軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

285.急がば回れ

ポータブルナウボートで現在のステータスを確認する。

―――1/2―――

レベル:1/1

HP SS

MP SS

力 SS

体力 SS

知性 SS

精神 SS

速さ SS

器用 D

運 SS

―――――――――

ドラゴンゾンビを連続で倒して、器用の値をワンランク上のDに上げた。

カウント1のヤツがそこそこ出たから効率が悪くて、気づいたら夕方、いつもの帰宅時間になっていた。

ニホニウムの精霊に会いに行く方法がはっきりしたから、もう一踏ん張りしていくか――。

「――いや、やめとこう」

すぐに考えを改めた。

無理はやめよう。

そもそも会社にいた頃はそれでぶっ倒れたんじゃないか。

あの時の二の轍を踏むのはやめよう。

それに――。

次の日の朝、朝ご飯の後、俺はプルンブムに会いに来た。

「おお、待っておったぞ」

いつもの様に俺の絵を描いていたプルンブムが、顔を上げて嬉しそうに微笑んだ。

昨日無理をしなかったのは、毎日プルンブムに会いに来るって約束をしているからでもある。

無茶して、徹夜とかしてステ上げをすると、のめり込みすぎて確実にこっちをすっぽかすことになる。

そうならない様に、昨日は普通の時間で切り上げて、しっかり彼女に会いに来れるようにした。

アウルムとも似たような約束をしていたが、アウルムの場合好奇心はあっても裏切られたからっていううらみはなかった。

プルンブムは違った、かつて裏切られたと感じているから、またそうさせないためにこの約束は守りたいと思っている。

今日もプルンブムは笑ってくれた事にこっちまで嬉しくなりながら、彼女の横に腰を下ろした。

「……」

「どうした、俺の顔をジロジロ見て」

「そなた……何かあったのかえ?」

「え?」

「顔つきがいつもと違うのじゃ」

「いつもと違う?」

プルンブムに言われて、俺はベタベタと自分の顔を触った。

いたって普通の、いつもの自分の顔に感じるが。

「何か悩みを抱えているのかえ?」

「なんでそう思う」

「妾を甘く見るでない、ずっと見てきたのじゃ、それくらいは分かる」

プルンブムのストレートな台詞、こっちが恥ずかしくなりそうな台詞だ。

「なるほど。うん、確かに一つだけ悩んでる――いや困ってるっていった方がいいなあれ」

「なんじゃ。妾に話してみよ」

「しかし……」

「妾は」

「うん?」

「何でも無いことをそなたに話すだけでも気分が楽になる」

「そっか」

今日来て良かったと思った。

そんな事を俺は一度もいったことはない、だからこれは、プルンブムの体験から来るものだ。

俺と話すことで彼女が色々楽になるのなら、今まで来て良かったし今日ちゃんと来て良かったと思う。

「実は――」

俺は困っている事、ドラゴンゾンビのカウント1で困ってる事を彼女に話した。

助けをもとめる訳でもなく、ただ、彼女が話して欲しいと言うから話した。

黙ってそれを最後まで聞いたプルンブムは、すっくと立ち上がって、手を無造作に振った。

空中に一匹の亀が現われた。

大人が乗れるくらい巨大な亀で、甲羅の表面がまるで宇宙を想像させる様な不思議な紋様だ。

「これは?」

「妾のダンジョンのレアモンスターの一体、クロノタートルという名じゃ」

「クロノタートル」

「こいつを倒してみよ。甲羅はあらゆる攻撃を弾くくらい堅いが、常に一番輝いているところがもっとももろい」

ダンジョンの精霊直々に弱点を教えてもらって、俺は銃を抜いて、成長弾を教わった所に打ち込んだ。

効果は抜群、クロノタートルは一撃で撃ち抜かれ、プルンブムダンジョンの他のモンスターと同じように、空中にプカプカ浮かぶ液体をドロップした。

「これは?」

「人間達が『時の雫』と名付けたものじゃ」

「時の雫?」

プルンブムはそう言って、もう一回手を振って、同じクロノタートルを召喚した。

そのクロノタートルに時の雫をぶっかけた。

すると、カメは色を変えて、そのまま固まった。

「凍った……? いや、名前からして――時が止まった?」

「うむ」

小さく、しかしはっきりと頷く。

「かけた相手の時を止めるアイテムじゃ。そのドラゴンゾンビとやらに使えるのではないか?」

「……ッ!」

ニホニウム地下九階。

プルンブムの所からここにやってきた俺は、ダンジョン内を歩き回って、カウント1のドラゴンゾンビを探した。

すぐに目当ての相手が見つかった。

そっと近づき、時の雫をドラゴンゾンビにぶっかけた。

さっきのクロノタートル同様、ドラゴンゾンビはとまった。

色あせて、動かなくなった。

カウントは1のまま。

そいつに向かって、銃弾を連射。

二丁拳銃に込められた銃弾を撃ち尽くしても、カウントは1のままだった。

「よしッ」

思わずガッツポーズした。

更に試す事にした。

時を止められたドラゴンゾンビに、これまでカウント1には使えなかった無炎弾を撃つ。

融合して見えなくなった業炎は、カウント1のままドラゴンゾンビを焼いた。

体が半分焼き尽くされても、ドラゴンゾンビは時を止められる直前のまま動かない。

やがて、時間が動き出し。

ポン、と器用の種がドロップされた。

時の雫、カウント1のドラゴンゾンビに効果を発揮した。

一回だけじゃ不確定だから、もう一回試すことにした。

ダンジョンの中を歩いて回って、2から5のドラゴンゾンビを全部無視して、1だけを探す。

「むっ」

1が見つかった――が二体同時に出てきた。

テストをするとき複数だと困る、片方を適当に逃がすか――と思って銃を構える。

「……」

動きが止まった。

視線が構えている銃にとまった。

頭の中で何かがよぎった。

一瞬のひらめき。

いける! と分かるが、内容がまだぼんやりしている。

指の隙間からこぼれる水のような何かを、必死にすくい上げようとする。

しばらく集中して考えると、それがはっきりとした形になった。

時の雫を取り出して、銃にぶっかけた。

愛用している拳銃は、まるで凍ったかのように色あせて、時が止まった。

時が止まった銃から同じようにとまった弾丸を抜いて、新たに通常弾を込める。

それを連射する。

カウント1のドラゴンゾンビに向かって連射。

カウントは――1のまま。

時の雫をぶっかけた銃で撃っても、カウントは減らなかった!