軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

275.完全不労所得

「今日はまだ戻らなくてもよいのかえ?」

すっかり日課になったプルンブムの訪問。

いつもの様に他愛もない世間話をしていると、プルンブムが急に聞いてきた。

どうやら普段よりも長居した事が気になったようだ。

「ああ、今日は仕事休むからいいんだ」

「休み……かえ?」

「ああ」

俺は宣言した通り、完全にくつろぎモードだった。

こっちの世界に転移してくる前は、100人中100人がブラック企業と認めるようなところで働いて、過労でぶっ倒れた経験がある。

そこまでやったのに何も報われなかったから、こっちの世界では適度に休むスタイルに切り替えた。

「だから、今日はもうしばらくここにいるよ」

「そうか……それはうれしいのじゃ」

プルンブムは てらい(、、、) がない。

思った事をいつもそのまま口に出す。ものすごく素直な女だ。

「そういえば、この前フォスフォラスとあったらしいな」

「うむ、珍妙な姿をしておったがな」

「ほかの精霊とも逢いたいか?」

「いいや」

プルンブムは否定しつつ、目はまっすぐ俺を見つめてきた。

「そなたが来てくれればそれでよい」

「そか。ならうちにくるか? フォスフォラスもそうだけど、アウルムもうちにいる」

「いいや」

この誘いにも、プルンブムは即答で断った。

「会いに来てほしいのじゃ」

「わかった」

それを彼女が望むのならこれ以上言うことはない。

フォスフォラスと実際にあって、ダンジョンの外に出るように考えを改めるのかもって思ったけど、そんな事はなかった。

それはそれでいい。

俺が会いに来ると、彼女は実に嬉しそうに笑ってくれる。

なら、それでいい。

休みの日にするって決めたし、俺は心からリラックスして、プルンブムと平穏な一時を過ごした。

「……あれ?」

気がついたら寝てしまっていた。

ぼんやりとする頭、ぼけー、と見あげた先には天井、特に何もない真っ白な天井があった。

「起きたのかえ?」

「プルンブム……え!?」

彼女に上からのぞき込まれて、更に後頭部にものすごく柔らかい感触を覚えて。

寝ぼけた頭が一気に覚醒して、パッと飛び上がった。

ズザザザと彼女から距離を取る。

上からのぞき込まれる体勢、後頭部の柔らかい感触、正座している彼女。

膝枕――という言葉が頭の中に浮かび上がった。

「俺……寝てたのか?」

「うむ、安らかな、赤子のような寝顔じゃ」

「むぅ……恥ずかしいなそれ」

「妾はうれしいのじゃ」

プルンブムは言葉通り、心から嬉しそうに穏やかに微笑んだ。

まるで母親を連想させる様な、穏やかに慈しむ笑顔。

彼女の言葉にてらいはない、本当に嬉しそうだ。

「もう少し休むか?」

「あー……いやいい」

さすがに意図してそれをするのは恥ずかしい。

今まで無防備な寝顔を晒していたのかと思うとものすごく恥ずかしくなって、「じゃあ頼む」なんて言えるはずもない。

「ふわあ……」

あくびが出た、びっくりして冴えた目が、また眠気がぶり返してきた。

まるで春の麗らな陽気の中にいるかのようだ。

俺はごろん、とその場で寝転んだ。

「もう少しこのまましてていいか?」

「妾の膝の上でもよいぞ」

「一緒に寝っ転がるのはどうだ?」

「一緒に?」

「うん」

「……そうじゃな、そなたとなら」

プルンブムはそう言って、俺のそばに来て、同じように寝っ転がった。

「なんか原っぱにいる感じだな」

「そうなのかえ?」

「……いや、イメージだ。俺も今までそれをやった事なかったから」

向こうにいた時は仕事に追われる人生だったからな。

ピクニックとかそういうのにはまったく無縁だ。

が、心地よかった。

知識だけで知っているひなたぼっこの昼寝にものすごく似てて。

いつの間にか、俺は再びまどろみ始めていた。

夜、プルンブムの部屋を出て、屋敷に戻ってきた。

完全に日がおちている。

今日は何もしなかった。

仕事だけじゃなくて、加速弾の回収とか、そういう直接仕事に繋がらない事もしなかった。

完全に、休んだだけの一日だ。

「あっ、お帰りなのですヨーダさん」

「ただいまエミリー」

「エルザさんが探してたです」

「エルザが?」

「はいです、今日の集計をって言ってたです」

「集計か、仕事しなかったけど」

俺は苦笑いしつつ、エミリーと一緒にエルザのところに行った。

燕の恩返しの出張所、エルザがそこで待っていた。

「ただいまエルザ」

「お帰りなさい」

「集計って事だけど?」

「はい。今日のリョータさんの収入の報告です」

「ふむ」

俺は適当に聞き流した。

何しろ仕事はしてないんだ。

リョー様の使用料はあるが、まあそんなところだろう。

「えっと、合計で121万ピロでした」

「……え?」

120万も?

「どういう事だ? なんでそんなに? 今日は仕事しなかったはずなのに」

「えっと」

エルザは手元のメモを見つめながら言った。

「アウルムからの税金と、アルセニックの分け前と、リョータの村からの上納金と、ブロマイドの使用料。もろもろあわせて121万ピロです」

「そんなになるのか……」

「すごいですヨーダさん。」

そう話すエミリー、俺も「すげえ」と内心舌巻いていた。

今まで自分が積み上げてきた事ばかりだけど。

何もしなくても一日120万の収入……すごいな……。