軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

277.経験値大量生産

翌日、屋敷のサロンでもう一度黄金の鍵を使った。

あの部屋に繋がるドアが出現して、昨日「00」になった数字が「02」に戻っていた。

「おお、戻ったです」

「つまり毎日元に戻るっていうことですね」

サロンにエミリーとエルザがいて、昨日テストに協力してくれた二人はテンションが上がっていた。

「そうみたいだな、鍵の数が一日入れる人数。一回入ると――」

「丸一日中に居れたです」

「中に時計がありました。入ってから丸一日経たないと出れませんでした」

二人の説明に頷く俺。

俺自身はまだ入ってないが、前に入ったアリスの説明と合わせて、どうやら一度入ると中で一日分の時間が過ごせるが、一日経たないとこっちに戻って来れない事がわかった。

そして。

「中の一日は外の一分くらいか。使えるな、これ」

「何かの締め切りとか、期限が迫ったときにすごく役に立ちますね」

エルザの言葉にはっきりと頷いて、同意を示した。

そのエルザを見て、俺はある事を思い出す。

エルザ、買い取り屋『燕の恩返し』の出向店員。

俺たちの魔法カートと転送機能で繋がってる、買い取り出張所の管理者。

「魔法カートの転送はどうだろう。それを使った出入りって出来るのかな?」

「試してみるです」

「そうだな、テストしてみよう」

「はいです、それじゃ私がいくです」

「いいのか?」

「私もやりたいことがあるです」

「なるほど」

何をやりたいのか分からないが、エミリーがそう言うのなら任せよう。

俺は彼女に鍵の一本を渡した。

「じゃあ魔法カートとかの準備をしてくるです」

鍵を受け取った彼女はスリッパをぱたぱたとならして、サロンから出て行った。

その場でしばらく待つが。

「……戻ってきませんね」

「そうだな……いや、もう入ったみたいだ」

「え? 本当ですね。数字が『01』になってます」

目の前のドアを一緒に見た。

さっきまで「02」だった数字が一つ減って、「01」になっていた。

「なるほど……鍵を持っていればどこからでも入れるのか。中は繋がってるのか?」

「繋がってました。昨日後から入った私はエミリーと会えましたから」

「ふむ……なら……一人一本だな」

性能の情報をまとめて、俺はそう判断した。

仲間全員に使える様に、そして鍵を持たせてどこからでも入れる様に。

場合によってはそれで集合も出来るように。

鍵は、一人一本になるまで集めた方がいいな。

そんな事を言ってると、ガシャン! って音が遠くから聞こえてきた。

「この音は……」

「出張所だな。そうか、戻ってこないのならそもそもここで待ってる意味はないか。魔法カートが転送してくる出張所に行かないと」

「そうですね」

頷くエルザと一緒に出張所に向かった。

するとそこにエミリーのハンマーがあった。

エミリーの魔法カート転送口から飛び出してきたハンマーは地面に転がっている。

「ただいまです」

俺たちが出張所に入った後、エミリーが少し遅れて――いやほぼ同時にやってきた。

「はやいな……いやもう一分経ってるか」

「はいです、中に一日いたです――不思議な気分なのです」

エミリーは出張所に入って、自分のハンマーをひょい、と持ち上げた。

130センチなのに巨大ハンマーを軽々と、相変わらずすごいパワーだ。

「確かにな、こっちは一分前に別れたばかり、エミリーからすれば一日ぶりか」

「はいです」

「魔法カートでは出てこれなかったのか?」

「だめだったです、通れたのはものだけなのです」

「なるほど……」

自由に出入り出来るのならと思ったが、そうは上手く行かないようだ。

…………いや。

「ちょっと俺もテストしてくる、二人はここで見ててくれ」

「はいです」

「わかりました」

俺は出張所を出て、自分の魔法カートをとりにいってから、手元のもう一本の鍵を使って、「01」になったドアを出した。

そのドアを開けて魔法カートをおして中に入ると。

「うおお!」

思わずひっくり返りそうになるくらい、盛大にびっくりした。

ドアの向こう、何もない空間だが、そこはまるで神殿の様な波動を放っていた。

明るくて、温かくて。

ものすごく安らぐ空間。

この感じ――俺は知ってる!

「エミリー……掃除していったのか」

最初のボロアパート、その次の2LDK、そして今の屋敷。

エミリーが家事を担当すると全てが安らぐ空間になったのと同じように、ここもものすごい事になっていた。

なるほど、やりたい事ってのは掃除の事だったのだ。

「にしても……すごいなエミリー」

俺は目の前の光景にちょっぴり感動した。

おっと、感動ばかりもしてられない、今はテストだ。

俺は押してきた魔法カートをとめて、離れた所に大量の通常弾をおいた。

そして距離を取って、待つ。

しばらくすると、通常弾からスライムが孵った。

もやしで作った通常弾、それが更にスライムに孵る。

スライムが襲ってきた、成長弾で撃ち抜いた。

するとスライムは元の通常弾――と、クリスタルをドロップした。

右手につけた指輪、ニホニウムのダンジョンマスターがドロップした指輪。

装備をすると、レベルカンスト後に余った経験値をクリスタルに具現化する効果があるアイテム。

これを使って経験値を「貯金」して、他の人に渡す事ができる。

ドロップした通常弾を、離れた所の通常弾の山に放り投げ、クリスタルを魔法カートに入れて、転送した。

更にスライムが孵って、襲ってきて、撃ち抜いて通常弾とクリスタルにした。

通常弾は戻し、クリスタルを魔法カートに入れて転送。

「……長丁場になるな」

俺は微苦笑して、気を取り直して、銃を構えた。

亮太が立ち去った後の出張所、残ったエミリーとエルザ。

二人が見守る中、亮太の魔法カートと繋がってる転送装置からクリスタルが飛び出した。

一つ二つ三つ――ものすごいハイペースで、間断なく飛び出してきた。

「わわ、すごいです!」

「リョータさん、むこうで量産してるんですね」

「……分かったです、スライムと通常弾でエンドレスなのです」

「そっか、銃弾は増えないけど、経験値は延々と稼げますね!」

「はいです! 一瞬でそれを思いつくのはさすがヨーダさんなのです」

そこから一分間の間、出張所で待つ二人の女は、亮太の判断と発想の速さに驚嘆し続けたのだった。