはちゃんとした包みで、何やら豪華な宝箱に入ってるんだが、ここまでごちゃごちゃと積み上げられてると――
「まるでゴミ屋敷に見えてしまうな」
「どうしよっか」
「そうだなあ」
「あたしんとこで預かろっか?」
「うん? アウルムか」
横から提案してきたのはミーケを抱っこしてるアウルム。
アウルムダンジョンの主、悪魔のような見た目の少女はすっかり屋敷に馴染んで、当たり前のように俺の横に立っていた。
「預かるってどういう意味だ?」
「言葉通り。あたしの部屋、広さが実質無限大だしさ」
「アウルムの部屋……精霊の部屋か」
アウルムが頷く。
なるほど、あそこか。
精霊の部屋という異空間で広さを気にしたこともなかったが、なるほどそういうものなのか。
「とりあえずあっちに放り込めば、屋敷は普段通り使えるじゃん?」
「……いや、それはまずい」
「遠慮することないのよ? あたしとリョータの仲じゃん?」
「いや、遠慮とかじゃないんだ」
「じゃあどゆこと?」
小首を傾げるアウルム。
その理由を説明しようとした――が、その必要はなかった。
ドォーン!
論ずるよりも証拠――と言わんばかりに屋敷の反対側で爆発が起きた。
「どういう事?」
「あっ! モンスターだよあれ、ハグレモノが出ちゃってるよリョータ」
ダンジョン生まれのアリスが先に気づいた。
アリスが慌てて教えてくれた直後に、屋敷の裏からモンスターが飛び出してきた。
巨大な目玉のオバケ、それだけじゃなくて目玉から更に触覚が伸びて、そこに小さな目玉がついてるモンスター。
屋敷の反対側からエミリーとセレストが追いかけるように飛び出して、モンスターに飛びかかっていった。
自分の体よりも巨大なハンマーをぐるぐる回しながら飛びつくエミリー、バイコーンホーンを魔法の杖のようにかざしながら大魔法を詠唱するセレスト。
「こうなると思ったよ。ものを積み過ぎちゃまずいんだ。積み過ぎると、 人間が届かない(、、、、、、、) 場所が出来てしまう」
「あっ、それでハグレモノが……」
「そういうことだ。ものを全部アウルムの部屋に放り込むことができるだろうが、そっちでハグレモノ化したらエラいことになる。怪獣大戦争だ」
「そっかー」
「どうするのかはおいといて――ちょっと行ってくる」
初めて見るモンスター、ゲイザー。
セレストとエミリー、二人が苦戦していた。
二人の苦戦の内容を見て、分析して。
「エミリー、セレスト」
「ヨーダさん!」
「リョータさん!」
「後は任せろ」
「はいです!」
「ええ!」
エミリーとセレスト、二人はゲイザーと向き合ったまま、戦闘態勢で警戒状態のまま後ろに下がった。
代わりに俺が戦いに参加した。
二人の戦闘を見て分析してゲイザーの弱点に、特殊弾を乗せた銃口を向けた。
☆
「あんたがニホニウムだね」
「えっ……あなたは……?」
屋敷の中、戦闘をぼうっと眺めているニホニウムの所にアウルムがやってきた。
リョータファミリーが暇な時に集まるサロンの中もプレゼントで埋まっていて、その中でニホニウムが一人ぽつんと座っていた。
そんなニホニウムの前に、アウルムがやってきた。
「アウルム、っていえば分かるよね」
「……あなたが」
「ふっしぎなもんだよねえ。まさかあたし達があう日が来るなんてさ、そんなの今まで思ってもなかったよ」
「……ええ、そうね」
「窓から見えただけで勘違いだって思ったらそうじゃなかったわ。なに辛気くさい顔をしてるのさあんた」
アウルムはペシッ、とニホニウムの頭をはたいた。
はたかれた頭を抑えて、頭に「?」なマークをいくつも浮かべたような不思議な顔でアウルムを見つめ返すニホニウム。
「あんたの話は聞いた。気持ちはわかるよ」
「……」
「アルセニック、セレン、プルンブム、フォスフォラス、でアウルム。これなんの事か分かる?」
「……?」
「リョータがなんとかしてきたダンジョンの名前。リョータはすごいんだからね、ほら」
アウルムが手を上げて、指をさした。
彼女が指さす先で、リョータが初めて遭遇するモンスター、ゲイザーをあっさりと瞬殺していた。
豊富な戦闘経験と高い能力値、所有する数々の強力なアイテム。
それらを駆使して、リョータは被害が最小限――屋敷の一部が破壊された程度に抑えて、ゲイザーを倒した。
「リョータがその気になればやれない事はないんだ。あんたの問題なんてそのうちちょちょいのちょいで解決するんだから、適当にのんびり待ってなさいよ」
「そんなに……信じているの?」
「……うん、ちょっと一緒に来て」
「え? ど、どちらへ」
「会いに行くの、アルセニックとかセレンとか、プルンブムとか絶対あっとくべきだね」
「あ、会う? どうやって……いえ、そもそも会ってどうする――」
「怒ってもらう」
「え?」
「リョータに助けを求めておいてそんな顔でリョータを信じてないイジケ虫をみんなに怒ってもらう。ミーケ、転送でみんなの所に行けるよね」
「お任せを、全部一度連れていってもらってます」
「よし、いこう!」
アウルムはそう言って、ニホニウムを無理矢理引っ張っていった。
山ほどの贈り物は、人間側からの信頼。
アウルムがニホニウムを引っ張っていくのは、精霊側の信頼。
人間からだけじゃなく、リョータは、精霊達からも強く信頼されていた。