軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

29.最高のマネージャーと新しい武器

計画を建てた。

朝、いつもの温かいマイホームで朝ご飯を食べながら、エミリーに切り出す。

「二日、いや三日くらい家を空けたい」

「どこか行くですか?」

首をかしげるエミリー。

130センチのエプロン姿はもはや堂に入ったもので、みてて実家の様な安心感を覚える。

それをしばらくの間でも切り捨てるのは後ろ髪を引かれる思いだが、今すぐにやりたいのだから仕方がない。

そう、やりたい事がある。

「少し金が入り用になった。大体150万ピロだ」

「そんなにですか!?」

「ああ。知ってるダンジョンの階層で安定して稼げば三日くらいでいける計算だ」

もちろんほぼ不眠不休でその計算だけど、それはあえて言わない。

のんびりするこの世界での生活はものすごく気に入ってる、が今はとにかく目的のために金がほしい。

「だから三日間家をあけるですね」

「そうだ。家を空けると言ってもテルルにずっといる」

「分かったです」

エミリーはあっさり聞き入れてくれた。

なんか言われても困るし、ありがたい――と思っていた。

「わたしも行くです」

「――え?」

「三日間、ヨーダさんのお手伝いをするです」

エミリーは満面の笑顔で、さも当然と言い放ったのだった。

テルルダンジョン、地下一階。

スライムが現われた。

魔法カートの上に誘導して、通常の銃弾で撃ち倒して、ドロップのもやしをそのまま入れる。

それを繰り返して、4万ピロ分あっという間にたまった。

「では持っていくのです」

「いいのか本当に?」

「はいです。ヨーダさんのお手伝いをするのです」

そう言って、魔法カートからもやしを出して、リュックに詰め直すエミリー。

「何してるんだ?」

「よいしょっと。それじゃ換金しにいくです、魔法カートはヨーダさんが使うのです」

「いや重いだろ――」

「大丈夫なのですよー」

エミリーは笑顔でいって、リュックを背負って去っていった。

小柄な体がほとんど隠されてしまう程の大量なもやし、それが入ったリュック。

傍から見ればリュックが浮いてるか、勝手に動いてる様に見える。

それでも、エミリーの足取りは軽快だった。

130センチで百キロ以上のハンマーをぶん回す力Aの女の子、さすがだ。

……彼女がここまでしてくれるんだ、頑張らないとな。

一人になった地下一階で更に魔法カートを押して回った。

スライムを撃ち倒して、もやしドロップ。

スライムを撃ち倒して、もやしドロップ。

もやしがちょうどいっぱいになったあたりでエミリーが戻ってきた。

「お待たせです」

「また満杯になった」

「持っていくのです」

「悪い。あっ、それと次はニンジン行くつもりだから」

「はいです。じゃあ地下二階までいくですね」

「頼む」

もやしを渡した後、今度は地下二階に行って、眠りスライムからニンジンを収穫。

撃って撃って撃ちまくって、4万ピロ相当のニンジンがあっという間にたまった。

たまった、が。

「まずい、弾が切れそう」

三巡目で銃弾が切れかかった。

正確には通常弾が切れそうになった、冷凍も火炎も回復も、特殊弾はまだ結構残ってる。

だけどそれを使うのはもったいない。

仕方ない、若干効率落ちるけど素手に切り替えるか。

「お待たせなのです」

「エミリー」

「ニンジンたまってるですね、持っていくですよ」

「頼む。ああ次からはのんびりでいいぞ、多分効率落ちるから」

「あっ、それなら大丈夫なのです」

「え?」

「一緒に来るのです」

エミリーに手を引かれて、ダンジョンを一緒に出た。

途中でどうしたんだって聞いても、エミリーは答えない。

やがて人気の少ないとこにやってきて――そこにイヴがいた。

自前のウサミミと露出の高いバニースーツを着た不思議な少女だ。

「お待たせなのです」

「ニンジン……」

「はいです」

エミリーはリュックのニンジンを一本とって、イヴに渡した。

「ちゃんと……サトウニンジン」

イヴは大好物のニンジンを受け取って、ほっこりした。

「あ……」

かと思えばいきなり走り出した。

かけていった方角をみる、そこに十匹くらいのスライムがいた。

イヴはまるで牧羊犬の如く、スライムを一箇所にまとめていた。

「ハグレモノ?」

「イヴちゃんに頼んだです、もやしから戻ったスライムをここで監視しておくようにです」

「その報酬がニンジンか」

「さあヨーダさん、弾を補充するのです」

「――っ」

びっくりした、そして感激した。

エミリーは、おれの残弾数を把握してて、その上で一部のもやしをハグレモノ化するように取っておいて、更にそれを押さえとくための助っ人のイヴを呼んだ。

「ヨーダさんのお手伝いをするのです」

「お手伝いってレベルじゃないぞ……ありがとう!」

「どういたしましてなのです」

エミリーはものすごく恥ずかしそうに頬をそめて、4万ピロ分のニンジンを担いだまま、風のように去っていった。

今の目的を達成したらお礼をしないとな。

おれは用意してもらったハグレモノで銃弾の準備をして、更にダンジョンに潜るのだった。

モンスターを倒して、アイテムドロップを集めて、エミリーに換金してきてもらう。

倒しまくって、銃弾が切れそうになったらニンジン一本持って地上にでて、イヴのところで銃弾を補充する。

補充して戻ってきて、またモンスターを倒して行く。

一心不乱にとにかくモンスターを倒す事に専念。

朝が過ぎて、昼が過ぎて、夜になった。

深夜もやり続けて、二日目の朝がきて、昼になって、夜になった。

二日目の夜、エミリーから。

「目標の150万ピロたまったのです」

といわれ、予定よりほぼ丸一日早くでの達成で。

おれはますますエミリーに感謝したのだった。

150万ピロを使った、マグロをまる一尾買った。

さすがマグロ、丸ごと買うといい値段がした。

深夜、シクロ郊外。

誰もいない所に置かれてるマグロを見て、鼓動が次第に高まっていく。

徹夜のハイテンションもある、そしてこれから起きることへの期待もある。

それが合わさって、ものすごく心拍数が上がった。

やがてマグロがハグレモノ化して――ゴリラになった。

かつて街中で暴れ回った、家と同じくらい巨大なゴリラ。

「ヨーダさん」

「ここはおれが。おれが倒さないとダメだから」

「ハイです」

エミリーは笑顔でおれを送り出した。

巨大ゴリラに向かって行く、銃に弾を装填する。

前は苦戦したが、今はもう大丈夫。

ゴリラはこっちに気づいた、腕を振り上げて、鋭い牙をもつ口を開け放って、威嚇しつつ向かってきた。

弾を連射した、まずは冷凍弾。

外しようがない図体に全弾命中して、ゴリラは頭を残して全部凍った。

「ぐおおおおお!」

咆吼が轟く、背筋がぞっとする怒りの籠もった咆吼だが、もはや断末魔にしか聞こえない。

銃弾を装填しなおす、ゴリラの凍った体を登っていく。

「トドメだ」

頭に向かって、通常弾を連続でぶち込む。

弾倉を一回撃ちきって、装填しなおして更に全弾ぶち込む。

それでようやく、ゴリラの頭が吹っ飛んだ。

程なくして、ゴリラの巨体が消えて。

前と同じように、銃弾と拳銃――二丁めの拳銃が、ドロップSの力によってドロップされたのだった。