軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

244.日給二千万の男

この日も各ダンジョンに冒険者がいなかった。

テルル、シリコン、アルセニック……。

行きつけのダンジョンはどこも、ニホニウムの様なモンスターだけあって、冒険者がいない状況になっている。

「これはまずいな」

「きわめてまずい」

「うおっ!」

アルセニックの岩に囲まれてつぶやいてると、真横からいつの前にかやってきてたセルが話しかけてきた。

「来てたんだ」

「サトウ様がここにいると聞いて」

「誰にも行き先告げてないぞ」

そもそも転送ゲートつかって移動してるから聞いてから追いつけるものじゃない。

「……」

「そこで黙るなよ」

「わが一族が造幣を管理しているのもこのためである。誰でも貨幣を好きなだけ出せると、そこばかりいって物がたりなくなる」

「そうだなあ……」

まだ二日目だが、もう深刻さが伝わってきた。

ダンジョンに入っても冒険者がいない、すなわち物の生産が完全に止まる。

これが進むと、街の店、店頭から物が完全に消えてしまう。

「どうにかしてもらえないだろうか」

「……わかった」

セルの要請に、俺は重々しく頷いた。

何をするにも、まずは状況把握。

ってことで、いったん屋敷に戻って、街に出てから、街はずれに出現したフォスフォラスにやってきた。

今もぞろぞろと冒険者達が足を踏み入れていくそこは、洞窟、という感じではなかった。

地上一メートルくらいの高さに雲が浮かんでて、その雲の上に扉がある。

観音開きの扉で、しまる暇なく、ひっきりなしに冒険者が中に入っている。

「はやくはやく」

「おい引っ張るな、いそがなくても――」

「そんな悠長な事いってたら雲に乗って消えちまうぞ」

冒険者のコンビが俺の横をすり抜けてダンジョンに入っていった。

「ああ……なるほどな」

ビジュアルってのはすごく大事だ、人間はみた目のイメージにものすごく引っ張られる。

ダンジョンの入り口が雲に乗ってる――移動式に見えるというのが、今、冒険者達があせりまくって、フォスフォラスに殺到してる理由だろうな。

俺はいそぐ冒険者と肩がぶつかりそうになりながら、中にはいった。

中はぎゅうぎゅうづめだった。

今までに行ったどのダンジョンよりも冒険者の数が多かった。

人は多いが妙な秩序が出来ていた。

まるでダンジョンそのものが一つの遊園地になったかのように、冒険者達はいくつものポイントに集まって、行列に並んでいる。

その行列の先頭を見てみると――

「おい、ちゃんと並べよ」

「見るだけだから」

横入を誤解した冒険者を宥めつつ先頭をみた、するとモンスターが現われた。

宝石箱に目がついた様なモンスターが、列の先頭に現われた。

直後、冒険者に倒された。

その冒険者はドロップした物を拾って、列の最後尾に来て並び直した。

なんというか、見た事のある光景だな。

俺も並ぶことにした。

列に並んで、順番を待つ。

モンスターが次々と産まれては倒され、列が消化されていく。

あっという間に俺の番がきた。

目の前で産まれた目のついた宝石箱、開口部の縁がギザギザ歯になってるモンスターに銃をうった。

成長弾一発、あっさりと倒した。

ドロップは――三万ピロ。

一万ピロ札が三枚だ。

一瞬で三万ピロの稼ぎ。

「そりゃだれも普段のダンジョンにもどらないわけだ」

この一瞬で魔法カート一台分の物資に匹敵する稼ぎだもんな。

地下二階に降りた、同じように列がいっぱい作られている。

モンスターは上と違って、こんどは手足のついた宝石袋だった。

同じように列に並ぶ、産まれたモンスターをさくっと瞬殺して、今度は4万ピロをゲット。

更に三階に降りる。

モンスターは動かない金庫、口と目がついた金庫。

アルセニックの様なモンスターだった。

堅牢な金庫に並ぶ冒険者達は苦労している。

よく見たらハンマー持ち、いつもはアルセニックにいるエミリーのファンらしき冒険者がちらほらいる。

普通の冒険者は数倍の時間を掛けて倒したが、動かない分、ものすごく安全だ。

そこに並んで、順番をまって、最初から全開の消滅弾で倒す。

「おおおおお!」

「セーフフェイスを一撃かよ」

周りが感嘆する中、ドロップの10万ピロを拾う。

ざっと回ってみたかんじ、わかった。

列に並んでも普通の冒険者の一日の稼ぎを上回るし。

もし列がいらなくて――そうだな。

フォスフォラスが来て、まだ情報が広まりきらないうちに第一陣として突入したら。

俺なら一日2千万ピロは稼げたんじゃないかって思う。

これは無理だ、冒険者を説得して普段いるダンジョンに戻ってもらおうという選択肢が頭の中にあったけど、これは無理だ。

「とっととフォスフォラスにお帰り願うしかないか」

「そうおもう。そしてそれはサトウ様にしかできない事」

「だから横からいきなり声掛けてくるな!」

セルの出現にちょっと慣れた自分が悲しかった。