軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

252.召喚された理由

「メラメラも肩に乗って。それじゃいってきまーす」

朝、食堂で朝ご飯をかっこんだ後、アリスはメラメラを含む仲間のモンスター達とダンジョンに出かけて行った。

ほかの仲間達も既にダンジョン――仕事に出かけてて、食堂に残ってるのは俺とレイア、そしてミーケとアウルムのコンビの四人だ。

「今朝も一段と元気だなアリス」

「彼にいろんなダンジョンを見せるって張り切ってるみたい」

答えたのはアウルム。

彼――メラメラことフォスフォラスと同じ、ダンジョンの精霊の一人だ。

「そうなのか」

「うん。それを彼も楽しんでるみたい」

「それは何より。……アウルムはいいのか? ミーケと一緒ならあっちこっちいけるよな」

「まかせてください!」

ファミリーの一人、ミニ賢者のユニークモンスター、ミーケが小さくガッツポーズして、意気込んでいった。

「興味なーい」

アウルムはあっけらかんといった。

「そうなのか」

「だってダンジョンなんてどこもそうじゃん。あたしたちがモンスターを産み出して、人間がそれを倒して何かゲットする」

「なるほど、確かに何処のダンジョンもそうだろうな」

この世界の一次産業は全部ダンジョンからなる。

黄金からもやしに至るまでの全てのものがダンジョンからドロップされている以上、ダンジョンは何処まで行っても「生産の現場」でしかない。

そこまで要約する考え方なら本当に興味なさそうだ。

「ダンジョンの外ならもっとみたいんだけどさ」

「せっかくミーケがいることだし……たまに休暇つくるか? 今のままだと夜しか見て回れないだろ」

「いいの!?」

さっきまで「興味なーい」と本当に興味なしな反応をしてたアウルムが食いついてきた。

本当にダンジョンの外がみたいんだな、アウルムは。

「ああ、すぐにってのは周回してる冒険者達も迷惑するだろうから、そうだな、一ヶ月くらい周知期間をおけば――」

「一ヶ月なんて一瞬じゃん! やった! ありがとうリョータ!!」

ものすごく興奮するアウルム、ちょっとひくくらいのハイテンションだ。

「よーし、それじゃ今日もがんばるぞ! いくよ」

「分かりました!」

アウルムはミーケを抱き上げて、食堂から飛び出していった。

ミーケの特殊能力で、精霊――モンスター属性をもつアウルムもダンジョンの出入りが可能になった。

ほぼ自力で自分のダンジョンに戻るという出勤をしていて、今の話も傍から見れば「上司に休暇の許しをもらえた社員」にみえるんだが。

「マスター」

「うん?」

「マスターにお礼を言ってますが、ダンジョンは彼女のものなのでは?」

「そうなんだよな」

俺は苦笑いした。

ナチュラルに俺の「許し」を得たって感じになるアウルムに、苦笑いを禁じ得なかった。

ニホニウム地下八階。

「……なんかすごく久しぶりだな」

「約三ヶ月ぶりです、マスター」

一緒についてきたレイアが秘書のように答えた。

「……」

「私の顔になにかついてますか、マスター」

「いや、たまーにレイアの事、ゲームのガイド役っぽく見えるんだ。こう、隅っこにワイプ的な小窓でバストアップしてるみたいな」

「言ってる意味が分かりません」

「だろうな」

俺は苦笑いした。

こっちの世界の人にテレビゲームの話をしても分かってもらえる訳がない。存在しないものなんだから。

だから普段は言わない事なんだが。

「レイアには言いやすいな、こういうの」

「そうですか」

レイアは淡々と受け流した。

元の世界に関係する話をしても、レイアは軽く受け流してくれるから、話がしやすい。

「マスター」

「どうした」

「あそこをみて下さい」

レイアはそっと離れた場所、斜め前の地面を指さした。

そこに例の、人形サイズの、留め袖の女がいた。

多分名前はニホニウム、このダンジョンの精霊だと推測している女だ。

「悪い、しばらく色々忙しかった」

彼女はにっこりと笑った。

相変わらず言葉的な物は何もない。

その微笑みをみて、少し考える。

ほかのダンジョンがみたいフォスフォラス、ダンジョンじゃなくて外が見たいアウルム。

メシがあれば満足のアルセニック、男女問わずエロ大好きなセレン。

精霊たちは、全員違う事を望んでる。

「あんたは何がほしい?」

女に聞いた。

多分ニホニウムである彼女は何を望んでいるのか。

気になって、はっきりと言葉にして聞いた。

女はにこりと微笑んだ。

ただ、微笑む。

いつもと同じように、何も言わずにただ微笑む。

そして、消えた。

「……なんかあるんだな」

直感的にそう思った。

多分間違いないだろう。

ほかの精霊と同じで、実質ダンジョンの一番奥に閉じ込められていて、晴らせない望みを抱いて 存在し(生き) ている。

彼女もそうだと直感的におもった。

そう思ってしまうと、はっきりと「ほっとけなく」なった。

かつての自分と重ねてしまった。

アウルムが見せたその姿。

日夜休む事なく働き続けながらも、大半の精霊はささやかな望みすら叶えられずにいる。

「なんとかしてやりたいな。何もしてもらえてない、残り精霊全員」

口に出してつぶやいた。

すると、横からパチパチと、手をならす音が聞こえる。

みると、レイアがいつもの無表情で拍手していた。

「どうしたレイア」

「わかりません」

「うん? 分からないで拍手したのか?」

「はい。マスターが急にまぶしく見えて、そうしたら手がうごいてました」

「そうか」

「あ、今分かりました」

「うん?」

「マスター、すごいです。感動したから、拍手です」

時間差で感動したレイアに、俺はちょっと苦笑いをした。